PPP(Presentation-Practice-Production)提示―練習―産出とは
PPP(Presentation – Practice – Production)提示―練習―産出は、外国語教育において伝統的かつ広く用いられている指導モデルです。特に文法や構文、定型表現などの導入に効果的とされ、主に構造志向(構文重視)や形式重視の教授法と親和性が高いです。
以下、それぞれの段階を詳しく説明します。
1. Presentation(提示)
教師が新しい言語項目(文法・語彙・表現など)を明示的に導入・説明する段階です。
- 目的:学習者に新しい言語項目の意味と形式を理解させる
- 方法:
- 教師による板書や説明
- モデル文の提示(例:「I have a pen.」)
- 文法の構造解説(例:主語 + have + 名詞)
- 視覚教材・スライド・ダイアログ・ビデオなどの活用
- 特徴:この段階では主に教師主導で、学習者は受動的
2. Practice(練習)
学習者が提示された言語項目を繰り返し使って定着させる段階です。正確さ(accuracy)を重視します。
- 目的:誤りなく文型・表現を使えるようにする
- 方法:
- 機械的練習(Mechanical Practice):空所補充・選択問題・復唱練習など
- 有意味練習(Meaningful Practice):文を完成させる・正誤判定・マッチングなど
- 特徴:制限された範囲で、決まった表現を使う。正解が明確であり、教師がフィードバックを提供。
3. Production(産出)
学習者が自分の言いたいことを、自発的に新しい言語項目を使って表現する段階です。流暢さ(fluency)を重視します。
- 目的:言語項目を自分の言語として使いこなす
- 方法:
- ロールプレイ
- ディスカッション
- ライティング活動
- 意見交換タスク
- 特徴:学習者中心。言語使用が自由で創造的になり、誤りも許容される。
PPPの利点
- シンプルで導入しやすい
- 初学者にとってわかりやすい
- 文法指導に適しており、指導計画が立てやすい
- 正確さと流暢さの両方を意識的に育成可能
PPPの批判点・限界
- 実際の言語使用はより複雑で非線形:提示 → 練習 → 産出という順序が現実的でないことも
- 学習者の内在的な言語習得プロセスとズレがある(例:習得は入力に基づく)
- 「練習」で正確さが高くても、「産出」で使えるとは限らない(=転移が難しい)
- 教師主導の形式になりやすく、学習者の主体性が育ちにくい
代替・発展モデル
- ESA(Engage – Study – Activate):Jeremy Harmerによる変形モデル。学習者の興味喚起(Engage)と、自由な表現活動(Activate)をより重視。
- TBLT(Task-Based Language Teaching):言語項目ではなく「課題」中心の教授法。より実践的でコミュニカティブ。
まとめ
PPPは特に初級者への明示的な文法指導に効果的で、文法指導や試験対策などにも適しています。ただし、学習者のレベルや目的に応じて、より柔軟なモデルと併用することが望ましいです。
PPPでやりたい過去問
・令和6年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題10問1