偏見とは
偏見とは、かたよった見方。ゆがめられた考え方・知識にもとづき、客観的根拠がないのに、特定の個人・集団などに対して抱く非好意的な意見や判断、またそれにともなう感情。
ステレオタイプとは
ステレオタイプとは、特定の集団に対して、強い思い込みを持つこと(令和6年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題9問1)。特定の社会集団やカテゴリーに対する知識や信念(平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題8)
ステレオタイプの定義は平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題8にある。
偏見や差別には、人を何らかの属性や特徴に基づいてまとめて捉える「カテゴリー化」の働きが関連している。特定の社会集団やカテゴリーに対する知識や信念をステレオタイプと呼び、ここに否定的な評価や感情が加わると、「○○人は時間にルーズだ」というような偏見が形成される。その結果として差別意識が生じ、差別行動に至る。
平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題8 より
ステレオタイプの自動活性化とは
ステレオタイプの自動活性化とは、特定の集団の名前を聞いたら自動的に固定的な考えが思い浮かぶこと。
カテゴリー化とは
カテゴリー化とは、人間が複雑な世界を理解しやすくするために、物事や人を共通の特徴に基づいて分類・グループ分けする心の働き(認知プロセス)です。社会心理学や異文化理解、教育の分野でよく使われる概念。
🔹 例:日本語教育におけるカテゴリー化
教師が日本語学習者に対して以下のように考える場合:
- 「ベトナム人は発音が苦手」
- 「ポーランド人は文法に強い」
- 「アジアの学生はまじめ」
それぞれの文化や背景を持つ学習者を、「国籍」や「文化」などの枠組みでひとまとめにしてしまう行為=「カテゴリー化」
🔹 カテゴリー化のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・情報処理を効率化できる(とっさの判断などに役立つ) ・教育方針をある程度立てやすい | ・先入観や偏見につながりやすい ・個人差を見落としてしまう ・学習者との信頼関係に悪影響を与えることがある |
🔹 ステレオタイプとの関係
「カテゴリー化」は中立的な概念。それが固定化されて感情や価値判断を伴うと「ステレオタイプ(固定観念)」になる。
たとえば:
- 「中国人は声が大きくてマナーが悪い」→ 偏見的ステレオタイプ
- 「ドイツ人は時間に正確」→ 一見ポジティブでも、個人を正確に理解しないという意味で問題になることがある
🔹 教師が意識すべきこと
- カテゴリー化の傾向を自覚し、「個人を見る」姿勢を大切にする
- 経験や統計から得た知識も、一人ひとりの学習者に当てはめすぎない
- ステレオタイプに基づいた指導ではなく、多様性を尊重した柔軟な対応を心がける
ステレオタイプ・カテゴリー化で解きたい過去問
・令和6年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題9問1【ステレオタイプ】問2【カテゴリー化】
・令和4年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題9問1【ステレオタイプの自動活性化】問2【脱カテゴリー化を促す活動の例】
・令和3年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題9問3【集団間接触を効果的に行う条件】
・令和2年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題9問4【偏見】問5【集団間の再カテゴリー化を促す活動例】
・平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題9問3【過度のカテゴリー化】