【音声解説】平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅱ問題4【会話】

H29試験Ⅱ
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試験Ⅱの聴解問題4は、毎年、日本語を母語とする人と日本語を母語としない人の会話などを聞いて複数の問いに答える問題です。

聴解問題4には例がありません。

しかも1回しか聞けません。

なのに問いは2つあります!

事前準備をできるだけしましょう。

最初に聴解問題4の説明が1分24秒あるので

その間に各問題をできるだけ読んでおくのです。

どこを?

①各問題の説明を読む。

どんな状況? 会話か発表か? だれが最初に話すか?

聞く前に状況を確認しておくことで、会話を推測します。

②問いと選択肢を読む。

聞く前に選択肢を読めれば、聞くべきポイントを確認することでリスニングに集中できます。

なお、詳しい対策については別記事にありますのでどうぞ。

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1番 日本人の大学生と留学生の会話

まず、説明文を読む。日本人大学生と留学生の話

最初に話すのは日本人

問1 留学生の発話の特徴

次に問を読む。留学生の発話の特徴

選択肢を確認

  • a 誤ったテンス形式の使用

「昨日、ラーメンを食べます」など過去なのに現在形とか。

  • b 多様なフィラーの使用

フィラーとは、詰め物。言語学では、「あのう」「えー」「まあー」など文の間を埋めるもの。これらの表現が多いか。

  • c 相手の発話を聞き返している

相手の言ったことを聞き返しているか。

  • d 正しい表現の算出を試みている

間違った表現を直そうとしているか。

聞く。

「お世話になって、ありがとう」「あ、お世話になりました」

「行く」「行きて」「行い…」「行きます」

など、最初に言った言葉を何度か言いなおして、正しい表現にしようと試みています。

よって、答えはd

問2 日本人の大学生が困っている原因

「水くさいなあ…一度家に遊びに来いよって…」と言っておきながら、留学生が本気で行く気を示すと「明日はちょっと…まいったなあ、またこっちから連絡するよ」という手のひら返し

「君は僕の家に来るほど仲がいい友達ではないし、君とさらに親密な関係になろうとは思っていないよ。でも、国に帰るという人に対して「バイバイ」で終わらせると薄情な人間だと思われるリスクがある。ここは情が厚いアピールしておこう。でも本当に来たりはしないよね? 僕たちそんな仲じゃないよね? わかってるよね?」という発話意図が伝わっていないので困っているのは明らか。

よって、答えはb

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2番 教育実習生の授業

まず、説明を読む。教育実習生の授業

問1 学習者の発話で指導が必要な項目

次に問いと選択肢。問いは指導が必要な項目

選択肢は…

  • a のだ文の適切な用法

のだ文とは、会話の「んです」のこと。状況に応じて色々な意味がある。ここでは説明の意味。

日本語教育能力検定試験には「のだ文」という言葉がときどき出てきます。私は最初「のだ文」なんてありましたっけ? と思っていましたが、これは「んです」のことです。「のだ」の形で会話に出てくることは普通ないので気を付けてください。

  • b 応答詞の適切な用法

応答詞とは、「はい」「いいえ」「うん」など相手の問いにじてえる(ことば)

  • c 複文の適切な用法

複文とは、1つの文の中に複数の文があること。意味がわかりませんね? 例を見てみましょう。

例)「昨日行った猫カフェは最高だった」という文は「昨日猫カフェに行った。その猫カフェは最高だった」という複数の文からできています。よって、複文です。

  • d 接続詞の適切な用法

接続詞とは、文と文を接続する(ことば)

聞いてみると違和感は…

「ベジタリアンなんですから」

「人によって違うんですから」

説明の「んです(のだ文)」と理由の「から」を一緒に使っていてくどいですね。

これはよくある間違いです。

「私はベジタリアンなんです。肉は食べません」

あるいは

「私はベジタリアンですから、肉は食べません」

どちらかでいいですね。

よって、答えはa

問2 教育実習生の発話の問題点

この問題は既存の日本語教科書を痛烈に批判しており、現役の日本語教師ならばニヤニヤしてしまいます。

はじめよう日本語初級②」の15課セクション2p52では

「国ではどんなものを食べるか聞く」という練習があります。

会話例

A:王さんの国ではどんな肉を食べますか。

B:ぶた肉をよく食べますよ。

教育実習生の元ネタ判明

完全にこの問題です。

で、実際にこのテキストのこの練習を私はやったことがあるのですが、

まさにこの学生のようなコメントをもらったことがあります。

いまどき、国によって違うよりも人によって違いますよね

ということ。

1つの国で世界各国の料理が食べられる現在

我々個人は自分の思想信条趣味嗜好によって食べるものを選択することができます。

そんな現代社会において「学習者を特定の集団(国)の代表者として質問していること」が問題です。

「人によって違う」という学習者の反応をひろって、質問を変えるべきでした。

にもかかわらずこの教育実習生は

「羊のお肉はどうですか。よく食べる国、ありますか」とつつけています。

ここは

「みなさんは羊の肉を食べたことがありますか」など質問を変えるべきでした。

よって、答えはb

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3番 ラジオで留学生のスピーチ

まず、説明を読む。留学生のスピーチ

問1 音声的な問題点

問いは?

音声的な問題点

選択肢は?

  • a アクセントの平板化が頻繁に起こっている。

アクセントの平板化とは、起伏式アクセント(下がり目がある)が平板式アクセント(下がり目がない)になること。

例えば、「彼氏」は本来、頭高型の起伏式で「高低低」のアクセントなのですが、若い人はこれを「低高高」で発音します。下がるところがない平板式です。これをアクセントの平板化といいます。

  • b 昇降調イントネーションの多用

昇降調イントネーションとは、「でも~」「まじでうけるんだけど~」のように語尾を伸ばして、上した後に下したり、下降した後に上昇したりするイントネーションのこと。「尻上がりイントネーション」とも。私が若かりし頃にギャルが使っていた喋り方ですね。詳しくは、『方言学入門』p41参照。令和元年度にも出ています。

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  • c 語頭の無声音が有声化

語頭の無声音が有声化とは、「くさ」を「ぐさ」と発音するように、無声音のはずの語頭を有声音で発音すること。

  • d ポーズの位置や長さが不適切

例)「猫が好きです」を「猫が好きで・す」と「で」と「す」の間に変なポーズをいれたり、「みなさんはねこがすきですか私は好きですきのうはちかくのねこかふぇにいきました」のように文と文の間にポーズを入れないで話すこと。

違和感はどこにあるだろうと聞いてみると…

休みなくしゃべっているなあという印象

「いろいろの場所でみられますとくに、」

「見られます」と「とくに」の間は文が変わるのでポーズを置くべきなのに、文の途中の「とくに」の後の方のポーズが長くて違和感あり!

よって、答えはd

問2 文法的な問題点

問いは?

文法的な問題点

選択肢は?

  • a 前方照応の文脈指示が不適切

文脈指示とは、会話や文章の中で出てきたものを指し示すこと。

例)昨日、秋葉原の猫カフェに行きました。この店では…

照応とは、会話や文章の中で、指示詞などを使って具体的な何かを指すこと。

前方照応とは、前に出てきたものを指すこと。

例)昨日、秋葉原の猫カフェに行きました。この店では…

※「この」が前に出てきた「猫カフェ」を指している。

  • b 後方照応の文脈指示が不適切

後方照応とは、に出てくるものを指すこと。

例)だから私はこう言ったんです。「猫が好きだ」とね。

※「こう」が後に出てくる「猫だ好きだ」を指している。

  • c 「こ系」の現場指示が不適切

現場指示とは、現場(その場)にあるものをすこと。

例)「その塩とって」「はい」

※「その塩」は現場(その場)にある。

「こ系」の現場指示とは、「これ」「この」など、「こ」がつく現場指示の言葉。

  • d 「そ系」の現場指示が不適切

「そ系」の現場指示とは、「それ」「その」など、「そ」がつく現場指示の言葉

「あの間欠泉を見に行ってください」?

では、聞いてみましょう。

留学生は「あの間欠泉」「あの間欠泉」と言っています。

「間欠泉」は「現場(その場)」にあるものではないので現場指示じゃないです。

留学生のスピーチの前の方にでてきたものなので「前方照応の文脈指示」です。

そして、留学生は自分の国の間欠泉を紹介しています。

このように自分と近い関係にあるものを指し示すときは「こ系」を使います。

「この間欠泉」というべきでした。

よって、答えはa

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