談話標識(だんわひょうしき)とは、談話でこれから何が来るかの標識。一方通行の道路標識があると、この後に一方通行の道路が来るとわかる。道路標識の談話版とイメージするとわかりやすい。
例)
これから話題を変えたいときに「ところで」
これから相手に反論したいときに「でも」
これで、やり取りを終えたいときに「では」
話し手や書き手が会話や文章の構成、意味の関係、話し手の意図などを聞き手・読み手に伝えるために用いる言語表現。
英語では “discourse markers”
1. 談話標識の役割
談話標識は、以下のような役割を果たします:
- 発話の構造を明示する
例:「まず」「次に」「それから」「最後に」 - 意見や感情を表す
例:「やっぱり」「つまり」「なるほど」「へぇ」 - 会話の流れを調整する
例:「えーと」「あの」「ええと」「そうですね」 - 前言との関係を示す
例:「でも」「だから」「それに」「ところで」 - 相手の注意を引く・反応を促す
例:「ほら」「ね」「じゃあ」「さて」
2. 教育的意義
外国語として日本語を学ぶ学習者にとって、談話標識は以下の点で重要です:
- 自然な会話運びができるようになる
→ ネイティブスピーカーらしい発話が可能になります。 - 文章や会話の構造を理解しやすくなる
→ 聞き取りや読解の助けになります。 - 文化的・社会的背景を理解する手がかりになる
→ 例えば、「やっぱり」には日本人特有の含意や気持ちが含まれることがあります。
3. 例と使い方
談話標識 | 用法例 | 意味・機能 |
---|---|---|
それで | それで、どうなったの? | 前の話の結果を導く |
でも | 行きたいけど、でも時間がない。 | 逆接(対立)を示す |
つまり | つまり、どういうこと? | 要約や言い換えを示す |
あの | あの、すみませんが…… | 発話の注意を引く・間を取る |
じゃあ | じゃあ、また明日。 | 会話の終わりや話題の切り替え |
4. 教育上のアプローチ
- リスニング教材で談話標識を意識させる
- ロールプレイで実際に使わせる
- 作文に導入して自然な文章構成を学ばせる
5. 留意点
- 談話標識は省略可能なものが多いため、意味を直接的に教えるのではなく、「使うとどう自然か」「どう聞こえるか」に焦点を当てて指導するのが効果的です。
談話標識(ディスコースマーカー)でやりたい過去問
・令和6年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題13問5
・平成23年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題12問2選択肢4