平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題12【会話のルール】の解説

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平成30年度(2018)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題12は【談話理解】です。会話には仕組みやルールがあり、話し手と聞き手の相互作用によって成立します。

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問1【隣接ペアの応答部分】先行する発話の期待に添った反応を示すもの

隣接ペアについてはこちら

今回は「期待に添った反応を示すもの」なので優先応答を探す問題です。選択肢を見ていきましょう。

  1. 外は雨だから行きたくないとお願いを拒否しようとしているので非優先応答です。
  2. Yに窓を閉めてほしかったのに、「自分で」やれと言っているので非優先応答です。
  3. ビールが欲しかったのに年を聞かれたので非優先応答です。
  4. お願いを受け入れてくれたので優先応答です。

答えは4

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問2【ヘッジの例】

ヘッジは平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題12の問題文に説明が出てきているので過去問を使って勉強している人には難しくない問題ですね。

ヘッジを知らなかった人は問題文のヒントから意味を推測してみましょう。

問題文を見ると、ヘッジが出現するのは「期待に反する」応答をするとき。

期待に反する応答の特徴を考える。ストレートに言わない。やんわり断る。ぼやかす。日本人ははっきりノーと言わなくて分かりにくいと外国人によく言われますね。

じゃあ、ぼやかしている選択肢はどれか?

  1. 「なんか」は「何か」。例えば、「冷たいもの、何かない?」と言ったとき、「何か」は、ぼやかしているわけではなく、「冷たいものなら何でもいい」というような意味。
  2. 「感じ」は「どのように感じたか」。ぼやかしているのではなくフィーリングを述べている。
  3. 「明日」とストレートに言わず「明日とか」というのは、「明日」をぼやかしている。「明日あるいは他の日」。日本人が好んで使う、ダイレクトに言わないための文法。
  4. 「みたい」は、ぼやかしているのではなく、推測しているときに使う文法です。

答えは3

ヘッジについて詳しくは下の記事をどうぞ

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問3【会話の流れを決める言語形式の例】

会話の流れを決める言語形式といえば談話標識のことですね。 ディスコース・マーカーdiscourse marker)とも言います。談話標識は過去に何度も出題されているので過去問を使って勉強している人なら一瞬で分かる問題です。選択肢を見ると、談話標識と書いてあるのは4だけなのでこれが正解。談話標識は日本語教育能力検定試験の頻出単語なのでぜひ覚えてください。

談話標識とは、話すときの標識。道路標識に「止まれ」と書いてあれば止まりますよね。あれと同じです。例えば、YouTube動画を終えるときに「では、また」と言うこと。その後の流れを決める言葉。談話標識の後には決まった流れがきます。

直示表現とは、発言があった場面によって意味が決まる表現。例えば、東京駅について話している場面で「昨日はそこで晩ご飯食べました」という発言があれば、「そこで」は「東京駅」という意味に決まります。「そこで」は直示表現です。直示はダイクシス(deixis)という言葉ででてくることもあるのでダイクシスも覚えておいてください。 

定型表現とは、よく使う決まりきった表現のこと。例えば、「記憶にございません」は政治家の方が責められているときに使う定型表現ですね。

句構造標識とは、句の構造がわかるもの。句構造表示、句標識(phrase marker)とも。覚えなくていい言葉です。気になる方は”phrase marker”でグーグル先生に聞いてみてください。

答えは4

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問4【オーバーラップの意味】

オーバーラップとは、重なること。サッカーではディフェンスが上がっていくことをオーバーラップといいますね。フォワードと重なるからでしょうか。言語学でオーバーラップ(overlap)と言うと、相手と同時に発話すること。よって、答えは2です。ですが、選択肢1の「割り込んで、相手の話を遮る」もオーバーラップに見えますよね。割り込むってことは同時に発話しているんじゃないか? と。ここで役立つのが過去問です。平成26年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題12問3では「聞き手行動」の種類が出てくるのですが、「割り込み」と「オーバーラップ」は別々の選択肢になっているんです。つまり日本語教育能力検定試験は「割り込み」と「オーバーラップ」を別のものと考えているということ。過去問、大事ですね。

答えは2

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問5【修復とは】

修復とは、言い間違いを言い直したり、聞き取れなかったところをもう一度聞くこと。会話の破損した箇所を直す。リペア(repair)とも。

これは簡単ですね。常識で何となくわかります。また、「ない」と言い切る選択肢、可能性を認めない選択肢は誤りの可能性が高い。「~もある」と可能性を認める選択肢は正解の可能性が高い。というテクニックからも4が正解と分かります。

  1. 私の大好きなコンビ「かまいたち」がM-1グランプリの決勝で披露した「USJをUFJと言い間違える」ネタのように、少し時間がたってから行われることもあります。
  2. 「USJをUFJと言い間違える」ネタのように母語話者同士でも行われます。
  3. 「USJをUFJと言い間違える」ネタのように話し手自身が行うことも、聞き手が気づいて行うこともあります。まあ、このネタでは、話し手は「言い間違えていない」と言い張りますが…。
  4. 父がイギリス人、母が日本人の人のことをつい「ハーフ」と言ってしまった後に、「あ、ハーフって半分の意味だから失礼な言い方であり、あまり使わない方がいいんだっけ?」と思い出し、「ミックス」と言い直す場合、「表現の不適切性」を修復したことになります。

答えは4

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