問1の解き方
「日本で生活は楽しかった」
①「日本で生活するのは楽しかった」
格助詞の「で」は名詞と述語の関係を表すものなので(日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第5版p43参照)「で」の後ろを述語(動詞)にする直し方
②「日本での生活は楽しかった」
格助詞の後ろに名詞を繋げたい場合は「の」を使うという直し方。
例)
学校へ行く道/学校に行く道
→学校への道
※「にの」はできない
先生と生活する
→先生との生活
各選択肢を
①後ろの名詞を動詞にするパターン
②格助詞の後に「の」を入れるパターン
という2つのパターンで直せるか検討します。
1 この指輪は母から結婚祝いです。
①この指輪は母から結婚祝います ×
後ろの名詞「結婚祝い」を動詞にしましたが変です。
②この指輪は母からの結婚祝いです 〇
2 事務所に提出が遅くなってしまいました。
①事務所に提出するのが遅くなってしまいました〇
②事務所にの提出が遅くなってしまいました ×
「にの」はできないので格助詞を「へ」に変更する必要があります。
事務所への提出が遅くなってしまいました 〇
格助詞を変えているので②のパターンとは言えません。
3 私はハイキングが中止を知りませんでした
①私はハイキングが中止したのを知りませんでした 〇
②私はハイキングがの中止を知りませんでした ×
格助詞「が」の後に「の」を入れるパターンでは直せません。
「が」→「の」に変更する必要があります。
私はハイキングの中止を知りませんでした。
4 会場まで移動は時間がかかる。
①会場まで移動するのは時間がかかる 〇
②会場までの移動は時間がかかる 〇
よって、答えは4
問2の解き方
問2の誤用は(イ)に関わる直し方とあるので、問3を先に解く必要があります。
二つの直し方を見ます。
「私はこの仕事をやめるつもりはありません」
「私はこの仕事をやめようと思いません」
それから問3の各選択肢を見ます。
1 有生性
有生性に関する誤用は以下のようなものです。
例)猫がある→猫がいる
今回の誤用とは関係ありません。
有生性について詳しくは下の記事をどうぞ
2 視点
視点に関する問題は、受身や授受表現です。
日本語では自分や自分に近い人に視点を置くので
「知らない人が私の足を踏んだ」というより
「(私は)知らない人に足を踏まれた」というほうが自然です。
今回の誤用とは関係ありません。
視点について詳しくは下の論文をどうぞ
3 人称
日本語には
①1人称では使えるけど3人称では使えない表現や
②3人称では使えるけど1人称では使えない表現があります。
① 1人称では使えるけど3人称では使えない表現の例
「~ようとは思いません」
私は食べようとは思いません 〇
彼は食べようとは思いません ×
②3人称では使えるけど1人称では使えない表現の例
「~ようとしません」
私は食べようとしません ×
彼は食べようとしません 〇
これらの例は今回の誤用に関わります。
4 他動性
他動性とは、「動作主が意図的な動作を行い、対象を変化せしめる」ことです。
今回の誤用では「~をやめる」のことですが、他動性は問題ありません。
よって、問3の答えは3です。
問3の答えが分かると問2の答えもわかります。
問2の各選択肢を見てみます。
1 私はこの仕事をやめようとしません
→「私」という1人称で「~ようとしません」は使えない。
人称に関わる誤用
2 私はこの仕事をやめませんつもりです。
「つもり」の前は普通形の「やめない」を使うべき。
人称に関わる誤用じゃない。
3 私はこの仕事をやめないようとしました。
「ようとしました」の前にナイ形は使えない。
人称に関わる誤用じゃない。
4 私はこの仕事をやめないようと思います。
「ようと思います」の前にナイ形は使えない。
人称に関わる誤用じゃない。
よって、答えは1
以下は日本語教師になる前に書いた解説です。
※他の解き方、考え方を知るのに役立つので、あえて残しています。
平成26年度日本語教育能力検定試験Ⅲの問題1は【誤用】です。
問1
実際に誤用を直してみます。
1,この指輪は母からの結婚祝いです。
2,事務所への提出が遅くなってしまいました。
事務所に提出するのが遅くなってしまいました。
3,私はハイキングの中止を知りませんでした。
私はハイキングが中止になったのを知りませんでした。
4,会場までの移動は時間がかかる。
会場まで移動するのは時間がかかる。
例は「日本で生活は楽しかった」を、
直し方1…N1とN2を接続する助詞を「の」に変える→日本の生活は楽しかった
直し方2…N2を動詞にする→日本で生活するのは楽しかった
同じ直し方は選択肢4です。
問2
実際に選択肢の誤用を直してみます。
1,私はこの仕事をやめません(「〜しようとしません」は一人称を取れない)。
2,私はこの仕事をやめないつもりです。
3,私はこの仕事をやめようとしませんでした。
私はこの仕事をやめないことにしました。
4,私はこの仕事をやめないと思います。
私はこの仕事をやめようとは思いません。
いずれの直した結果も、問題文の文章とは異なる(選択肢4は一つのみ合致)ので、答えが出せませんでいた。
しかし、公式の正解は1なので、さらに考えてみますと、上記1の修正では「〜しようとしません」のニュアンスが出せていないことに気がつきました。
一人称では使えない「〜しようとしません」の意味として「つもりはありません」「〜ようとは思いません」を使うと考えれば、正解の1が導き出せます。
しかしながら、本試験で一つの問題を長考すると時間不足に陥るので、長考問題はスルーが正解と思われますが、本問でそうすると次の問題も落としてしまうので判断が難しいですね。
問3
1は一人称には使えない表現を用いていました。
よって、正解は3です。
問4
1,「混んで」に「ばかり」は使えない。
2,「了解」→「理解」
3,「降りて」→「落ちて」
4,「割れて」→「壊れて」
よって、正解は1です。
問5
1,平成27年度 日本語教育能力検定試験Ⅰの解説 問題2に出てきたように、「と」は、後件に、意志・勧誘・命令などの表現を使えません。文法に関わる誤用です。
2,「とか」は口語なので、「調査」に関する文章としては不適切です。
3,「ある」→「あった」テンスの間違いなので、文法に関わる誤用です。
4,「しか」のあとには否定がくるので「しか書けません」となります。文法に関わる誤用です。
よって、正解は2です。