試験Ⅱ問題3では毎年、学習者の発音上の問題を見分けます。
教師が言い直したところが答えです。
1番~3番では口腔断面図が出てきますが、どの音がどの口腔断面図になるのか完璧に覚える必要はありません。微妙な違いも多く、かなり大変です。
4つの選択肢の図のどれが学習者の発音に近いか、見分けることができれば大丈夫です。
不安な方は下記の動画を見て勉強するのはいかがでしょうか。
例の音声が流れている間に、口腔断面図をざっと確認しましょう。
確認ポイントは
①のどの右上(口蓋帆)が開いているか(開いていたら鼻音)
②舌や唇などがどこかにくっついているか(くっついていたら破擦音、破裂音)
4番~8番では調音に関する用語が出てきますので、各用語の意味を理解しておかなければなりません。まだ理解していない方は下記の動画で勉強するのはどうでしょうか。
1番 ひちじょう or しちじょう
解き方
「にちじょう」が「ひちちょう」あるいは「しちじょう」に聞こえます。
「ひ」は、[ç]無声硬口蓋摩擦音
「し」は、[ɕ](日本語教育能力検定試験では[ ʃ ]で表記されることがあります)無声歯茎硬口蓋摩擦音
①硬口蓋あるいは歯茎硬口蓋なので、舌が真上より前に盛り上がっているものを選びます。
②摩擦音なので、舌が上あごにかなり近づいているがくっついていないものを選びます。
よって答えはbです。
各選択肢の発音
bが硬口蓋なのか歯茎硬口蓋なのか。
いろいろ調べてみると、このbを「し」無声歯茎硬口蓋摩擦音であると解説しているものがいくつかありました。
しかし、このbの図は平成30年度1番dの図とまったく同じなのです。
そして、平成30年度の1番はdが正解なのですが、明らかに「ひっくり」と発音しています。「しっくり」とは聞こえません。
よって、bは硬口蓋であると考えます。
- a 非円唇前舌中母音:エ/声門摩擦音:ヘ
- 『脱・日本語なまり』p25によると「ハヘホの子音部は母音アエオを無声にしただけの音」とのことである。この断面図は舌は「ヒ(イ)(令和元年度1番bの図)」よりは高くないが、ハ(ア)よりは高い(平成30年度1番aの図)。また、『音声を教える』p11の「エ」の口の中の図に似ているので「エ」あるいは「へ」と判断した。ただし自信はない。
- b 硬口蓋摩擦音:ヒ
- c 軟口蓋(口蓋化あり(イ段の音))破裂音:キギ
- d 軟口蓋鼻音:カ゜行(ガ行鼻濁音)
2番 はだして
解き方
「はなして」が「はだして」に聞こえます。
「だ」は、[d]有声歯茎破裂音
①歯茎なので、舌が歯の後ろにあるものを選びます。
②破裂音なので、上が閉じていて、舌がくっついているものを選びます。
よって答えはaです。
なお、bのように舌が反り返っているものはラ行の音(有声歯茎弾き音)です。
各選択肢の発音
- a 歯茎破裂音/歯茎破擦音:タテトダデド/ツザズゼゾ
- b 歯茎弾き音:ラ行
- c 歯茎硬口蓋鼻音:ニ
- d 軟口蓋(口蓋化なし)破裂音:カ行・ガ行
3番 ぷすんで
解き方
「むすんで」が「ぷすんで」に聞こえます。
「ぷ」は、[p]無声両唇破裂音
①両唇なので唇がくっついているか、近づいているaかb
②破裂音なので、くっついている。
よって答えはaです。
各選択肢の発音
- a 両唇破裂音(口蓋化なし):パ行・バ行
- b 両唇摩擦音:フ
- c 歯茎鼻音:ナヌネノ
- d 非円唇前舌中母音:エ/声門摩擦音:ヘ
- 『脱・日本語なまり』p25によると「ハヘホの子音部は母音アエオを無声にしただけの音」とのことである。この断面図は舌は「ヒ(イ)(令和元年度1番bの図)」よりは高くないが、ハ(ア)よりは高い(平成30年度1番aの図)。また、『音声を教える』p11の「エ」の口の中の図に似ているので「エ」あるいは「へ」と判断した。ただし自信はない。
4番 れんない
「れんあい」が「れんない」に聞こえます。
[ a ]が、[ na ]になっているので、[ n ]という子音が挿入されています。
よって答えはcです。
なお、気息の有無とは、有気音、無気音の違いのことで、日本語ではこの区別はありません。つまり、日本人が聞き分けるのは難しいので、聴解問題(聞き分ける)問題で気息の有無が正解になることはほぼないと思いますので出てきたら無視するのがよいかと。
有気音・無気音の区別があるのは、韓国語、中国語、タイ語など。
有気音は音声記号では右上にhをつけます。有気音の音声記号は平成30年度の試験Ⅰ問題1(1)の選択肢2に出ています。
5番 できるつぉ
「できると」が「できるつぉ」に聞こえます。
「と」は、[t]無声歯茎破裂音
「つ」は、[ts]無声歯茎破擦音
破裂音が破擦音になっているので調音法が違います。
調音法とは、舌や唇をどう動かすか、と覚えてください。
よって答えはbです。
6番 てんしゅう
「てんすう」が「てんしゅう」に聞こえます。
「す」は、[s]無声歯茎摩擦音、
「し」は、[ɕ](日本語教育能力検定試験では[ ʃ ]で表記されることがあります)無声歯茎硬口蓋摩擦音
歯茎が歯茎硬口蓋になっているので調音点が違います。
調音点とは、ポジション。どこで呼気を妨害するか。舌や唇の位置。
よって答えはaです。
7番 いき
「えき」が「いき」に聞こえます。
口を動かしてみると、「い」より「え」の方が上下に口が開いています。
つまり、
「い」は上あごと舌の距離が近く(高母音)
「え」は上あごと舌がまあまあ離れています(中母音)
「え」は、[e]非円唇前舌中母音(半狭母音)
「い」は、[i]非円唇前舌高母音(狭母音)
中母音が高母音になっているので、舌の高さが違います。
よって答えはdです。
8番 ころも
「こども」が「ころも」に聞こえます。
「ど」は、[d]有声歯茎破裂音
「ろ」は、[ɾ](試験では[ r ]で表記されることがあります)有声歯茎弾き音
破裂音が弾き音になっているので調音法が違います。
実際に口を動かしてみると舌の動かし方が違うことが分かりますね。
よって答えはdです。