言語活動をするときに必要な言語知識には明示的知識と暗示的知識があります。
宣言的知識と手続き的知識に分けることもできます。
明示的知識とは?
明示的知識とは、言語の文法ルールや語彙について、学習者が意識的に知っている知識。
明示的知識の特徴と具体例
特徴
- 「これは現在完了形で、have + 過去分詞の形になる」といった文法説明ができる。
- 学習者はメタ言語(文法用語)を用いて説明できる。
- 主に文法の授業や教科書から獲得される。
- 使用時には意識的な操作(考える時間)が必要
例
「三単現のsを忘れないようにしよう」と頭で考えて、”He plays soccer” と発話する。
暗示的知識とは?
暗示的知識とは、言語使用中に無意識に働く知識。ネイティブスピーカーのように自然に使える知識。
暗示的知識の特徴と具体例
- 文法や表現を直感的に正しく使える。
- 正しさや違和感を感覚的に判断できる(文法用語なしでも)。
- 多くのインプット(聴く・読む)や実際の使用(話す・書く)を通じて形成される。
- 使用時には意識的な操作を必要としない。
例
“He play soccer” を聞いたときに「何か変だ」と直感的に感じる。
明示的意識と暗示的意識の違い
特徴 | 明示的知識 | 暗示的知識 |
---|---|---|
意識 | 意識的に知っている | 無意識的に使える |
習得方法 | 教科書・説明・ルール学習 | インプット・反復・使用経験 |
使用場面 | テスト、作文など | 会話、聞き取り、即時応答など |
例 | 「この文は過去形だから動詞に-edをつける」 | “I went to the store” が自然に言える |
宣言的知識とは?
宣言的知識とは、言語化できる知識。
宣言的知識の具体例
・猫の英語は”cat”
手続き的知識とは?
手続き的知識とは、体験の繰り返しで体に染みついた知識。意識せずに反射的にできること。例えば、教師の真似をして繰り返し発音練習をして、ネイティブと同じように発音できるようになったこと。どうして反射的にできるのか言葉では説明できませんが、できます。
これが手続き的知識です。
手続き的知識の具体例
・車を運転できること
語用論的知識とは?
語用論的知識とは、場面に応じて適切な語を使える知識
語用論的知識の具体例
・お客様に対して敬語を使う
明示的/暗示的知識と宣言的/手続き的知識の関係
明示的知識/ 暗示的知識と宣言的知識/手続き的知識の関係を整理すると以下のようになります。
明示的知識 (意識して習得) | 暗示的知識 (無意識に習得) | |
---|---|---|
宣言的記憶 (言語化できる) | ・日本語学校で習った語彙 ・日本語教育能力検知試験の勉強で得た知識 | ・アニメを見ていたら覚えた語彙 ・毎日見ているYoutuberの口ぐせを覚えた |
手続き的記憶 (言語化できない) | ・ネイティブの発音を真似していたらネイティブのような発音になった ・車の運転ができる | ・毎日見ている Youtuberの口ぐせがうつった |
言語知識でやりたい過去問
・令和6年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題11問2
・平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題7問2【手続き的知識、宣言的知識、暗示的知識、語用論的知識】
・平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題9問5選択肢3【明示的知識も暗示的知識も同じ順序で習得が進む?】
・平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題10問1【明示的知識と暗示的知識の説明】