令和2年度(2020年)日本語教育能力検定試験 試験Ⅱ(聴解・音声)問題4は例年通り、日本語を母語としない人の会話等を聞いて、複数の問いに答える問題でした。
問題4は例がないため、その間に選択肢を読むというテクニックが使えません。
さらに、1回しか聞けないのに、問題は2つあります。
泣きたくなります。
焦らないこと。
集中すること。
最初に説明が1分26秒あります。
例年と同じであることを確認したら
説明が流れている間に
各問題との問いと選択肢を可能な限り把握してください。
聞く前にどこまで準備ができるか。
問題4の成否をわけます。
問題4をしっかり対策したい人へ
近年の問題を分析し、対策を検討しました。よかったら、ご覧ください。
1番 教育実習生の授業
まず、説明文を読む
教育実習生が授業
最初に話すのは教育実習生
問1 フィードバックの方法
次に問いを読む
フィードバックの方法
選択肢を確認
a 明示的訂正
→はっきり直した
b 視覚的情報の提示
→何か示して見せた
c モデル音声の提示
→正しい音声を伝えた
d 学習者の誤用の繰り返し
→学習者の間違いを教育実習生も言った
ここまで準備ができてから聞けるのが理想
各選択肢を頭にいれながら聞く
「ううん、妹です」→a
「これを見てください」→b
「妹です、はい」→c
よって、答えはd
問2 発音指導上の問題点
問いを読む
発音指導上の問題点
選択肢を確認
a リズムを修正していない
→リズムが変なのにそのまま
b プロミネンスの指導を行っていない
→強調している部分が変なのにそのまま
c 助詞を含めた指導を行っていない
→助詞が変なのにそのまま
d 提示したアクセントが一定でない
→教師のアクセントが変
聞く
教育実習生は「妹」のアクセントだけ直しているが
「いもうと」のアクセントは尾高型
尾高型は次に助詞が来ると下がる。
「いもうとが」
「低高高高低」
だから、助詞と一緒にアクセントの練習をしなければいけない。
しかし教育実習生は
「いもうと」
「低高高高」
の練習しかしていないので
学習者の最後の発話は
「いもうとが」
「低高高高高」
になっている。
よって、答えはc
2番 授業で留学生が発言
まず、説明文を読む
授業で留学生が話す
会話じゃなくて一人が話すパターンだろうと理解
問1 発話の音声的な特徴
問いを読む
音声的な特徴
選択肢を確認
a 不自然な複合語アクセントになっている
→複合語のアクセントが変
b 不自然な位置にポーズが挿入
→文と文の間(あいだ)に間(ま)がなかったり、変なところで止まったり
c 不自然な句末イントネーション
→疑問なのに下がったり。疑問じゃないのに上がったり
d 不自然なプロミネンス
→変なところを強調して言う
聞く
「中央公園」「ジョギングサークル」「トレーニングウェア」
のアクセントが変
いずれも複合語
「中央+公園」「ジョギング+サークル」「トレーニング+ウェア」
よって、答えはa
問2 発話の特徴
問いを見る
発話の特徴
選択肢を確認
a 接続詞を使用していない
→「しかし」「ですから」など接続詞に注意して聞く
b 前置き表現を使用していない
→「あのう、すみませんが…」「おそれいりますが…」などの前置き表現に注意して聞く
c テンス・アスペクトに誤りが見られる
→テンス(過去・現在・未来)・アスペクト(現在進行など)に注意して聞く
テンス「昨日、ラーメン食べます」
アスペクト「今、掃除をします(掃除をしています)」
d 伝聞表現に誤りが見られる。
→伝聞表現に注意して聞く
伝聞表現「天気予報によると、明日は雨が降るそうです」と言うべきなのに「天気予報によると、明日は雨が降るだろう」と言ったり。
聞く
テンスの誤り
「先週…行くんですが…驚きます」×→「…行ったんですが…驚きました」
アスペクトの誤り
「走ります」×→「走っています」
よって、答えはc
3番 レジで支払う時の会話
説明文を読む
外国人がレジでお金を払う
最初に話すのは店員
問1 話し方の特徴
問いを読む
店員の話し方の特徴
選択肢を確認
a 美化語多用
→「お酒」「お飲み物」「ご住所」など
b マニュアル敬語
→「1000円からお預かりします」「こちら商品になります」などのいわゆるバイト敬語
c 二重敬語多用
→「お使いになられますか」※「お~になる」+「られる」という二つの敬語
d 移行適格場所(TRP)を無視している。
移行適格場所(TRP)とは、話者が交替するのに適切な場所のこと。英語では、Transition Relevance Place。
Aさん「Bさん、聞いてください、昨日あの店に行ったんですけど…」→まだAさんの話はまだ続く。話を聞こう。
Aさん「Bさんはあの店行きましたか?」→Aさんの話が終わった。次は僕のターンだ。
聞く。
「1000円からお預かりします」「こちら商品になります」
よって、答えはb
問2 意思疎通がうまくいかなかった理由
問いを読む
意思疎通がうまくいかなかった理由
選択肢を確認
a 両義的な表現
→「あたためてもよろしいですか?」「あ、大丈夫です」
この「だいじょうぶです」は「Yes(あたためても大丈夫です)」なのか「No(あたためなくてだいじょうぶです)」なのかわからない。
このようにどちらの意味にもとれる表現が両義的な表現
b 否定を肯定と理解
→「こちらお一つどうぞ」「あ、いえ、私はいらないです(と言いつつ、欲しそうな顔)」「いえいえ、遠慮なさらずどうぞ」
このように「いらない」と否定したけれども、本当は欲しいに違いない肯定だろうと理解。
c 動作主を聞き誤った
「昨日、京都に行ったんです」「え、私、行ってないですよ」「あ、いえ、私がいったんです」「ああ、そうですか、すみません」のように動作主が誰かを聞き間違える。
d 言いさし表現
→「お財布忘れちゃって…(お金がないんです)」「カード欲しいんですけど…(もらえませんか)」のように文の途中で終わる言いさし表現を日本語では多用します。
聞く
「よろしければ…おつくり出来ますが」
「あー」
「よろしいですか?」
「あ、はい」
店員は「(つくらなくても)よろしいですか」の意味だったようですが
外国人は「(つくっても)よろしいですか」の意味だと理解しました。
たしかにこの「よろしいですか」はどちらの意味にもとれます。
よって、答えはa