【過去問解説】平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題15【2016】日本語指導が必要な児童生徒

H28試験Ⅰ
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時事問題ですね。

時事問題については下の記事でまとめています。

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問1の解き方

https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf
https://www.mext.go.jp/content/20200110_mxt-kyousei01-1421569_00001_02.pdf

「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成 30 年度)」の結果についての上のグラフを見ると、

2010年(平成22年)から2014年(平成26年)は、

外国人児童生徒は横ばいだが、日本国籍の児童生徒数は増加していることがわかります。

よって、答えは1

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問2の解き方

選択肢1

第三十四条 小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。

② 前項に規定する教科用図書(以下この条において「教科用図書」という。)の内容を文部科学大臣の定めるところにより記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)である教材がある場合には、同項の規定にかかわらず、文部科学大臣の定めるところにより、児童の教育の充実を図るため必要があると認められる教育課程の一部において、教科用図書に代えて当該教材を使用することができる。

③ 前項に規定する場合において、視覚障害、発達障害その他の文部科学大臣の定める事由により教科用図書を使用して学習することが困難な児童に対し、教科用図書に用いられた文字、図形等の拡大又は音声への変換その他の同項に規定する教材を電子計算機において用いることにより可能となる方法で指導することにより当該児童の学習上の困難の程度を低減させる必要があると認められるときは、文部科学大臣の定めるところにより、教育課程の全部又は一部において、教科用図書に代えて当該教材を使用することができる。

④ 教科用図書及び第二項に規定する教材以外の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる

学校教育法

学校教育法第34条第4項に「有益適切なものは、これを使用することができる」と書かれています。

選択肢2

3 特別の教育課程の指導の形態及び場所について

(1) 日本語指導は,複数校への巡回による指導も含め児童生徒の在学する学校において行うことを原則とするが,指導者の確保が困難である場合等は,他の学校における指導が認められること。

学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知)

学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知)に「他の学校における指導が認められる」とありますので、外部機関の協力を得ることは認められています。

選択肢3

日本語指導を受ける児童生徒は,学級に在籍しながら「特別の教育課程」による日本語指導を受けることができます。この「特別の教育課程」による指導は,あくまでも当該児童生徒の正規の教育課程の一環として位置付けられるものであり,中学生の場合は,中学校の教育課程の一環として,中学校において中学校の教員により行われる必要があります。

指導の形態及び場所について

「正規の教育課程の一環」です。

選択肢4

2 授業時数【告示制定】

年間10単位時間から280単位時間までを標準とする。

また、学校教育法施行規則第140条の規定による障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導」)の対象となっている児童生徒が、(1)の特別の教育課程による日本語指導を受ける場合には、児童生徒の負担にも配慮し、2種類の指導を併せて、授業時数の合計がおおむね280単位時間以内とする。

学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知)

280単位時間以内です。全授業時数を日本語指導にあてることは推奨されていません。

よって、答えは4

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問3の解き方

国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し,伝え合う力を高めるとともに,思考力や想像力及び言語感覚を養い,国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる。

小学校の現行学習指導要領・生きる力

よって、答えは3

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問4の解き方

多様な背景を持つ外国人生徒が「日本語で学ぶ力」を確実に身に付けることができるよう、学校における授業づくりを支援するための様々な配慮を盛り込み、作成しました。

学校教育におけるJSLカリキュラム(中学校編)

よって、答えは2

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問5の解き方

子どもに対する言葉の指導は、以下の3点を大きな原則とすることが望ましい。

理解と産出を同時に要求せず、十分な理解の段階を確保すること。(選択肢2)

②子どもの言語獲得は文法の理解からではなく、子どもにとって意味のあることばとの接触によること。(選択肢1)

話し言葉によるコミュニケーション力を身に付けた上で、書き言葉への指導に移ること。(選択肢3)

JSL国語科の基本的な考え方・指導の方法

よって、答えは4

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以下は日本語教師になる前に書いた解説です。

※他の解き方、考え方を知るのに役立つので、あえて残しています。

どこよりも早い解説付き解答速報。
平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰの問題15は、【日本語指導が必要な児童生徒】です。

問1「日本語指導が必要な児童生徒」に関して、2010年から2014年の動向に関する問題です。

これは難問でした。
文部科学省の「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成26年度)」の結果についてに数字とグラフが載っています。

上記資料の表現を引用しますと、

「平成 26 年5月1日現在、公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒は 29,198 人(27,013 人)で、前回調査より 2,185 人[8.1%]増加した。」
「また、日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒は 7,897 人(6,171 人)で、1,726 人[28.0%]増加した。」

ということは、3が正解だな、と思いたいのですが、
「前回調査」は2012年(平成24年)のため、問題文が聞いている2010年との比較ではないのですね。

仕方がないので、2010年(平成22年)の数字を探してみます。
上記資料の5頁図1、6頁図2にそれぞれありました。

・日本語指導が必要な外国人児童生徒数
2010年(平成22年)…28,511人

・日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数
2010年(平成22年)…5496人

まとめますと、
・日本語指導が必要な外国人児童生徒数
2010年(平成22年)…28,511人
2014年(平成26年)…29,198 人

・日本語指導が必要な日本国籍の児童数
2010年(平成22年)…5,496人
2014年(平成26年)…7,897人

数字としてはいずれも増加しています。

ということでやっぱり3が正解だな、
と思いたいのですが、
上記資料の5頁をみてください。図1をみてください。
図で見るとほとんど増えていません。
若干上向きの横ばいです。
見方によって、横ばいとも増加ともいえそう。
答えが一つに絞れません。

困りました。
仕方がないので、言葉の定義にまで戻ってみます。

「増加」とは、
数量が増えること」(スーパー大辞林3.0)

「横這い」とは、
「①横に這うこと。②相場・物価・売り上げ・賃金などの上下の変動の少ないこと。③カメムシ目ヨコバイ上科の昆虫の総称」(スーパー大辞林3.0)

・日本語指導が必要な外国人児童生徒数
は、28,511人→29,198 人
となっているので、
「数量は増えています」

しかし表で見ると、
「上下の変動が少ない」です。

スーパー大辞林3.0の力を借りても答えが出せません。

さらなる手段です。
問題作成者の気持ちになってみます。

どうしてこんな問題を作ったのか?
どうして2012年との比較じゃなくて、2010年との比較にしたのか?

謎が解けました。
記述問題の書き方でもオススメした「問題作成者の気持ちになる」方法は、
ここでも有効でした。

「日本語指導が必要な児童生徒」
と言われれば、普通は外国人を想像します。
ところが実際は、
日本語指導が必要な外国人児童生徒はそんなに増えていないのに、
日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒が明確に増えている。
これは常識と異なることなので、
問題にしたら面白いぞ。
受験生の裏をかけるし、意外な事実を学ぶことができて受験生も幸せだろう。

問題作成者は、そのように考えたに違いありません。

ところがやっかいなことに、
2012年だけ、日本語指導が必要な外国人児童生徒数が明確に減ってしまった影響で、
前回調査(2012年)との比較では、2014年の日本語指導が必要な外国人児童生徒数も明確に増えています。冒頭で確認したように。

このままでは、意外な事実の面白い問題が作れない。
そこで、問題作成者は2010年との比較を持ち出したに違いないのです。

以上の経緯を考えれば、
正解は1であると思料します。

その他の資料としては、日本語指導が必要な児童生徒に対する「特別の教育課程」の在り方等についての1−1日本語指導が必要な外国人児童生徒数の状況に、「近年、横ばい状況」という表現が出てきます(ただし平成22年度(2010年)までの数字です)。
一方、平成28年3月22日文部科学省『日本語能力が十分でない子供たちへの教育について』では、
「公立学校に在籍する外国人児童生徒の約4割が日本語指導を必要としており、増加傾向」という表現が出てきます。

問2 日本語指導が必要な児童生徒への「日本語教育」に関する問題です。
1,答えは学校教育法にあります。
学校教育法第34条
第1項 小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。
第2項 前項の教科用図書以外の図書その他の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる
※中学校については、同法第49条で34条の規定を準用。

よって、義務教育段階では文部科学省検定済教科書以外の教材利用は許可されていないというのは誤りです。

2,
文部科学省の学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知)によると、
「日本語指導は,複数校への巡回による指導も含め児童生徒の在学する学校において行うことを原則とするが,指導者の確保が困難である場合等は,他の学校における指導が認められること。」とありますので、日本語指導に際して外部機関の協力を得ることは認められてます。

3,
Q30 小学校の児童と中学校の生徒の双方を対象として,同時に同じ教室で「特別の教育課程」による日本語指導を行うことはできますか。によると、
「「特別の教育課程」による指導は,あくまでも当該児童生徒の正規の教育課程の一環として位置付けられるもの」とありますので、外国人児童生徒への日本語の指導は正規の教育過程には含まれていないというのは誤りです。

4,
学校教育法施行規則の一部を改正する省令等について【日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施】によると、
「年間10単位時間から280単位時間までを標準とする。」とありますように、
特定の教科の全授業時数を日本語指導にあてることは推奨されていません。

以上より、正解は4と思料します。

問3「国語教育」の義務教育段階の学習指導要領の目標を選ぶ問題です。
文部科学省のウェブサイト『小学校の現行学習指導要領・生きる力』によると、
国語の目標は、
「国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し,伝え合う力を高めるとともに,思考力や想像力及び言語感覚を養い,国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる」
とあります。

同じく『中学校の現行学習指導要領・生きる力』によると、
国語の目標は、
「国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し,伝え合う力を高めるとともに,思考力や想像力を養い言語感覚を豊かにし,国語に対する認識を深め国語を尊重する態度を育てる。」

以上より、3が正解であると思料します。

問4「JSLカリキュラム」に関する問題です。
JSLカリキュラムの基本的考え方によると、
JSL(Japanese as a second language)カリキュラム(「第二言語としての日本語」カリキュラム)は、日本語指導と教科指導を統合し、学習活動に参加するための力の育成をめざしたカリキュラム開発であり、「日本語で学ぶ力」の育成を目指している、そうです。

よって、正解は2です。

問5 JSLカリキュラムの「国語科」に関する問題です。
JSLカリキュラム国語科の基本的な考え方・指導の方法によると、
「子どもに対する言葉の指導は、以下の3点を大きな原則とすることが望ましい。
理解と産出を同時に要求せず、十分な理解の段階を確保すること。
②子どもの言語獲得は文法の理解からではなく、子どもにとって意味のあることばとの接触によること。
話し言葉によるコミュニケーション力を身に付けた上で、書き言葉への指導に移ること。

よって、正解は4です。

というわけで2016年の日本語教育能力検定試験Ⅰの解説が終わりました!
やった!

次回は、試験Ⅰ全体の感想を書きたいと思います。その後、試験Ⅲの解説を始めます。 

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