H29(2017年度)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰの問題1の(12)は【否定の焦点】です。
問題の解き方
【】内を見ます。
否定の焦点?
ミステリー小説のタイトルに出てきそうなカッコいい名前!
焦点といえば、虫眼鏡を思い出します。
子どもの頃に遊びました。
虫眼鏡で太陽光を集めて黒い紙を焦がす遊び
今の子どもたちもやるのでしょうか?
光が集まってすごく熱くなる点ができるんですよね。
それが、焦点
カメラのレンズでは、焦点距離という言葉も使います。
28mmとか焦点距離が短いと広角(近く広く写せる)
200mmとか焦点距離が長いと望遠(遠くを拡大して写せる)
そんな焦点
英語ではフォーカス
では
否定の焦点って何ですの?
否定が集まるところ?
何を否定しているかということ?
選択肢を見てみます
選択肢1 別にわざとぶつけたんじゃないよ。
A:あなた、ぶつけたんですか?
B:はい。ぶつけました。でも、わざとじゃないんです…。
「ぶつけたんじゃない」と言っていますが
ぶつけたことは否定していません。
「わざと」を否定しています。
選択肢2 悲しくて泣いているんじゃありません。
A:あなた、泣いているんですか?
B:はい。泣いています。でも悲しいからじゃありません。
「泣いているんじゃない」と言っていますが
泣いていることを否定していません。
「悲しくて」を否定しています。
選択肢3 昨日は一日中、外に出なかったんです。
A:あなた、外に出たんですか?
B:いいえ。出ませんでした。昨日は一日中出ませんでした。
「昨日は一日中、外に出なかったんです」
という文は「出た」ことそのものを否定しています。
選択肢4 車で来ていないので、飲みに行けます。
A:あなた、来たんですか?
B:はい。来ました。でも車じゃありません。
「来ていない」と言っていますが
来たことは否定していません。
「車で」を否定しています。
選択肢5 すべてが分かったわけではありません。
A:あなた、分かったんですか?
B:はい。わかりました。でも全てじゃありません。
「分かったわけではありません」と言っていますが
分かったことは否定していません。
「すべて」を否定しています。
以上より、動詞そのものを否定しているのは3だけ
よって、答えは3です。
否定の焦点とは?
否定の焦点とは、否定文において否定される部分のこと。フォーカスとも。
否定文において、否定の働きが及ぶ範囲をスコープ、その中で特に 否定される部分を焦点 (フォーカス) と呼びます (日本語記述文法研究会 2007)。
ですが
専門用語がわからなくても、上記のように考えれば解けます。
ご安心ください。
関連する過去問
否定の焦点は、令和元年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題4問3でも問われているので要チェックです。
令和元年度の問題解説と否定の焦点の練習問題を作成し、動画にしました。
チャレンジしてみてください。
試験勉強を日本語教師の仕事につなげよう
否定の焦点が問題になってくるのは中級ぐらいでしょうか。
特に、読解の授業をやるときに要注意
選択肢1,2、4、5のように、動詞を否定しているように見えますが、否定しているのは動詞ではない文があったら、学習者に意味を確認してみてください。
誤まって理解している学習者がけっこういます。