H29(2017年度)日本語教育能力検定試験 試験Ⅲの問題1【格助詞の使い方】の解説です。
この問題文の文章は格助詞を整理するうえでとても参考になるので
じっくり読み込んでいきましょう。
問1の解き方【格助詞は動詞で決まる】
格助詞が「動詞によって決まっている」ことに起因する誤用の例を探せばいいので
①助詞と動詞をピックアップする
②それで文が作れるかやってみる
文が作れない場合は動詞と助詞のセットが間違っていますので、
「どの格助詞をとるかは動詞によって決まっている」に起因する誤用とわかります。
- を出した→手紙を出した〇
- に行きました→学校に行きました〇
- があります→机の上にペンがあります〇
- を困っています→× 騒音に困っています。
4だけ、動詞と助詞のセットがおかしい。
よって、答えは4
問2の解き方【名詞化と格助詞】
「名詞化の規則に当てはまない」ということなので、実際に名詞化してみましょう。
- 彼と遊ぶ→彼との遊び
- コロナで中止になる→コロナでの中止
- 中国に輸出する→中国にの輸出× 中国への輸出 〇
- 駅まで走る→駅までの走り
動詞句を名詞化する場合、「に」は「への」になります。
これは日本語学校では中級レベルで勉強することです。
よって、答えは3
問3の解き方【格助詞の用法を持つ『の』】
格助詞の用法とは、①名詞について②名詞が述語とどのような関係にあるか示すこと。
各選択肢を見ると
名詞についている「の」は選択肢2だけです。
2 花子の通っていた小学校はここです。
「花子」という名詞が「通っていた」という述語の主体であることを示しています。
よって、答えは2
これは日本語学校では初級レベルの連体修飾(名詞修飾)で勉強することです。
連体修飾の中の「が」は「の」にできるよ、と。
例)花子が通っていた小学校→花子の通っていた小学校
問4の解き方【格助詞を複合格助詞に置き換える】
複合格助詞とは?
複合格助詞とは、複数の語が合体して、格助詞のような働きをすること
例)
格助詞+動詞のテ形:に基づいて(基づく)、に即して(即する)、をもって(もつ)、について(つく)
格助詞+名詞+格助詞:と一緒に
の+名詞+格助詞:のために
解き方
これも文を実際に作ってみて解きます。
「格助詞を複合助詞に置き換える」とありますが
格助詞で文を作ろうとすると、文が無数に作れてしまうので
複合格助詞で文を作った方がいいです。
①先に複合格助詞で文を作ってみる
②格助詞に置き換えられるか検討
- 法に基づいて執行する→法に執行する×
- 現状に即して考える→現状に考える×
- 書面をもって通知します→書面で通知します〇
- 環境問題について話す→環境問題で話す×
よって、答えは3
問5の解き方【「に」が付きにくいときは?】
これは現役の教師だとすぐに3だとわかる問題ですね。
実際の指導例なので。
他の選択肢も見ていきましょう。
選択肢1
「5時に行きます」「夜に帰ります」「夏休みに行きます」のように話し言葉でも時の名詞に「に」はつきます。
選択肢2
「明日に、東京に行きます」が誤用なのは「明日」に「に」をつけているからです。先行文脈を見て<時>か<場所>を判断しても意味がありません。
ちょっと何言ってるかわからないですね…。
選択肢3
基準によって相対的な時を表す!
そう、日本語教育能力検定試験が大好きなダイクシス!
(4月14日に)明日、行きます→明日は4月14日
(4月15日に)明日、行きます→明日は4月15日
このように、場面によって意味が変わるものをダイクシスといいます。
時のダイクシスには「に」が付きにくいです。
選択肢4
二重ニ格制限違反(笑)
二重二格制限とは、造語です。二重に二格を使ってもいいです。そんな制限はありません。
例)夏休みに東京に行きます。〇
二重ヲ格制限ならあります。
二重ヲ格制限の例)
子供が学校に行く→子供を学校に行かせます
子どもが本を読む→子供に本を読ませます。
※「を」がすでにあるので「子供を本を読ませます」とはしない。
よって、答えは3
試験勉強を日本語のレッスンに役立てよう
動詞と助詞はセットで覚える
助詞と名詞をセットで考えてしまう学習者が一定数います。
助詞は名詞じゃなくて、動詞で決まる。
動詞と助詞はセットで覚えましょうと伝えてあげるといいと思います。
例)「行きます」ではなく「に行きます」で覚える。
助数詞の後に助詞を付けない
・ハンバーガー3つをください。→ハンバーガーを3つください。
・兄2人がいます。→兄が2人います。
問1選択肢3のように助数詞の後に助詞を付けてしまう誤りはとても多いです。
助数詞の後に助詞を付けないようしつこく伝えましょう。