帰納的アプローチとは?
帰納的アプローチ(inductive approach)とは、
例文や会話など「具体例」を最初に示し、学習者自身に規則や用法を気づかせる方法。
帰納的アプローチの手順
- 例文(または短い読み物・会話)を提示
- ペアワークやグループワークで例文の共通点・違いを発見
- 学習者同士で「どんなルールがあるか」を言語化
- 教師が最後にまとめとしてルールを確認
帰納的アプローチの具体例 ~ているの用法
- 例文提示
1 「田中さんは今、本を読んでいる。」
2 「私は毎朝7時にジョギングしている。」
3 「この教室ではパソコンを使っている学生が多い。」 - 発見アクティビティ
- 「どの文にも共通している部分は?」
- 「~ているは何を表している?」(動作の継続、習慣、状態など)
- 「動作の継続」「習慣的行動」「結果の状態」を表す「~ている」の用法を整理
帰納的アプローチの教科書
『できる日本語』
『いろどり 生活の日本語』
演繹的アプローチとは?
演繹的アプローチ(deductive approach)とは、
最初に「文法項目やルール」を提示し、そのあとで具体例や練習問題を通して定着させる方法。
演繹的アプローチの手順
- ルール説明(板書またはスライド)
- 短い例文提示と解説
- 制御練習(穴埋め・並べ替え)
- 自由練習(ロールプレイやライティング)
演繹的アプローチの具体例 ~ているの用法
- ルール説明
- 「~ている」は動詞のて形+いるで、①動作の継続 ②習慣 ③結果の状態を表します
- 制御練習
1 次の日本語を~ているの形に直しなさい:
a 朝ごはんを食べ( )
b 毎週テニスをする( )
c 窓が開いて( )
2 並べ替え問題:
「図書館/勉強している/学生は多い/ここでは」 - 自由練習
- ペアで「最近ハマっていること」をインタビューし、相手の答えをクラスに報告
- 「自分の一週間」を日記形式で書き、~ているの様々な用法を意識して使う
演繹的アプローチの教科書
『みんなの日本語』
『Japanese for Busy People Ⅰ〜Ⅲ』
帰納的アプローチと演繹的アプローチのメリット・デメリット
帰納的アプローチのメリット・デメリット
- 発見的学習で主体性が高まる
- 学習者の気づき力・推論力を養成
- ただし時間がかかり、難易度調整が必要
- 学習者が間違った規則を構築する可能性
演繹的アプローチのメリット・デメリット
- 短時間で効率的にルールを伝達
- 初級~低中級レベルで特に有効
- 受動的になりやすいので、定着の工夫(多様な演習)が必要
- 言語学習を規則学習だと誤解させる可能性
帰納的アプローチと演繹的アプローチが出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・令和6年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題8問1
・令和5年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題6問4
・令和2年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4問2【文法の帰納的な教え方】
・平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題6問1【帰納的アプローチに関する記述】