教授法は毎年、出題されます。
最も大切な分野の一つです。
ですから確実に理解しなければなりません。
教授法に混乱しない方法
教授法は単独で覚えようとすると、似ているものが多く混乱します。
単独ではなく、流れで覚えてください。
教授法の歴史を学ぶ感覚です。
そしてこの問題の本文は、まさにその歴史を説明していますから、この流れをそのまま理解しちゃいましょう。
過去問は最高のテキストです。
もっと情報が欲しいという方は、下の動画で教授法の歴史を確認していますので一緒にチェックしましょう。
問1 「文法訳読法」の前提となっている考え方とは?
文法訳読法とは、単語や文法規則を暗記し、学習言語を母語に訳して読めるようにする方法
読解力の養成が目的で、音声面の能力が身につかないことが欠点。
教授法の歴史の一番最初にでてくるやつですね。
選択肢1
これは自然習得順序仮説に基づいた教授法ですね。
習得順序というキーワードは令和元年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題10問2選択肢2でも出ていますから要チェックです。
構造シラバスなどは自然習得順序仮説に基づいて作られています。『みんなの日本語』が有名です。
構造シラバスとは、文型を易しいものから難しいものへと段階的に学ばせるためのシラバス。
選択肢2
これは多読の考え方ですね。
簡単なものからたくさん読んでいこう!
選択肢3
母語に訳すことが目的なので、母語に置き換えられるようになることが外国語学習の成功を意味します。
選択肢4
文法訳読法は、単語や文法規則の暗記により、読解力が向上します。反面、口頭コミュニケーション能力が向上しないのが欠点です。
よって、答えは3
問2 帰納的な文法の教え方とは?
出ました。帰納的!
これは平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題6問1でも問われていますね。
覚えていない方は平成30年度の解説も要チェックです。
帰納的と対になる概念として演繹的というものがありますので、セットで確認しましょう。
帰納的な教え方とは、たくさんの具体例から規則を発見してもらう教え方。
帰納的:具体例→規則
演繹的な教え方とは、規則を理解させてから、その規則を使って具体的な練習をする教え方。
演繹的:規則→具体例
選択肢1
多くの実例→規則なので、帰納的です。
選択肢2
規則→具体的なロールプレイなので、演繹的です。
選択肢3
規則→具体的な使い方の確認なので、演繹的です。
選択肢4
規則→具体的な練習なので、演繹的です。
よって、答えは1
問3 「コミュニカティブ・アプローチ」とは?
コミュニカティブ・アプローチとは、意味を重視(フォーカス・オン・ミーニング)したやり方です。形式を重視(フォーカス・オン・フォームズ)していたオーディオリンガルメソッドへの批判から生まれました。形が多少間違っていても伝わることのほうが大事、コミュニケーションを大切にしようぜという考え方。
選択肢1
言語形式や構造より文脈における言語の機能や意味を重視するのがコミュニカティブ・アプローチです。
一方、オーディオ・リンガル・メソッドでは、言語形式や構造を重視します。
選択肢2
やり取りの流暢さ、つまりコミュニケーションを重視するのがコミュニカティブ・アプローチです。
一方、オーディオ・リンガル・メソッドでは、形式にこだわるので、母語話者並みの正確な発音を重視します。
選択肢3
母語の使用を禁止し、目標言語のみで練習するほうが効果的と考えるのは直接法です。
直接法とは、日本語を日本語で教えること。
英語や中国語など学習者のわかりやすい別の言語で説明したりしない。学習言語で学習言語を説明する。
日本国内の多くの日本語学校が直接法だと思います。一方で、ビジネスマン向けに教えているところは効率を重視するので間接法も多いです。また、外国の学校も、現地の言葉による間接法が多いです。プライベートレッスンも間接法が多いです。
自分がどこでどんな人にどうやって教えたいのか、将来の目標を具体的に想像しながら、教授法を考えてみてください。
間接法で教える場合は、『みんなの日本語』の各国語版の文法解説がとても役立ちます。
たとえば、英語版なら、日本語の文法を英語で説明してありますので、レッスンで説明するとき参考になります。
選択肢4
コミュニカティブ・アプローチでは、実際にコミュニケーションできるようになることを重視します。
実際のコミュニケーションでは、教師が間違いを訂正してくれませんので、自己訂正できる力が必要ですね。
よって、答えは1
問4 「ナチュラル・アプローチ」とは?
ナチュラル・アプローチは令和元年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題6の解説動画の09:46あたりで詳しく説明していますのでよかったら見てみてください。
選択肢1
赤本のナチュラル・アプローチの説明には「クラッシェンのモニター理論を応用」などと書かれているので、「モニター」というキーワードがあるこの選択肢に飛びついてしまった人もいるかもしれません。
気を付けてください。
みんなが赤本で勉強していることを日本語教育能力検定試験の出題者はよくわかっていますから、赤本からひっかけてくることがよくあります。
文の意味をよく考えてから答えを選べば大丈夫です。
構造シラバスとは、文型をやさしいものから難しいものに並べたもの。
ナチュラルではないですねえ。
選択肢2
「実生活で使う身近な素材」
いいですねえ、ナチュラルですねえ。
本試験では、すぐにこの選択肢を選べる人は少なかったようです。
ですが、他の選択肢が明らかに違うので、消去法で2を選べました。
また、試験テクニック的にも「~も取り入れる」という書き方は、幅広いやり方を認めているので正解に可能性が高いです。
「教科書だけではなく実生活で使う身近な素材を取り入れる」というのは、学校内でのレッスンと学校外での生活を結び付ける良いやり方です。
ナチュラル・アプローチに限りませんが、ナチュラル・アプローチにおいても、必要な考えですね。
選択肢3
「積極的な発話を促す」
つまり無理やり。
ナチュラルではないですねえ。
ナチュラル・アプローチは聴解重視。
無理に話させるようなことはしません。
たくさん聞けば、そのうち自分から話すようになる。そう。幼児のようにね。
それがナチュラルパワーです。
選択肢4
ナチュラル・アプローチは、幼児が話せるようになる過程を参考にしています。
つまり、まだあまり話せない初級学習者に効果的な方法です。
よって、答えは2
問5 「タスク中心の教授法」とは?
タスク中心の教授法とは、まずタスク(課題)を設定して、そのタスクを達成するために言語を勉強する方法。
まずはタスクから。
選択肢1
「グループで無人島生活の必需品のリストを作成し、優先順位をつけさせる」というタスクを設定し、そのために言語を勉強するのがタスク中心の教授法です。
選択肢2
指示通りに動作を行わせるのはTPR(トータル・フィジカル・レスポンス)です。全身反応教授法とも。
選択肢3
教師が用意したドラマの役を割り当て、台本の読み合わせは、シナリオプレイの練習の1つですね。なお、シナリオプレイは平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題6の問5に出てきます。
選択肢4
タスク中心の教授法では、「日本人にインタビューをする」というタスクがあり、そのために何が必要か、という考え方をします。
考え方の順序が逆です。
よって、答えは1
効果的な勉強法とは?
赤本をノートにコピーしてキーワードだけを暗記するのはダメです。
全く同じことをそのまま聞かれることは少ないですから。
問4のようにちょっと違う視点からボールが飛んできます。
キャッチするには、それがどんなボールなのか理解しておかなければなりません。
そのためにはまず自分で考えてみてください。
ナチュラル・アプローチの聴解優先の教授法とはどういうことなのか?
「ナチュラル」とは何なのか?
徹底的に考えます。
考える時のヒントになればと思って、YouTube動画を作成しています。よかったら見てみてください。