令和2年度(2020年)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ問題9【臨界期仮説とバイリンガル教育】の解説です。
問1 臨界期仮説とは?
臨界期仮説とは、ある年齢(学者によるが、例えば12,3歳ごろ)を過ぎたら、母語話者並の言語能力の習得は難しいという仮説
この問題は簡単です。臨界期仮説のことを知らなくても本文に説明がありますね。
1行目「ある年齢を過ぎると第二言語の習得が難しくなると言われている」
つまり、大人より子どもの方が習得しやすいということですね。
ただし、語彙や文法が上級レベルになってくると、そもそも子どもの母語レベルでも足りなくなるので大人の方が有利になります。
例えば、JLPT(日本語能力試験)のN1は小学生には難しいでしょう。
よって、答えは3
問2【バイリンガルの種類】バイリテラルとは?
バイリテラルとは、2つの言語で「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能ができることです。読み書き型バイリンガルともいいます。「話す」「聞く」もできるのに「読み書き型バイリンガル」ともいうので要注意。
日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第4版だとp297にあります。
ほかに、4技能(「聞く」「読む」「話す」「書く」)の観点からバイリンガルを整理した場合、会話型バイリンガルと聴解型バイリンガルがあります。
会話型バイリンガルとは、「聞く」「話す」は2つの言語でできるが、「読む」「書く」は1つの言語しかできないこと。
聴解型バイリンガルとは、「聞く」は2つの言語でできるが、他は1つの言語でしかできないこと。
よって、答えは2
問3 認知的側面の構成要素とは?
学習言語は、言語的側面と認知的側面などから成るとする説がある、と言われると、
むむむ、
となりますが、その後にヒントがあります。
「その節目を説明する概念として、カミンズの学習言語能力(CALP)がある」
これです。
学習言語能力といえば、生活言語能力(BICS)とセットですね。
生活言語能力とは、日常生活で使う言語の能力。高コンテクスト。場面があり、文脈(コンテクスト)があり、表情、視線、手の動きなど非言語的な要素が理解を手助けしてくれるので認知力必要度(脳をどれだけ使うか)が低い。子どもは習得が速い。
学習言語能力とは、学習で使う言語の能力。数学を学ぶときとか。低コンテクスト。場面がなく、文脈から切り離されているので、認知力必要度が高い。脳をたくさん使う。外国語で学校の授業を受けるととても疲れる。
なお、「認知」という言葉は日本語教育能力検定試験によく出てきますので要チェックです。例えば、能力とか。
認知能力とは、知能検査で測れる能力。IQとか偏差値とか、脳を使ってするいろいろな能力。
このような知識があれば、言語的側面と認知的側面の違いが何となくわかりますね。
選択肢1
選択肢2
選択肢3
選択肢4
問4 生活言語能力と学習言語能力
カミンズの学習言語能力ときたら、セットで生活言語能力も覚えておきたいところです。
選択肢1
選択肢2
選択肢3
選択肢4
問5 二言語基底共有説とは?
カミンズの二言語基底共有説(氷山説)は、分離基底言語能力説(風船説)に対するものなのでセットで覚えておきたい。
分離基底言語能力説とは、風船説とも。
二言語基底共有説とは、氷山説とも。
選択肢1
選択肢2
これは生活言語能力のこと。
選択肢3
そうですね。母語による認知能力の発達も必要です。
が、二言語基底共有説の話ではありません。
選択肢4
これは風船説。