聴解の問題2を徹底的に分析しました。特に最後の部分は直近三年分の答えのパターンを全て書き出しましたので問題2が得意な人でも一読の価値はあるかと。
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問題2韻律(プロソディ)は複数あるからややこしい。
問題2では学習者の発音上の問題点を選びます。
平成24年度までは、拍の長さ、プロミネンス、アクセントの下がり目、句末・文末イントネーションの4つのうちのどれかを選ぶ問題だったのですが、
平成26年度からは、組み合わせて出てくるように。
難しくなりました。
一つの選択肢に複数の言葉があるのです。つまり問題点が複数。一度に複数の問題点を考えろだと?? 時間がないので焦ります。そして負けます。負けないためには、事前の準備をして、この問題はこうやる、という「いつものやり方」を作りましょう。それはルーティーンという武器です。解き方が決まっていれば落ち着いて問題に立ち向かうことができます。
問題2の各選択肢に出てくる用語
しばらくは固定メンバーでしたが
令和元年では新しく「ポーズの位置」が登場しました。
令和2年度では「特殊拍の種類」が登場。
今後も新しいメンバーの加入はあるのでしょうか。
楽しみですね。
まずは出てくる用語を確実に理解
まず前提として、出てくる用語を確実に理解しましょう。
拍の長さの意味
①拍の長さとは、拍の長さが違うこと。日本語は基本、ひらがな1つで1拍です(拗音(きゃきゅきょ)はセットで1拍)。
拍の長さの誤りの例)
「来て(2拍)」を「きって(3拍)」で発音
プロミネンスの意味
②プロミネンスとは、どこを強くいうか。基本は新情報を強く言い、既知のことは弱く言います。
プロミネンスの誤りの例)
「だれと行きましたか」という質問に対し、
「友達と行きました」のように「行きました」を強く答えること。ここで、聞かれているのは「だれと」であり、相手に伝えるべき情報(新情報)は「友達」なので「友達」を強く言うべき。
アクセントの下がり目の意味
③アクセントの下がり目とは、アクセントの下がるところが共通語のアクセントと違うこと。日本語は高低アクセントであり、どこで下がるかが大事です。下がる前の音(高い音)は強く聞こえます。
句末・文末イントネーションの意味
④句末・文末イントネーションとは、句の最後の音が変に上がったり下がったり、文の最後の音が変に上がったり下がったりすること。ポイントは最後の音です。
句末・文末イントネーションの誤りの例)
「学校に行きますか?」「行きます↑」
質問に対し「行きます」と答えているのに、最後の1音を上げることで質問みたいになってしまっている。
ポーズの意味
⑤ポーズとは、間(ま)。変なところに間があること。
例)「会いに行きます」を「会いに行き・ます」と発音
特殊拍の意味
特殊拍とは、促音(小さい「っ」)、撥音(「ん」)、長音(「ー」)のこと。
例)「きいてください」を「きってください」と発音
「きーて」と長音の発音をすべきなのに
「きって」と促音の撥音をしているので
特殊拍の種類の誤りです。
聞く前に選択肢を読み、一番多い言葉を頭にいれておく
聴解問題は事前の準備が大切です。聞く前にどれだけの準備ができているか。
それが合否を分けます。
聴解問題の例は毎年同じです。
本番ではテスト問題を開いて、例が過去問と同じであることをまず確認してください。
同じであれば、問題の説明や例を流している間は聞く必要がありません。
その時間に選択肢を読みましょう。
といっても問題2で出てくる用語は決まっています。
平成30年度までは上の①~④、令和元年は①~⑤でした。
なので選択肢を漠然と読んでもあまり意味がありません。
どう読むか?
1.今まで出てきていない用語がないか確認
もし今までの過去問に登場していない語が出てきた場合は、いち早く確認し、用語の意味を考える必要がありますので、まずはざっと見慣れない用語がないか確認しましょう。
2.各問題で同じ用語がいくつ使われているか確認
例えば、以下のような選択肢があったとします。
- a 拍の長さとプロミネンス
- b 拍の長さと句末・文末イントネーション
- c アクセントの下がり目と句末・文末イントネーション
- d 句末・文末イントネーション
この場合、もっとも大切な言葉は何ですか?
そう。
「句末・文末イントネーション」です。
この言葉はb,c,dと3つもの選択肢に出てきているので、学習者の発音には「句末・文末イントネーション」に問題がある可能性が一番高いのです。
このように、一番多く出てきた用語に問題のある可能性が高いなと意識しながら聞いてください。
え?
「句末・文末イントネーション」が大事だと言われても、b,c,dと3つも選択肢があるのだから、それじゃ正解にたどり着けないって?
いいえ、そうじゃないのです。
この作業は選択肢をしぼるためにやっているのではありません。
頭に聞く準備をさせるためにやっているのです。
例えば、レストランでテレビが流れていてもご飯や友達との会話に集中していれば、テレビの話は耳に入ってきませんよね?
逆に、テレビに集中していればテレビの音を容易に聞き取ることができます。
それと同じです。
「句末・文末イントネーション」が間違っているのでは?
と疑いながら聞くことで聞き取りやすくなるのです。
もちろん間違いは2つある可能性が高いので、「句末・文末イントネーション」以外も聞き取らなければなりません。
ですが、
全く準備していなければ、2つとも0の状態なので聞き取るのが難しいのに対し、
「句末・文末イントネーション」を意識していれば、1つは準備ができているので、もう1つの間違いを聞き取るのも容易くなるということです。
また、可能性は低いですが、「句末・文末イントネーション」に誤りがないこともあります。
「句末・文末イントネーション」に誤りがあると思って聞いているので、誤りがないことにも気づきやすいです。
そしてその場合は、aが答えです。
ほら、簡単になりませんか?
単語に目印をつけよう
私は一番多い言葉に印をつけています。
上の例でいえば、「句末・文末イントネーション」を〇で囲います。
一番多い言葉が複数あるときは、〇、△、など印を使い分けます。
これ以外のやり方として、
同じ言葉には同じ印をつけておく、というのもいいです。
例えば
拍の長さは:〇
プロミネンスは:△
アクセントの下がり目は:アンダーライン(下線)
句末・文末イントネーションはマークなし
このような事前準備をしておけば、音声が流れた時は音に集中することができます。
学習者の発音と教師の発音を照らし合わせる
学習者の音声自体は1回しか流れませんが、その後、教師が言い直しますので、同じ文を2回聞くことになります。
そして答えは、
学習者の発音のどこが変か?
ではなく
学習者の発音と教師の発音のどこが違うか?
です。
ですから、まず学習者の発音を違和感含めてそのまま受け入れてください。
そして、その後、教師がその違和感のあった部分を訂正したか確認してください。
教師が訂正していれば、そこが答えです。
誤りの特徴をつかむ
ここでは平成29年度から令和元年度までの直近3年分、すべての答えを分析しました。〇で囲われた数字は問題の番号です。
拍の長さ
近年の問題
H29①「ざんねん」:4拍 「ざねん」:3拍
②「みた」:2拍 「みった」:3拍
H30①「あいたい」:4拍 「あいったい」:5拍
②「つかれちゃった」:6拍 「つかれちゃた」5拍
R1 ①「おくっても」:5拍 「おくても」:4拍
②「きょうかしょ」:4拍 「きょかしょ」:3拍
③「ヨーロッパ」5拍 「ヨロパ」:3拍
拍の長さの対策
上を見ると、誤りの種類は3つだけですね。
「ん」(撥音)
「っ」(促音)
「-」(引く音)(R1②は表記上は「きょうかしょ」「きょかしょ」ですが、発音は「きょーかしょ」なのでこれも引く音です)
これらは特殊拍といいます。
学習者は特殊拍のカウントが苦手です。
特殊拍がないのにいれてしまったり、あるのに発音できなかったりします。
だからこの問題があるんですね。
特殊拍の有無を聞き取るのは日本語ネイティブにとっては容易なのでこの問題は大丈夫でしょう。
プロミネンス
近年の問題
H29⑤「どのサークルに入ったんですか」
「友達とダンスのサークルに入りました」
新情報は「ダンス」だから「ダンス」を強くいうべきなのに「入りました」を強く言っている。
⑥「土曜日のパーティに行きますか」
「時間があれば、行きます」
新情報は「時間があれば」だから「時間があれば」を強く言うべきなのに「行きます」を強く言っている。
H30①「いまだれに会いたいですか」
「家族にあいったいです」
新情報の「家族」を強く言うべきなのに、「あいったい」を強く言っている。
③「今日、行く?」
「明日、行こうよ」
新情報の「明日」を強く言うべきなのに、「行こう」を強く言っている。
⑤「昨日の仕事は大変でしたね」
「はい、すごく大変でした」
新情報の「すごく」を強く言うべきなのに「大変」を強く言っている。
R⑤「どんなスポーツが好きですか」
「テニスが好きです」
新情報の「テニス」を強く言うべきなのに「好き」を強く言っている。
プロミネンスの対策
プロミネンスの誤りも難しくないと思います。
なんか変なところ(単語)を強く言ってるぞ?
と感じたら、プロミネンスの誤りです。
本来、プロミネンス(強調)は、相手の知らないこと(新情報)におかなければなりません。それが相手に伝えたいことですから。伝えたいことを強調する。あたり前田のクラッカーですね。
なのに、相手が知っていることを強く言うので、怒っているように聞こえたり、変に聞こえたりするのです。
プロミネンスとアクセントの違いとは
ときどき、「プロミネンス」と「アクセントの下がり目」の違いがわからないという方がいるので説明します。
「プロミネンス」の誤りとは、変な単語(強く言わなくていい単語)を強く言うこと。
「アクセントの下がり目」の誤りとは、単語の中の変な拍(次を下げなくていい拍)を強く(高く)言うこと。
「プロミネンス」も「アクセントの下がり目」も変なところが強く聞こえるので、似ていると思われるかもしれません。
しかし、
「プロミネンス」は単語ひとまとまりで強く聞こえます。
「アクセントの下がり目」は単語の中の1拍が強く聞こえます(アクセントは下がる前の音が強く聞こえます)。
そこが違います。
句末・文末イントネーション
近年の問題
H29②「見たんですか↓」:質問なのに下降調になっている。(文末)
③「そうですか↑」:質問じゃないのに上昇調になっている。(文末)
⑤「はいりました↑」:答えているのに上昇調になっている。(文末)
H30⑥「くれました↑」:答えているのに上昇調になっている。(文末)
R1 ①「いいですか↓」:質問なのに下降調になっている。(文末)
⑥「バイトがあるんで↑」:理由なのに上昇調になっている。(句末)
句末・文末イントネーションの対策
「文末・句末イントネーション」と言っていますが、上の問題一覧を見たらわかるとおり、ほとんどは「文末イントネーション」ですね。
R1の⑥は「句末」でした。
これは難しかったです。
正直、私は学生のイントネーションが誤りだとは思えませんでした。
ですが、教師の発音と比べてみると、
「句末」を学生は微妙に上げている。講師は下げている、という違いが聞き取れるかと思います。
ですからここでのポイントは、
学習者の発音が変かどうかではなく、
学習者と講師の「句末・文末イントネーション」に違いがあるか?
この観点から考えましょう。
一方、文末イントネーションは比較的、聞き取りやすいです。
間違いも、質問なのに下降調、質問じゃないのに上昇調、とシンプルです。
句末・文末イントネーションとアクセントの違いとは
よく「アクセント」の間違いなのか「文末・句末イントネーション」の間違いなのかわからない、という方がいます。
「アクセント」は言葉によって決まっています。
「イントネーション」は話者の意図(質問か回答か等)や感情によって変わります。
言葉が変に聞こえたらアクセントの違い。句や文の最後の一音が変に聞こえたら「文末・句末イントネーション」の違い、という理解でどうでしょうか。
アクセントの下がり目
近年の問題
H29③「そうです」は「高低低低」なのに「低高高高」
④「ひいて」 は「低高高」 なのに「高低低」
⑥「行きます」は「低高高低」なのに「低高低低」
H30②
「つかれちゃった」は
「低高低低低低」と「か」の後で下げるべきなのに
「つかれちゃた」
「低高高高低」と「ちゃ」の後で下がっていた。
④「うさぎが」は「低高高高」なのに「低高高低」
⑤「たいへん」は「低高高高」なのに「低高高低」
⑥「くれました」は「低高高低低」なのに「低高低低低」
R1③
「ヨーロッパ」は
「低高高低低」と「ロ」の後で下げるべきなのに、
「ヨロパ」
「高低低」の後で下げている。
R1⑤「好き」は「低高」なのに「高低」
アクセントの下がり目対策
H29④のようにアクセント単独の間違いの場合は難しくないですね。あ、アクセント変だなとわかります。
問題は、他の間違いと混じったときです。
他の間違いの違和感が大きいのでアクセントの間違いに気がつきにくいのです。
なのでここは整理して考える必要があります。
拍数の誤りが混じったとき
H30②やR1③のように拍数が混じった問題は、比べる対象の拍数がそもそも違うのでアクセントの違いが分かりにくくなります。
拍数が違う時、気を付けるべきは
言葉通り「アクセントの下がり目」
つまり
どこで「下がるか」
拍数が違うのでアクセント全体でとらえようとしてもよくわからなくなります。
全体ではなく、下がるところはどこか。
一点集中。
それは、
高く(強く)聞こえた後、滝のように落ちていくイメージ
例えばR1③の場合、
本来「ヨーロッパ」は「ロ」で強くなって、その後、落ちるのですが、
学習者はいきなり「ヨ」を強く言って、その後、落ちています。
この高い(強い)ところから落ちていくイメージを耳でとらえることができるかどうか。
正直、問題1【アクセント形式】が苦手な人には難しいです。
対策としては問題1と同様です。
問題1対策記事で書いたやり方で練習してみてください。
自分で
「高低」「低高」
アクセントの違いを発音することができればOKです。
周りの人に聞こえないようにそうっと、
学習者のアクセントを、教師のアクセントを、
再現してみてください。
できなければ、あきらめてしまうのも一手です。
プロミネンスの誤りが混じったとき
H29⑥、H30⑤、R⑤のようにプロミネンスが混じった問題もアクセントの違いが分かりにくくなります。変なところを強く言う違和感でアクセントの違和感がかき消されます。
例えば、R⑤では「好き」のプロミネンスもアクセントも間違いでした。プロミネンスの間違いは比較的わかりやすいかと思います。
「どんな」が質問だから、強く言うべきは「テニス」
なのに「好き」を強く言っているから「プロミネンス」の誤りだと、論理的に導き出せます。
そこで選択肢を見ると、
「アクセントの下がり目」にも誤りがあればd
「アクセントの下がり目」に誤りがなければa
という2択だとわかります。
ここでもやはり問題1の対策が活きてきます。
問題1の修行により、
「低高」と「高低」の発音をコントロールできるようになっていれば、
学習者と教師のそれぞれのアクセントを再現できるはず。
蚊の鳴くような小声で再現してみましょう。
そこでアクセントの違いがあるかどうか判断できます。
句末・文末イントネーションが混じった問題
H29③、H30⑥のように句末・文末イントネーションが混じった問題
こういう問題は切り離して考えましょう。
句末イントネーションは難しいですが他の人もできないので気にしなくていいです。
文末イントネーションの間違いは簡単に聞き取れると思います。
2パターンしかありません。
最後の音が
「質問なのに下がっている」
「質問じゃないのに上がっている」
これだけです。
ここを聞き取り
あ、文末イントネーションの誤りだな、と気づいた後は、この1音を切り離してください。
例えば、
H30⑥の問題であれば
「くれました↑」の「た↑」を切り離してください。
「くれまし」になりましたか?
あとは、プロミネンスが混じったときと同じ。
学習者の発音を蚊の羽音よりも小さな声で再現してみてください。
それが共通語のアクセントではないな、と思ったら、アクセントの誤りです。
ポーズ
近年の問題
R1 ④「おんだんかについて」→「おんだ・んかについて」
「おんだ」と「んか」の間に変なポーズ(間)があります。
ポーズの対策
これは簡単でした。ボーナス問題ですね。
変なところに間があれば、ポーズの問題です。
令和元年のような問題がでるなら対策は不要です。