感覚記憶(sensory memory)とは、視覚や聴覚、触覚などの感覚器官を通じて受け取った情報を、非常に短い間だけそのままの形で保持する記憶のことです。この段階では情報が識別や処理されることなく、そのままの形で保持され、必要に応じてワーキングメモリに転送されます。この記憶は一時的なもので、通常は数百ミリ秒から数秒程度しか続かず、意識される前に消失しますが、次の段階の短期記憶や長期記憶に転送されるかどうかの基礎となります。
感覚記憶には以下のような種類があります:
1. 視覚的感覚記憶(アイコニックメモリー)
視覚情報を保持する記憶で、一般的には1秒未満(数百ミリ秒)持続します。例えば、瞬間的に何かを見たとき、その画像がわずかな間だけ頭に残るような現象です。
2. 聴覚的感覚記憶(エコイックメモリー)
聴覚情報を保持する記憶で、数秒程度続きます。例えば、誰かが言ったことを一瞬聞き逃しても、すぐに思い出せることがあるのは、聴覚的感覚記憶によるものです。
3. 触覚的感覚記憶
触覚を通じて得た情報を短時間保持する記憶で、物に触れた感覚などが瞬間的に記憶されます。
感覚記憶は非常に短い間だけ存在しますが、私たちが周囲の環境を理解し、情報を選別するための重要な役割を果たしています。感覚記憶から短期記憶に移される情報は、私たちの注意や興味によって選ばれるため、全ての感覚情報が意識に上るわけではありません。