【言語の特徴】平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3Dの解説

H29試験Ⅰ
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H29(2017年度)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰの問題3Dは【人間言語の特徴】です。

人間言語の特徴と言われても、ちょっと漠然としすぎていてよくわかりません。

まずは問題を見ていきましょう

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問題(16)の解き方

(ア)は、日本語で使用できる音素の数

(イ)は、義務教育終了時点での理解語彙

日本語で使用できる音素の数は?

音素ってなんだろう?

漢字からすると…材?

音と言えば、ローマ字にするとわかりやすいですな。

「か」なら「ka」

この「k」と「a」が音素ということでほう。

ア行で音素は a,i,u,e,oの5つ。

カ行まで行くと、ka,ki,ku,ke,ko

[k]が入るので6つ

この調子で数えていくと、60以上はありませぬ!

だから選択肢の1か3でしょう。

義務教育終了時点の理解語彙は?

次に(イ)を見てみます。

義務教育で習う漢字

常用漢字は2000字ぐらいだったよな。

漢字だけで2000あるのに、語彙が3000はありえませぬ!

よって、答えは1です!

以上の通り、音素という言葉を知らなくても論理的に答えが導き出せますが、音素について詳しくは下記記事参照

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問題(17)の解き方

二重分節性?

よくわからないけれど、かっこいい言葉が出てきましたぞ。

漢字から推測してみましょう。

分節とは、節に分けるということ。

二重とは、二つ重ねるということ。

つまり

二重分節とは、同じものを2回、分けるということですね。

選択肢を見てみると、3と4は1回しか分けていません!

選択肢3

言語記号⇒意味、形式

選択肢4

言語⇒内容語、機能語

重ねて2回分けているのは、選択肢1と2です。

選択肢1

文⇒形態素⇒音素

選択肢2

文⇒句⇒語

どちらでしょうか。

わからないときは、文章にヒントがないか探します。

下線部Aの付近を見てみます。

限られた要素を使って、無限の出来事を表現することができる。これを可能にしているのが言語の二重分節性という特徴である」

無限の可能性を感じるのは選択肢1か選択肢2か

選択肢2から見てみます。

最小単位は語

語は、問題(16)で答えたように、有限です。意味があります。

意味が有限。無限には表現できない。

選択肢1はどうでしょう。

最小単位は音素

音素は有限です。意味はありません。rとかlとか言われてもわかりません。

そのかわり、それを無限に組み合わせて、意味のある語(形態素)をつくることができます。

よって、答えは1です!

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二重分節性とは?

二重分節性とは、文は形態素に分けられ、形態素は音素に分けられるということ。

形態素とは、それだけで意味が分かる最小単位

形態素がよくわかる例

例えば

子猫という語は、「子と猫」にわけることができます。

「子」も「猫」もそれだけで意味がわかります。

しかし、「猫」をさらにわけて「ね」と「こ」にすると、意味がわかりません。

よって

「子」「猫」←これが形態素です。

「ね」と「こ」をさらにわけます。

「n」「e」「k」「o」←これが音素です。

この音素の組み合わせは無限にあるので、言語は無限の出来事を表現できます。

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問題(18)の解き方

超越性

また何やら中二病っぽいクールな言葉が出てきました。

私は神をも超越した。

超越とは、普通の程度を遥かに超えること

言語が超越しているのは何でしょうか?

選択肢を見ながら考えます。

選択肢1 複文と重文では、主節と従属節における超越性が異なる

ちょっと何を言っているのかわかりません。

難しそうなそれっぽい文で受験者を惑わす日本語教育能力検定試験のやり口か!

主節と従属節については、問題2の(5)で解説していますのでそちらをどうぞ。

では、複文と重文とは何でしょうか?

複文とは?

単文とは、述語が1つある文のこと。

複文とは、述語が複数ある文のこと。

お腹が空いた:単文(述語は「空いた」の1つ)

お腹が空いたので、ご飯を食べた:複文(述語は「空いた」と「食べた」の2つ)

重文とは?

重文とは、複数ある述語が、対等な関係にあるもの。読み方は「じゅうぶん」

「お腹が空いたので、ご飯を食べた」は

「お腹が空いた」が原因

「ご飯を食べた」が結果

なので、対等な関係ではありません。

「今日は風が強く、雨も強い」

「風が強く」「雨も強い」は同じようなことを述べていますね。

対等です。

よって、この文は重文です。

国語文法では、重文は対等な関係複文は対等じゃない関係と分けますが、

日本語教育文法では、重文は複文の一種として考えます。

選択肢2 方言周圏論は超越性の地理的反映であると解釈できる。

やっぱり何が言いたいのかわかりません。

方言周圏論とは?

方言周圏論とは、文化的中心地(かつての京都)から距離が広がるごとに、語が新しい形に変化するというもの。

例えば、蝸牛(かたつむり)のことを、東北と九州の一部では「ツブリ」と言ったらしいですが、東北と九州が、京都から同程度離れているから同じような言葉になったんだろうということ。

ただし、柳田國男さんが1930年に『蝸牛考』で提唱した学説。現代では否定的に見る学者も多い。

方言周圏論については、探偵ナイトスクープが『全国アホ・バカ分布考』として本にしていますので、よかったらどうぞ。

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選択肢3 外国語学習を始める時期には超越性がある

どういうことでしょうか?

何歳から始めても遅くないよ!

という励ましの言葉?

選択肢4 過去や未来の事態を表せるのは、超越性があるため

我々は今を生きています。

見ているものは、今目の前にあるもの

聞いているものは、今流れている音

匂えるものは、今の匂い

全て今です。

ところが言語は、今以外も表現できます。

「昨日、猫カフェに行った」という話を聞いたら、

その場にいなくても、「ああ、この人は昨日猫カフェに行ったんだな。うらやましい」と想像できます。

言語はその場を超越しているのです。

過去や未来だけじゃなく、全くないものを創造することすらできます。

そう、小説ですね。ファンタジーとか。

言語ってすごい。

よって、答えは4です。

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問題(19)の解き方

穴埋め問題は前後の文を要チェックです。

「初めて見る物体や物事を言語化することもでき」

「言語化する」

つまり

新しく言葉を作る

言葉を生産する

よって、答えは3です。

他の選択肢も見てみましょう。

言語の普遍性とは?

言語の普遍性とは、すべての人間言語に共通する特徴のこと。たとえば、主語、述語、目的語があること。音声があること。

言語の恣意性とは?

恣意とは、自分勝手。思いついたままにということ。

つまり

言語の恣意性とは、たとえば「ラーメン」を「ラーメン」と呼ぶのは、数学的な公式によって導き出されたのではなく、誰かが勝手にそう名付けたということ。

言語の文化的伝承性とは?

言語の文化的伝承性とは、同じ言語を話すことで、親から子へ、上の世代から下の世代へ、その共同代の文化が伝わっていくこと。

例えば、親が日本語しか話せなくて、子どもが英語しか話せなかったら、日本の文化が伝えられず、途切れてしまいますね。外国に住む日本人の子どもで起こりえる問題です。

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問題(20)の解き方

「言語に優劣はない」という考え方に沿った選択肢を探します。

選択肢1 どの言語も音声言語と文字言語の両面が発達?

昔の日本語には「文字」がなかったように、文字がない言語はあります。

選択肢2 ピジンとクレオールの語彙体系の複雑さは同じ?

「ピジン」とクレオールという言葉は、日本語教育能力検定試験によく出てきますので覚えておきましょう。例えば、令和2年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題11の問5で出題されていまう。

ピジンとは?

ピジンとは、違う国の人たちがコミュニケーションするために、お互いの言葉をミックスして作った簡単な言葉。

クレオールとは?

クレオールとは、ピジンが下の世代に受け継がれていき、新しい言語として文法や語彙が複雑になってきたもの。

このとおり、クレオールはピジンが成長した言語ですから、

クレオールの方が語彙体系は複雑です。

選択肢3 言語構造は異なるが、どの言語でも複雑な内容を表せる

「日本語は語彙が豊富な言語だから複雑な感情を表せるけど、○○語は単純だからできないよね」

という考え方は自文化中心主義の差別的な考え方ですね。

そうではなく!

言語に優劣はないんです。

どの言語でも複雑なことは表現できるんです。

選択肢4 どの言語でも文字数は同じ

英語の「アルファベット」は26

現代日本語の「あいうえお」は、46

同じじゃないです。

よって、答えは3です。

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試験勉強を日本語教師の仕事につなげよう

今回は言語の一般教養的な話でしたから、日本語のレッスンに直接役立つ知識は少ないです。

ですが、言語のプロである以上、一般教養としてこれぐらいは知っておきましょうね

というのが出題意図でしょうか。

特に気を付けたいのは問題(20)の「言語に優劣はない」でしょうか。

「日本語は素晴らしい」

「日本には四季がある」

など他の国と比べて日本は特別であると言いたがる日本人の方がたまにいますが

我々日本語講師は、日本の営業マンとしての意識を忘れず、上から目線にならないよう気を付けたいところです。

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