アコモデーションの意味
アコモデーションとは、相手に応じて話し方を変えること。
accommodation を辞書で調べると
①宿泊
②折衷案
②適応
がありますが、言語学でアコモデーションといえば③適応の意味です。
相手に適応して話し方を変えることをアコモデーションといいます。
アコモデーション理論とは、相手によって話し方を調整することを説明する理論。相手に収束したり、相手と言語的に分岐したり。
英語では、accommodation theory
アコモデーション理論には、相手に近づけて話すコンバージェンス(収束)と、相手と距離を取るダイバージェンス(分岐)があります。
コンバージェンス(収束)の意味
コンバージェンスとは、相手に合わせて話すこと。収束とも。
元の英語はconvergence(①1つにまとまること②収束)
コンバージェンス(収束)の例
・赤ちゃんと話すときのベビートーク
・外国人と話すときのフォリナートーク
・教師が学習者と話すときのティーチャートーク
ベビー・トークの意味
ベビートークとは、乳幼児に語り掛ける話し方。赤ちゃん言葉。
ベビー・トークの例
「見て。わんわんがいるよ」※「犬」を「わんわん」と表現
フォリナー・トークの意味
フォリナートークとは、母語話者が非母語話者に語り掛ける話し方
「フォリナー・トーク(Foreigner Talk)」とは、母語話者が第二言語話者(外国人)と話すときに自然に行う言語調整のことを指します。これは外国人にとって分かりやすくするために、母語話者が無意識または意識的に言語形式や話し方を簡略化・調整する現象です。
フォリナー・トークの特徴と例
- 語彙の簡略化
例:
×「拝見します」→ ○「見ます」
×「お召し上がりください」→ ○「食べてください」 - 文法の単純化 複雑な構造の文を使わない。
例:
×「もしよろしければ、そちらにご記入いただけますか?」
→ ○「ここに書いてください」
・非文(文法的に正しくない文)も多い
「あした、がっこう、くる、オーケー?」
・丁寧体を使わず普通体で話す(外国人に対応しているお店の人がときどきやっていますね) - 話すスピードの調整 発音を明瞭化する(はっきり発音する「ご・は・ん」)
ゆっくり、はっきり話す。 - 繰り返し・言い換えの使用
「これはカメラ。写真をとる。パシャ!」 - 主語や指示語の明確化
「それ」ではなく「この鉛筆」など、より具体的に言う。 - 情報の内容を調節する(必要最小限を伝えようとする)
ティーチャー・トークの意味
ティーチャートークとは、教師が学習者に語り掛ける話し方
ティーチャー・トークの特徴と例
・ゆっくり話す
・複雑な構造の文を使わない。
・発音を明瞭化する(はっきり発音する「ご・は・ん」)
・情報の内容を調節する(必要最小限を伝えようとする)
・疑問文が多い
・助詞が省略されない
「Aさん、週末は何をしましたか? 秋葉原へ行きましたか。秋葉原は何がおもしろかったですか?」
ダイバージェンス(分岐)の意味
ダイバージェンスとは、相手と離れて話すこと。分岐とも。
元の英語は、divergence(①分岐、不一致②発散)
ダイバージェンス(分岐)の例
・地方出身者がそれをアピールするために、東京人に対してもあえて方言で話す。
※アコモデーションは、相手に応じて話し方を調整することなので、そもそも方言しかしゃべれない場合は、「調整する」とはいえないので、ダイバージェンスではありません。
・本当は日本語がペラペラなのに、あえて片言の日本語で話す。
・普段はカジュアルに話している恋人が、突然丁寧な口調になる。
「昨日の夜はどこに行っていましたか」
アコモデーション理論が出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・令和元年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題13問4【アコモデーション理論のうちダイバージェンスの例】