方言周圏論とは
方言周圏論あるいは周圏分布とは、文化の中心だった京都から同心円状に言葉が伝わっていくこと。方言周圏論の読み方は「ほうげんしゅうけんろん」
柳田國男が自著『蝸牛考』で命名しました。
蝸牛(かたつむり)の呼び名から考えたので蝸牛考というタイトルです。
蝸牛考の読み方は「かぎゅうこう」
文化の中心(京都)から同じぐらいの距離が離れていれば同じような古い言葉が残っているというのが方言周圏論の考え方です。
異なった語形が文化の中心地から同心円状に分布しているので周圏分布といいます(平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題12問3)。
アホとバカも全国に周圏分布しているようです。
我らが探偵ナイトスクープが調べてくれました。
方言周圏論の実例
例えば、近畿地方では、蝸牛(かたつむり)のことを「デデムシ」と呼んでいました。
ですが、同じぐらい距離が離れている九州・東北には最新のトレンドはまだ到達していなので、京都では死語となった「ツブリ」をまだ使っていました。
現代では、テレビやインターネットがあるのですぐに全世界に伝わりますので方言周圏論は衰退しているといます。
昔は言葉が伝わるのにも時間がかかったんですね。
実に面白い。
方言周圏論への批判
ただ、近年では方言周圏論は必ずしもそのとおりにはならないと否定的な学者さんが多いようです。
↑こちらはYouTube動画ですがとても面白くて分かりやすいので一度見てみてください。
方言周圏論が今も通用するなら、東京の人が「カップル」と呼ぶものを、九州や北海道の人たちが「アベック」と呼ぶとか。文化の中心は東京に移っているので、東京からの同心円状で考えます。
東西対立分布とは
方言の東西対立分布とは、日本の方言が地域ごとに「東日本」と「西日本」に大きく分かれ、それぞれに特徴的な言語的な違いがあることを指します。日本の方言は、歴史的・地理的な要因により、東西で異なる語彙、発音、文法が存在し、この分布が「東西対立分布」として顕著に表れています。
東西方言の分け方
日本の方言は、おおまかに東西に分かれますが、その境界は関ヶ原(岐阜県)や糸魚川(新潟県)と浜松(静岡県)を結ぶ線(糸魚川-静岡構造線、または方言境界線)を基準とすることが一般的です。この境界線より東が「東日本方言」、西が「西日本方言」に分類されます。
東日本方言と西日本方言の特徴
- アクセント:東日本では、東京式アクセントが多く、平板型や中高型が一般的ですが、西日本は京阪式アクセントが多く、語ごとに複雑なアクセント体系を持つことがあります。
- 助詞の使い方:
- 東日本方言では、主語を表す助詞「が」をよく使うのに対して、西日本方言では「は」が主語として使われることが多いです。
- 否定の言い方:
- 東日本では「〜ない」を使うのに対し、西日本では「〜ん」を使う傾向があります(例:「食べない」 vs 「食べん」)。
- 動詞の連用形:
- 東日本では「食べる→食べて」と、連用形が「〜て」に変化するのに対し、西日本では「食べる→食べてぇ」のように母音が長くなるケースがあります。
- 語彙の違い:
- 東西で全く異なる単語が使われる場合も多いです(例:東日本の「寒い」が、西日本では「さぶい」になるなど)。
歴史的背景
この東西の分布は、日本の歴史的な都(平安京や江戸)や交通路の発展とともに形成され、特に平安時代以降の政治や経済の中心地の影響で発展してきたと言われています。
方言周圏論・周圏分布・東西対立分布が出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・令和6年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題12問1【東西対立分布の例】
・令和4年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題11【方言周圏論】問5
・平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3D(18)選択肢2【方言周圏論は、超越性の地理的反映であると解釈できる??】
・平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題14問3【周圏分布をなす文法形式の例】
・平成25年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題11問2選択肢2【方言周圏論】