【過去問解説】平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題3

H27試験Ⅲ
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新解説 問3

この問題の元ネタは現代日本語文法⑥p223です。

このような文法の難問は正答率が低く間違えても合格できますので気にしないでください。

「ところ」には3種類あります。①補足節の「ところ」②アスペクト表現の「ところ」③時間節の「ところ」

①の例)食べているところを見られた

補足節とは、主語や補語の関係にある節(詳しくは現代日本語文法⑥p13)

「見る」には「なにを」という補語が必要です。

この「なにを」が「食べているところを」になっているので補足節です。

②の例)さっきごはんを食べたところなので、おなかいっぱいです。

アスペクト表現とは、出来事がどの段階かを表す表現。

アスペクト表現の例)彼はご飯を食べているところです。私はいまご飯を食べたところです。

「食べているところ」は動作の進行中を表すアスペクト表現

「食べたところ」は動作の完了を表すアスペクト表現

③の例)問題について調べたところ、意外な事実が判明した。

時間節とは、主節が成立する時を、別の事態との関係によって限定する従属節

時間節の「ところ」は、ある状況下で新たな事態が成立することを表す。

時間節の「ところ」の例)新しくお店を出したところ、予想外の売り上げになった。

「新しくお店を出した」という状況下で「予想外の売り上げになった」という新たな事態が成立

では各選択肢を検討しましょう。

1 彼に頼んでみたところで、今さら結果は変わらないよ。

→上の「ところ」は逆接条件節「ところで」(現代日本語文法⑥p151参照)の一部

逆接条件節の例

・徹夜したところで、結果は変わらないよ。

・徹夜しても、結果は変わらないよ。

2 事件について調べてみたところ、意外な事実が判明した。

→上の「ところ」は時間節のところ

「事件について調べてみた」という状況下で「意外な事実が判明した」という新たな事態が成立

3 その男性が万引きしたところを、ちょうど目撃しました。

→上の「ところ」は補足節のところ

「目撃する」には「なにを」という補語が必要です。

この「なにを」が「その男性が万引きしたところを」になっているので補足節です。

4 さっきクーラーをつけたところなので、部屋が暑いです。

→上の「ところ」はアスペクト表現のところ

部屋が暑い原因が「さっきクーラーをつけたところ」

「クーラーをつける」出来事がどの段階かを表しています。

よって、答えは4

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新解説 問4

①「生徒達は入学したばかりで緊張している。教室に入ると、私の方を一斉に見た。」

②「教室に入ると、入学したばかりで緊張している生徒達が、私の方を一斉に見た」★名詞修飾表現

①は1文目で「生徒達は入学したばかりで緊張している」と情景描写しているので新情報として入ってくる。

②では「入学したばかりで緊張している」と修飾表現になっているので、すでに知っている(旧情報)かのように扱われている。

選択肢1

①の語りの視点は「生徒達」→「私」

②の語りの視点は「私」

②(名詞修飾表現)は語りの視点を「」に固定することができるため、結果的に談話の結束性を高めることができる。

結束性とは談話のつながりのこと。談話がしっかりつながっていたら結束性が高い。

結束性が高い例)きのう猫カフェに行った。その猫カフェは前から行きたかった猫カフェで秋葉原にある。

結束性が高くない例)昨日猫カフェに行った。私は英語の勉強が好きだ。今はちょっとお腹が空いている。

「語りの視点を「生徒達」に固定する」が誤り

×

選択肢2

上記のとおり修飾表現ではすでに知っていること(旧情報)のように扱われるため、相対的に後半(主節)が目立つ。

選択肢3

②の名詞修飾表現の例では語りの視点が「私」で固定されているため①より主観的に述べている。

×

選択肢4

①も②も従属節「教室に入ると」があり、主節「私の方を一斉に見た」との関係があるので、主従関係を断ち切ることはできていない。

よって、答えは2

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旧解説

平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅲの問題3は【日本語の名詞修飾表現】です。

問1 
内の関係の名詞修飾(連体修飾)と外の関係の名詞修飾(連体修飾)を分ける問題は、平成23年度日本語教育能力検定試験Ⅰ 問題1の⒀にも出題されていますので、比較してみてください。

内の関係名詞修飾(連体修飾)表現とは、
「昨夜訪れたレストラン」←「レストランに昨夜訪れた」
「海水浴に行った日曜日」←「日曜日に海水浴に行った」
「社長が行なった会見」←「会見を社長が行なった」
のように修飾される名詞が修飾している節の一部であったと考えられるもの。 

一方、外の関係名詞修飾(連体修飾)表現は、そのような関係になりません。
「景気対策を批判する声」←×「声 景気対策を批判する」

よって、正解は1です。

問2
外の関係の名詞修飾には、内容(同格)節補充節があります。

内容(同格)節…修飾する節が名詞の内容を表しているもの。内容(同格)節は、「という」を入れるかどうかの観点から、3つに分けられます。
⑴「という」をいれるのが自然。
例1…iPhone7が出るという噂が広まった。
例2…IPhone7を買えという命令がありました。
例3…iPhone7は革新的ではないという意見もあります。
⑵「という」を入れない。
例4…新品のiPhone7の味はいかがですか。
⑶「という」を入れても入れなくてもよい。
例5…iPhone7が盗まれる(という)事件があった。

補充節…修飾する節が名詞の内容を表してはいないもの。補充節は、因果関係的な名詞を使うもの(例1)と、相対的な名詞を使うもの(例2)に分けられます。
例1…過去問の解説を書いた結果、合格した。
例2…過去問の解説を書いた翌日に頭が痛くなった。

よって、正解は3です。

問3
アスペクトについてはこちらをご参照ください。
正解は4です。

問4
1,二文のときは、初めに生徒達の様子が描写され(生徒は入学したばかりで緊張している)、次に私の動きが描写され(教室に入ると)、最後に生徒達の動きが描写されています(生徒達が私の方を一斉に見た)。一方で、一つの文にまとめると、最初に私の動きが描写され(教室に入ると)、その後は、生徒たちの描写だけになっており、語りの視点の移動が少なく、スッキリしています。もっとも、最初に私の動きを描写していますので、「生徒達」に語りの視点を固定しているとはいえないのではないでしょうか。

2,「入学したばかりで緊張している」が名詞修飾表現になったため、旧情報のように扱われています。それによって、「生徒達が、私の方を一斉に見た」という主節の出来事が、二文のときに比べ相対的に目立っています。

3,生徒たちが、「入学したばかりで緊張している」というのは、「私」の主観です。

4,文の最後の述語を中心としたひとまとまりを主節といい、文の途中の述語を中心としたひとまとまりを従属節といいます。

よって、正解は2です。

問5
1,名詞修飾表現のみで一文を構成する特殊な文体は、具体的な対象に注目させるモノ的表現であるため、「ポケモンGOプラスの発売で大行列となったポケモンセンター」などのように、写真のキャプションで使用されます。

2,名詞修飾表現のみで一文を構成する特殊な文体は、主名詞に関する背景的な情報を提供できるため、「ベジータとブルマの息子であり、未来からやってきたトランクス」などのように、フィクション作品などで新しい登場人物を紹介するために使用されます。

3,名詞修飾表現のみで一文を構成する特殊な文体は、出来事の生起よりも、主名詞に注目させる表現ではないでしょうか。報道番組などで事件の発生を伝える際に、体言止めの表現(名詞修飾表現のみで一文を構成する特殊な文体)はあまり用いられないと思います。

4,名詞修飾表現のみで一文を構成する特殊な文体は、被修飾語の主名詞に注目させる表現であるため、「黙れ小僧!と怒鳴られて黙り込む真田信之」のように、シナリオのト書きなどで用いられます。

よって、正解は3です。

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