ダイクシスとは?
ダイクシスとは、話す場面によって意味が決まる表現。意味が話す場面に依存する表現。場面がないと正しい意味がわからない表現。直示表現とも。
例えば「これは何ですか」の「これ」
話す場面によって意味が決まります。
ペンを持っていれば、「これ」はペン
リンゴを持っていれば、「これ」はリンゴ
よって、「これ」はダイクシスです。
ダイクシス(直示表現)には、時間の直示、場所の直示、人称の直示、社会的直示、談話の直示という6つの種類があります。
ただし、「こちら」のように、ある直示表現が別の直示表現として使われるものもあります。
次の文章の「こちら」は何の直示ですか? 答えは最後にあります。
1.「こちらをご覧ください」
2.「こちらがA社長です」
ダイクシスの問題を解く方法
ダイクシスの問題は解答速報も割れたり、毎年質問が出るところなので、「翌日」など暗記で答えられる場合以外は正答率がとても低い。時間がかかるようならスキップしてください。
解き方としては以下の流れです。
①どんな場面で話しているか。日時場所誰がを設定する。
②各選択肢の該当の言葉が、場面(日時場所誰が)によって意味が変わるか検討
③場面によって意味が変わらなければダイクシスじゃない。
★問題:「明日」と「翌日」の違いは?
「明日」はダイクシスです。
「翌日」はダイクシスじゃありません。
この違いを説明してください。
私の説明はこのあと書きますが
まずは自分で説明できるか
「明日」「翌日」を使った例文を作りながら考えてみてください。
ダイクシス(直示)の解き方
「明日」は「運動会の明日」と言えません→ダイクシス
「翌日」は「運動会の翌日」と言えます→ダイクシスじゃない。
ダイクシスは今(その場面)を基準に意味を考えます。
「明日」といえば、「今(その言葉を発した現場)の次の日」
「翌日」といえば、「〇〇の次の日」
ダイクシス(直示)の問題が出たら
①その現場から意味が決まる→ダイクシス
②その現場とは関係なく意味が決まる→ダイクシスじゃない。
文を作って意味を確認すれば大丈夫です。
時間の直示の意味
時間の直示とは、時間を示すダイクシス
例えば「今日はいつですか」の「今日」
1月1日に話せば、「今日」は「1月1日」
12月31日に話せば、「今日」は「12月31日」
話す場面によって意味が決まります。
時間の直示の例
・今日、明日、明後日、明々後日
・先週、今週、来週
・先月、今月、来月
・次、後ほど
場所の直示の意味
場所の直示とは、場所を示すダイクシス。空間の直示とも。
例えば「ここはどこですか」の「ここ」
東京で話せば、「ここ」は東京
石垣島で話せば、「ここ」は石垣島
話す場面によって意味が決まります。
場所の直示の例
・これ、それ、あれ
・こちら、そちら、あちら
・この間、その間、あの間
・右、左、上、下、前、後ろ
・向こう
人称の直示の意味
人称の直示とは、話題になっている特定の人物を示すダイクシス
例えば「私はだれですか」の「私」
Aさんが話せば、「私」はAさん
Bさんが話せば、「私」はBさん
話す場面によって意味が決まります。
人称の直示の例
・私、僕、俺、おいら、あたし、おら、わがはい(1人称代名詞)
・君、あなた、お前、きさま(2人称代名詞)
・彼、この人、その方、(3人称代名詞)
社会的直示の意味
社会的直示とは、社会的関係を示すダイクシス。敬語に関わります。
社会的直示の例
・教師に対して先生(教師と生徒という関係を示す)
・父に対してお父さん(親子と言う関係を示す)
談話の直示の意味
談話の直示とは、談話に出てきた(出てくる)表現や内容を示すダイクシス
例えば「これは私がタイにいた時の話なんですが…」の「これ」
「これ」が何かは今から話す内容によって決まります。
談話の直示の例
・「昨日のパーティではAさんに会いました。この人がとてもすごくて…」
・「あなたは完璧ですね」「それは言い過ぎです」
・「先週行ったお店にまた行かない?」「あー、あの店、おいしかったよね」
以上のように、話に出てきた物事を指し示す指示詞を文脈指示といいます。
ダイクシス(直示表現)ではないもの
1.「翌〇」はダイクシスではありません
例)翌日、海に行かない?×
明日、海に行かない?〇
上のように場面に依存した使い方が「翌日」はできません。
例)運動会の翌日、筋肉痛になった◯
運動会の明日、筋肉痛になった×
上のように場面じゃないある時点を基準に使います。
ダイクシス(直示表現)が出題された日本語教育能力検定試験の過去問
平成25年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題4は大問でダイクシス(直示表現)が出題されていますので、特に読んでおきたい過去問です。
・令和元年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題9問3の選択肢1
直示のタイプの問題の答え
1.「こちらをご覧ください」
→場所の直示
2.「こちらがA社長です」
→人の直示
このように「こちら」はもともと「場所の直示」でしたが「人称の直示」としても使われています。