現代日本語文法は日本語の文法を網羅した本としては最高の本です。
だから皆さんに読んでほしい!
ですが難しすぎて挫折する人ばかりでした。
そこでこのブログでは初めて勉強する人でも現代日本語文法が読めるように
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- 本日の問題
- 第5部アスペクト 第3章アスペクトに関わる形式 第1節【複合動詞】
- 第5部アスペクト 第3章アスペクトに関わる形式 第2節【テ形+補助動詞など】
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本日の問題
【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを1つ選べ。
(10)【アスペクト】
1 道が曲がっている。
2 弟はひょろひょろしている。
3 富士山がそびえている。
4 ご飯を食べている。
5 この店の料理はありふれている。
第5部アスペクト 第3章アスペクトに関わる形式 第1節【複合動詞】
p35~
1. アスペクト的意味を表す複合動詞の2類
アスペクト的意味を表す複合動詞とは、「食べはじめる」「食べおわる」のように動きの段階を表す複合動詞
「食べはじめる」「食べおわる」のような動きの時間的局面を表す複合動詞と
「食べつくす」「食べきる」のような動きの完遂を表す複合動詞がある。
完遂を表す複合動詞はレア。少数の動詞からしか作れない。
○スキーしはじめる
○スキーしおわる
×スキーしつくす
×スキーしきる
2. 時間的局面を表す複合動詞
2.1「しかける」
p36
「しかける」は、直前あるいは少し取りかかった段階を表す。
・弟はおにぎりを食べかけた
2.2「しはじめる」「しだす」
p36~
「しはじめる」「しだす」は、動きが始まる段階を表す。
「しはじめる」は、予期していた動きに使いやすい。
「しだす」は、予期していなかった動きに使いやすい。
・電車がゆっくりと動きはじめた…予期していた動き
・電車が突然動きだした…予期していなかった動き
「しはじめる」「しだす」のように2つの似た言葉の使い分けについてもっと知りたい人や学習者とのレッスンに使いたい人には『くらべてわかる日本語表現文型ドリル』シリーズがおすすめ。
「~はじめる」と「~だす」の違いは『くらべてわかる中級日本語表現文型ドリル』p20にあります。
2.3「しつづける」
p37~
「しつづける」は、動きの持続過程を表す。
・弟はおにぎりを食べつづけた。
「しつづける」は、状態を表す「ある」「いる」と一緒に使って、状態持続を表すこともできる。
2.4「しおわる」
p38~
「しおわる」は、動きの終結段階を表す。
・弟はおにぎりを食べおわった。
3. 完遂を表す複合動詞
3.1「しつくす」
p39~
「しつくす」は、動きのすべてが遂行されて、あとに残った部分がないことを表す。
・弟はおにぎりを食べつくした。
3.2「しきる」
p40~
「しきる」は、動きが極限まで達することを表す。
・弟はお金を使いきった。
★疑問 「しつくす」と「しきる」の違いとは?
「しつくす」と「しきる」の違いとは?
「しつくす」:残るものがない
「しきる」:極限まで達する
「しきる」が登場した日本語教育能力検定試験の過去問
・令和3年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(9)【「きる」の意味】
3.3「しとおす」
p41~
「しとおす」は、1つの動作を中断することなく最初から最後まで一貫して遂行することを表す。
・弟は最後まで一人で人生ゲームをやりとおした。
第5部アスペクト 第3章アスペクトに関わる形式 第2節【テ形+補助動詞など】
1. テ形+補助動詞などの概観
p42
①テ形+補助動詞:「してくる」「していく」「しておく」「してある」「してしまう」
②動詞語基+「つつ」+補助動詞:「しつつある」
2.「してくる」「していく」
p42~
2.1「してくる」「していく」の意味と用法
p42~
「してくる」「していく」は、動きを状況変化として表現。①状態の出現②変化の進展③長期的継続を表す用法がある。
①朝日が出てきた…状態の出現
②だんだんわかってきた…変化の進展
③10年前から勉強してきた…長期的継続
「してくる」「していく」の空間移動を表す用法については現代日本語文法②p130~参照
2.2 状態の出現
p43
状態の出現とは、以前なかった状態が新たに出現すること
・朝日が出てきた…以前なかった朝日が新たに出現
状態の出現用法は「してくる」のみ。「していく」はない。
×朝日が出ていった
2.3 変化の進展
p44
変化の進展とは、時間の経過とともに次第に変化
①「してくる」:変化後に視点
②「していく」:変化前に視点
①秋から冬にかけて猫が太ってきた…変化後の冬の視点から描写
②秋から冬にかけて猫が太っていった…変化前の秋の視点から描写
2.4 長期的継続
p45
長期的継続とは、動作が長期間にわたって継続
①「してくる」:ある時点まで
②「していく」:ある時点から
①これまでずっと勉強してきた…ある時点(これ)まで
②これからもずっと勉強していく…ある時点(これ)から
3.「してしまう」
3.1「してしまう」の意味と用法
p45~
「してしまう」は、本来実現しにくいこあるいは実現してはならないことが実現することを表す。
①望ましくない②予想外③思い切って④完遂の用法がある。
①スマホが割れてしまった
②試験に受かってしまった
③先生がいないうちに食べてしまおう
④YouTubeを見る前に宿題を最後までしてしまいなさい。
「してしまう」のうち、④完遂を表す用法がアスペクト的用法
3.2 動きの完遂
p46~
「してしまう」は、動きの完遂を表すアスペクト的用法として使われる。
・YouTubeを見る前に宿題を最後までしてしまおう。
★疑問「しおわる」と「してしまう」の違いは?
「しおわる」:一般的な終結時点
「してしまう」:あえてその局面まで動きが進む
→単に動きが終決した時点を表すときは「しおわる」を使う。
①23時に宿題をしおわった。
②23時に宿題をしてしまった。
4.「してある」
4.1「してある」の意味と用法
p48~
「してある」は、ある目的のための動作の結果としてある状態が残っていることを表す。
「してある」は、動きが何かに役立つ点で「しておく」と意味が似ている。「しておく」については、p51~参照
・パーティのためにドレスを買ってある。
・パーティのためにドレスを買っておいた。
4.2 結果の残存
p49
結果の残存とは、対象への働きかけによって生じた結果が対象の状態として残存していることを表す用法
・パスワードはこの紙に書いてある。
4.3 効力の残存
p49
効力の残存とは、対象の変化は生じないが、ある目的のためにあらかじめ行った行為の効力が何らかの形で残存することを表す用法
・テストに備えて、しっかり寝てある…変化はしていないが睡眠不足解消という効力が残存
5.「しつつある」
5.1「しつつある」の意味と用法
p50
「しつつある」は、状況が徐々に変化していることを表す。書き言葉的。①変化の進展②状況の進行③変化の達成直前という3つの用法がある。
5.2 変化の進展
p50
変化の進展とは、時間の経過とともに変化する様子を表す用法。「次第に」「徐々に」「だんだん」「ゆっくり」などの言葉が一緒によく使われる。
・徐々に暖かくなりつつある。
5.3 状況の進行
p51
状況の進行とは、ある状況が進行していることを表す用法。
・巨人が洞窟の先へ進みつつある。
5.4 変化の達成直前
p51
変化の達成直前とは、ある変化が達成する直前であることを表す用法
・桜が咲きつつある。
6.「しておく」
6.1「しておく」の意味と用法
p51~
「しておく」は、①行為の結果の状態を一定期間維持する②何かに備えて事前に処置するの2つの用法がある。
6.2 結果の維持
p52
結果の維持とは、対象に変化を与え、その結果の状態を一定期間維持すること。
・5年前にロレックスを買って持っておけば3倍の値段になったのに。
6.3 事前の処置
p52~
事前の処置とは、ある目的のために、あらかじめ必要な行為を行うこと。
・ハロウィンのために、すごい衣装を買っておいた。
「まで」結果の維持/「までに」事前の処置
・5時まで裏口を開けておく…結果の維持
・5時までに裏口を開けておく…事前の処置
第5部アスペクト 第3章アスペクトに関わる形式 第3節【形式名詞+「だ」】
p53~
1. 形式名詞+「だ」
p54
「ところ」+「だ」がアスペクト的意味を表すことがある。
・私は今おにぎりを食べるところだ…「ところ」のアスペクト的用法
・彼が住んでいるところは汚い…「ところ」のアスペクト的じゃない用法
2.「ところだ」
2.1「ところだ」の用法
p54~
「ところだ」は、「〇〇の場面だよ! 」という風に取り上げる形式。そのため〇〇に入る動詞の形によって色々なアスペクト的意味を表す。
・おにぎりを食べるところだ…動きの直前の場面
・おにぎりを食べているところだ…動きが進行中の場面
・おにぎりを食べたところだ…動きの直後の画面
2.2 動きの直前の場面
p55
「するところだ」の形で、動きの直前の場面を表す。
・おにぎりを食べるところだ。
2.3 動きが進行中の場面
p55~
「しているところだ」の形で、進行中の場面を表す。
・おにぎりを食べているところだ。
2.4 動きの直後の場面
p56~
「したところだ」の形で、動きの直後の場面を表す。
・おにぎりを食べたところだ。
2.5 反事実的な事態の想定
p57
「ところだ」は、反事実的な事態の想定を表す用法もある。
・もう少しで秘密の写真を公開してしまうところだった…公開していない(反事実)ことが含意
3.「ばかりだ」
p57~
「したばかりだ」の形で、動きが終わってからほとんど時間が経過していないことを表す。
・おにぎりを食べたばかりだ。
★疑問「たばかりだ」と「たどころだ」の違いは?
「たばかりだ」:動きが終わってからの時間の経過が短いと話し手が感じている。
「たところだ」:動きの直後の具体的な場面
○先月、日本に来たばかりなのでまだ日本語が話せません。
×先月、日本に来たところなので、まだ日本語が話せません。
○今、日本に来たところです。今から成田空港を出ます。
4.「最中だ」
p58~
「最中だ」は、意志的な動作動詞のシテイル形に接続して、その動作がまさに進行中であることを表す。
・弟はおにぎりを食べている最中だ。
第5部アスペクト 第3章アスペクトに関わる形式 第4節【アスペクトに関わるそのほかの形式】
p59~
1.「ことがある」
p60~
「たことがある」は、経験を表す。
・弟は納豆おにぎりを食べたことがある。
2.「しようとする」
p61
「しようとする」は、直後の変化に向かって状況が推移していることを表す。
・弟がおにぎりを食べようとしている。
3.「したて」
p61~
「したて」は、動きの直後の局面を表す。
・このおにぎりは作りたてです。
4.「しっぱなし」
p62~
「しっぱなし」は①動きが止まらない②動きの結果を放置という2つの用法がある。
①弟はイベントでずっと踊りっぱなしだ…動きが止まらない
②トイレのドアが開きっぱなしだ…結果を放置
第5部アスペクト 第4章アスペクトに関わる副詞的成分 第1節【アスペクトに関わる副詞的成分とは】
1. アスペクトに関わる副詞的成分の3種類
p65~
アスペクトに関わる副詞的成分には3つの種類がある。
①「まだ」「もう」「やがて」「突然」「ついに」のように事態実現の時間的な取り上げ方を表すもの
・弟はまだ服を着ていません。
②「ゆっくり」「どんどん」のようにどのように進行したか表すもの
・弟はゆっくり服を着ています…進行中
③「一瞬」「きちんと」のようなどのように進行したか表さないもの
・弟がついに服を着ました。きちんと服を着ています…結果
2. 事態実現の時間的な取り上げ方を表す副詞的成分「まだ」「もう」「やがて」「突然」
p66
・弟はまだおにぎりを食べていない。
・弟はもうおにぎりを食べている。
・弟はやがておにぎりを食べはじめた。
・弟は突然おにぎりを食べだした。
3. 進行の過程を取り上げる副詞的成分「ゆっくり」「次々に」
p66
進行の過程を取り上げる副詞的成分には①「ゆっくり」「どんどん」のように1つの事態の進行の様子を表すもの②「次々に」のように複数の事態が発生することをとらえて繰り返しを表すものがある。
①弟はゆっくりおにぎりを食べている…進行の様子
②弟は次々におにぎりを食べている…繰り返し
4. 進行の過程を取り上げない副詞的成分「一瞬」「ぴかぴかに」「5つ」「かつて」
p67
進行の過程を取り上げない副詞的成分には①瞬間性②変化結果③量④経歴がある。
①私は一瞬、ヤツの姿を見ている…瞬間性
②靴がぴかぴかに磨かれている…変化結果
③弟は朝ご飯におにぎりを5つも食べている…量
④弟はかつてイギリスに留学している…経歴
5. 3種類の副詞的成分の語順
p67
3種類の副詞的成分のうち①事態実現のタイミングを表す副詞的成分が最初にくることが多い。
・弟は突然、次々におにぎりを食べだした。
第5部アスペクト 第4章アスペクトに関わる副詞的成分 第2節【事態実現の時間的な取り上げ方を表す副詞的成分】
1.「まだ」「もう」
p68~
「まだ」「もう」は、ある時点で事態が実現しているかいないか、あるいは終結しているかいないかを表す。
・弟はまだおにぎりを食べていない…その事態がまだ実現していない
・弟はもうおにぎりを食べている…その事態がすでに実現している
2. 事態実現のタイミングを表す副詞的成分
p69~
事態実現のタイミングを表す副詞的成分とは、動きや状態の実現するタイミングを表すもの。
「突然」「いきなり」「だしぬけに」…動きの突発性を表す。
・弟はだしぬけにおにぎりを食べた。
「すぐに」「ようやく」「まもなく」「しばらくして」「やがて」「そのうち」…基準となる時点からどのぐらい時間が経過して事態が実現するか表す。
・弟はようやくおにぎりを食べた。
「ついに」「とうとう」…事態がある段階に進むことを表す。
・弟はとうとうおにぎりを食べた。
3. 事態実現のあり方を表すそのほかの副詞的成分
p71
「また」「今度も」は、事態の実現が1度ではないことを表す。
・弟はまたおにぎりを食べている。
・弟は今度もおにぎりを食べている。
第5部アスペクト 第4章アスペクトに関わる副詞的成分 第3節【進行の過程を取り上げる副詞的成分】
1. 進行の過程を取り上げる副詞的成分とは
p72
進行の過程を取り上げる副詞的成分には①進行の様態を表すもの②繰り返しを表すものがある。
2. 進行の様態を表す副詞的成分
p72
「ゆっくり」「のんびり」「てきぱきと」「少しずつ」「次第に」などが進行の様態を表す副詞的成分
・弟はのんびりおにぎりを食べている。
3. くりかえしを表す副詞的成分
3.1 複数事態のくりかえし
p73
「次々と」「次々に」「くりかえし」「何度も」「相ついで」などが複数事態の繰り返しを表す副詞的成分
・弟は次々とおにぎりを食べている。
3.2 習慣的動作
p73~
「いつも」「毎日」「毎朝」「ふだん」「例年」などが習慣的動作を表す副詞的成分
・弟は毎朝おにぎりを食べている。
第5部アスペクト 第4章アスペクトに関わる副詞的成分 第4節【進行の過程を取り上げない副詞的成分】
1. 瞬間性を表す副詞的成分
p74~
瞬間性を表す副詞的成分とは、「一瞬」「ちらっと」「ピカッと」「パシッと」「バンと」「ドンと」「ピタッと」のように時間幅がないことを表すもの。
・弟はちらっとおにぎりを見た。
2. 変化結果を表す副詞的成分
p75
変化結果を表す副詞的成分とは、「きちんと」「こなごなに」「ぴかぴかに」「ばらばらに」「つやつやに」のように動きの変化結果の様態を表すもの。
・弟の靴はぴかぴかに磨かれている。
3. 量を表す副詞的成分
p75~
量を表す副詞的成分とは、「1杯」「2個」「3つ」など。
・弟は昨晩、おにぎりを5つ食べている。
4. 経歴に関わる副詞的成分
p76
経歴に関わる副詞的成分とは、「1回」「2度」のように発生度数を表すものや、「去年」「以前」「かつて」など過去を表すもの。
・弟は去年イギリスに留学している。
第5部アスペクト 第4章アスペクトから見た動詞の分類 第1節【分類の原理】
1. 動き動詞と状態動詞
p77~
動詞には①動き動詞と②状態動詞がある。
①動き動詞…アスペクトをもつ
②状態動詞…アスペクトをもたない
アスペクトとは、動きの段階を表すもの。状態動詞は動きがないのでアスペクトを持たない。
2. 動き動詞の4分類
2.1 動き動詞の分類と2つの軸
p79
継続 | 瞬間 | |
---|---|---|
主体動作 | 遊ぶ、住む | 発明する、預ける |
主体変化 | 太る、成長する | 立つ、死ぬ |
主体動作動詞:継続動詞が多い
主体変化動詞:瞬間動詞が多い
2.2 主体動作動詞と主体変化動詞
[シテイル形の意味との関わり]
p79~
シテイル形は、動きの段階のどこかに焦点をあてて状態として表す機能がある。
・弟はおにぎりを食べている…「食べる」の進行中の段階を状態として表す。
・弟はおにぎりの前に立っている…「立つ」の結果の段階を状態として表す。
①主体動作動詞は、主体がどのような動作をするか。
・弟がおにぎりを食べる…主体動作
②主体変化動詞は、主体がどうなるか。
・弟が太る…主体変化
[自動詞・他動詞と主体動作動詞・主体変化動詞の関係]
p80~
動詞例 | 自他 | |
---|---|---|
主体動作動詞 | 暖める、回す、壊す | 他動詞 |
主体変化動詞 | 暖まる、回る、壊れる | 自動詞 |
①主体動作動詞:他動詞が多い。
②主体変化動詞:自動詞が多い。
①他動詞のシテイル形:進行中の意味が多い。
・部屋を暖めている…進行中
②自動詞のシテイル形:結果の意味が多い
・部屋が暖まっている…結果
[主体の動作が同時に主体の変化でもある動詞(再帰的な動詞)]
p81~
「(服を)着る」「(眼鏡を)かける」「(帽子を)かぶる」「(髪を)束ねる」「(名札を)つける」「(自分の髪を)切る」のような対象だけでなく自分にも変化が起こる動詞を再帰的他動詞という(現代日本語文法②p297~参照)
再帰的他動詞のシテイル形(テイル形)は、進行中の意味になるときも結果の意味になるときもある。
・弟はさっき起きたばかりで、いま、急いでスーツを着ています…進行中
・今日は面接なので、弟はきちんとしたスーツを着ています…結果
[主体の変化が継続的に進展する動詞]
p82~
継続的に変化が進む主体変化動詞のシテイル形(テイル形)も、結果の意味になるときもあれば、進行中の意味になるときも。
・30分前に暖房をつけたので、そろそろ部屋が暖まっているでしょう…結果
・あ、暖房が動きはじめたね。だんだん部屋が暖まっている…進行中
2.3 継続動詞と瞬間動詞
[シテイル形の意味との関わり]
p83~
動詞が進行中の意味を表すためには、動きの時間的な幅が必要。
・弟がおにぎりを食べている…「食べる」という動きには時間的な幅があるので進行中を表せる。
・弟が立っている…「立つ」という動きには時間的幅があまりないので進行中を表すのが難しい。左の文は通常「立った結果の状態」として解釈される。
継続動詞とは、動きに時間的な幅がある動詞。「食べる」「歩く」
瞬間動詞とは、動きに時間的な幅がない動詞。「立つ」「死ぬ」
[継続動詞・瞬間動詞と動詞の用法]
p84~
動きを時間の幅があるものとしてとらえる→継続動詞
動きを時間の幅があるものとしてとらえない→瞬間動詞
疑問「弟は結婚しています」と言われたらどんな想像をしますか?
「弟は結婚しています」と言われたらどんな状況を思い浮かべますか?
実は「弟の結婚式の最中」をイメージする外国人学習者が多いんです。
「結婚しています」は結婚式が進行中であることを意味しません。
「結婚した結果の状態」であることを意味します。
日本語レッスンの際は学習者が誤解していないか理解を確認してあげてください。
日本語では「結婚する」を時間の幅のある動きとしてとらえていません。
[継続動詞のアスペクト的な性質と関係する現象]
p85~
継続動詞は、「しはじめる」「しつつづる」「しおわる」で複合動詞を作ることができる。
「しおわる」は「しはじめる」「しつづける」に比べて制限がある。
「歩く」「暖まる」「愛する」「あこがれる」「痛む」のように終結点がはっきりしない動詞の場合、不自然。
○弟は歩きはじめた
○弟は彼女を愛しつづけた
?弟は彼女を愛しおわった
[瞬間動詞とのアスペクト的な性質と関係する現象]
p87~
瞬間動詞は、時間の幅がないので「しはじめる」「しつづける」「しおわる」を使うことが難しい。ただし「しつづける」は、結果が維持される動詞からは作ることができる。
?弟は立ちはじめた
○弟は立ちつづけた…立った結果が維持されている
?弟は立ちおわった
3. 動き動詞の分類に関わるそのほかの要因
3.1 結果のあり方からの分類
p89~
変化の結果のあり方から①主体の意思によって結果が維持①主体の意思に関係なく結果が残存③いったん変化したら元に戻らないの3タイプに分けられる。
[結果が維持されるタイプ]
p90~
結果が維持されるタイプとは、「座る」のように主体の意思によって結果が成立した状態が続くタイプ
・弟が座る
・弟がお金を銀行に預ける。
「座る」「預ける」は動きの後一定の時間その結果を維持する。
結果の状態が意思によって一定時間続くことを表すので期間を表す成分が使える。
・弟が1時間座る。
・弟が1年間お金を銀行に預ける。
結果が維持されるタイプのシテイル形は、結果の状態が一定の時間続くことを表す。
・弟が座っている。
[結果が残存するタイプ]
p92~
結果が残存するタイプとは、「閉まる」のように主体の意思と関係なく結果が成立した状態が続くタイプ
・ドアが閉まる。
結果が残存するタイプは、期間を表す成分が使えない。
?ドアが1時間閉まる。
結果が残存するタイプのシテイル形は、結果の状態が一定の時間続くことを表す。
・ドアが閉まっている。
シテイル形は、期間を表す成分が使える。
・ドアが1時間閉まっている。
[変化が非可逆的なタイプ]
p94~
変化が非可逆的なタイプとは、「成長する」「死ぬ」のようにその変化が生じたあと変化前の状態に戻すことができないタイプ。
変化が非可逆的なタイプは、期間を表す成分がシテイル形でも使えない。
?弟は1時間成長する
?弟は1時間成長している
非可逆的な主体変化
・弟が成長する。
・弟が死ぬ。
非可逆的な対象変化
・弟を首にする。
・家を建てる。
3.2 動きの成立時点の有無による分類
p95~
動きの成立時点という観点から①瞬間動詞②動きの成立時点がある継続動詞③動きの成立時点がない継続動詞の3タイプに分けられる。
[瞬間動詞]
p96
瞬間動詞は、動きを一時点としてとらえるもの。一時点で動きが成立しているのでその時点が成立時点。物理的に「一瞬」で起こる動きとは限らない。
・試験に合格する。
・弟が結婚する。
「結婚する」は、婚姻届を書いて役所に提出するなど物理的には「一瞬」で起こらないが動きを一時点としてとらえている。
[均質型の継続動詞]
p96~
均質型の継続動詞は、特定の成立時点をもたず、均質に動きが進んでいくもの。
・公園を歩く。
・公園で遊ぶ。
・公園で歌う。
均質型の継続動詞は、「〜しているが、まだできていない」と言えない。
?公園を歩いているが、まだ歩けていない
[特定時点成立型の継続動詞]
p98~
特定時点成立型の継続動詞は、動きの進行のあとで特定の成立時点をもつ。
・自宅学習用動画を作る。
特定時点成立型の継続動詞は、「〜しているが、まだできていない」と言える。
○自宅学習用動画を作っているが、まだ作れていない。
4. 状態動詞
4.1 語彙的な状態動詞と用法としての状態動詞
p99
状態動詞には①語彙的な状態動詞と②用法としての状態動詞がある。
4.2 語彙的な状態動詞
p99~
語彙的な状態動詞とは、状態動詞としての用法しかもたない本来の状態動詞
語彙的な状態動詞は、動きの展開がないのでアスペクトをもたない。
※アスペクトとは、動きの展開がどの段階かを表す文法カテゴリー
語彙的な状態動詞には①スル形状態動詞②スル・シテイル形両用状態動詞③シテイル形状態動詞の3タイプがある。
[スル形状態動詞]
p100
スル形状態動詞とは、スル形だけをとる状態動詞。シテイル形をとらない状態動詞。
・猫が部屋に{○いる/×いっている}
スル形状態動詞は名詞修飾をする場合もスル形
○猫がいる部屋
×猫がいっている部屋
[スル・シテイル形両用状態動詞]
p100~
スル・シテイル形両用状態動詞とは、スル形もシテイル形もとる状態動詞。
・弟は全ての点で私より{○まさる/○まさっている}
スル・シテイル形両用状態動詞は名詞修飾をする場合、スル形・シテイル形が使われる。
○全ての点で私よりまさる弟
○全ての点で私よりまさっている弟
[シテイル形状態動詞]
p101
シテイル形状態動詞とは、シテイル形だけをとる状態動詞。スル形をとらない状態動詞。
・弟は{×ひょろひょろする/○ひょろひょろしている}
シテイル形状態動詞は、「〜ている」を使っているが、アスペクトを表しているわけではない。
※アスペクトとは、動きがどの段階かを表す文法カテゴリー
シテイル形状態動詞は名詞修飾をする場合、シテイル形も使われるがシタ形が多い。
○ひょろひょろしている弟
○ひょろひょろした弟
4.3 用法としての状態動詞
p101~
用法としての状態動詞とは、本来動きを表す動詞が、用法によっては状態的な意味を表すもの
・スプーンが曲がった…スプーンの動きを表す。
・道が曲がっている…道の動きを表さない。道の状態を表す。
「曲がっている」は、シテイル形だがアスペクト的意味をもたない。動きの段階に焦点を当てているわけではない。
用法としての状態動詞についてはp33~も参照
4.4 状態動詞の変化動詞的使用
p102
「似る」「ぽっちゃりする」はシテイル形状態動詞。スル形で動きを表さない。
?弟は母に似た…「似る」という動き?
?弟はさいきん少しぽっちゃりした…「ぽっちゃりした」という動き?
「てくる」「ていく」と一緒に使うと、変化という動きを表せる。
・弟は母に似てきた。
・弟はさいきん少しぽっちゃりしてきた。
第5部アスペクト 第4章アスペクトから見た動詞の分類 第2節【動詞の分類】
1. 動詞の分類の概観
p103は付箋を貼っておこう。
日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第5版(赤本)を持っている方はp66の動詞分類表と比べてみて。
日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第5版p66の「動き動詞」をさらに細かく整理するのが本書のp103~
動詞は①動き動詞②状態動詞の2つに分けられる。
動き動詞は、動きの展開がありアスペクトをもつ。
状態動詞は、動きの展開がないのでアスペクトを持たない。状態動詞は性質、存在、関係性などを表す。
2.動き動詞の分類
2.1 動き動詞の分類における注意点
p104
動き動詞の分類をするときに「繰り返し」や「経歴」の用法は検討しない。いろいろな動詞で使えるので分類するときに役立たない。
・病気で次々に鶏が死んでいる…繰り返し
・弟は中学生の頃、イギリスに留学している…経歴
2.2 継続動詞の主体動作動詞・均質型
p104~
継続動詞とは、動きが展開する時間的な幅をもつ動詞
継続動詞の多くは主体動作動詞。
継続動詞の主体動作動詞は①均質型②特定時点成立型に分かれる。
均質型とは、特定の成立時点をもたず、均質に動きが進んでいくもの。
・公園を歩く。
・東京に住む。
均質型は、「〜しているが、まだできていない」と言えない。
?東京に住んでいるが、まだ住めていない。
均質型は「しばらく」「〜間」のような期間を表す成分は、その動きが展開している過程を表す。
・弟はしばらく東京に住んだ。
・休みのあいだ、公園を歩いた。
均質型は、動きに成立時点がないので、「しおわる」を使うのは難しい語が多い。
?弟は東京に住みおわった。
2.3 継続動詞の主体動作動詞・特定時点成立型
p106~
特定時点成立型とは、動きの進行のあとで特定の成立時点をもつもの。
特定時点成立型は結果のあり方によって①結果が維持されるタイプ②結果が残存するタイプ③変化が非可逆的なタイプに分けられる。
特定時点成立型のシテイル形は通常「進行中」の意味になる。
・弟は外で絵を描いています…進行中
特定時点成立型は、「〜しているが、まだできていない」と言える。
○弟は外で絵を描いているが、まだ描けていない。
特定時点成立型は、動きに成立時点があるので、「しおわる」を使える。
○弟は絵を描きおわった。
①特定時点成立型の結果が維持されるタイプの動詞例(変化の後が目的)
・窓を開けた…「開ける」動きの後にその結果の状態を意思的に維持するという意味(p90参照)
・窓をしばらく開けた…「開けた」結果が維持される期間
②特定時点成立型の結果が残存するタイプの動詞例(今を変えることが目的)
・部屋を片付けた…「片付ける」動きの後に意思に関係なく結果が残存(p92参照)
・部屋をしばらく片付けた…「片付けた」結果の期間ではなく片付ける過程の期間を表す。
③変化が非可逆的なタイプの動詞例
・弟が成長した…「成長する」動きの後に元に戻ることはできない(p94参照)
?弟がしばらく成長した…変化が非可逆的なタイプでは「しばらく」を使えない。
2.4 継続動詞の主体変化動詞
p108~
継続動詞の多くは主体動作動詞。主体変化動詞は少ないが①結果が残存するタイプ②変化が非可逆的なタイプの2つがある。
主体変化動詞のシテイル形は通常結果の意味を表す。
・部屋が暖まっている…「暖まった」結果を表す。
変化の過程を取り上げる成分と一緒に使えば進行中の意味になる。
・部屋がゆっくりと暖まっている…進行中を表す。
結果が残存する主体変化動詞の例
・部屋が暖まる…「暖まる」主体変化の後に意思に関係なく結果が残存
変化が不可逆な主体変化動詞の例
・年をとる…「年をとる」という主体変化のあとに元に戻れない。
2.5 瞬間動詞の主体動作動詞
p109~
瞬間動詞の主体動作動詞は少ない。変化のあり方によって①変化がないタイプ②結果が維持されるタイプ③結果が残存するタイプ④変化が不可逆なタイプの4つに分かれる。
瞬間動詞は、動きが展開する過程をもたないので、通常シテイル形が進行中の意味にならない。
・弟は中学受験に落ちている…経歴
・弟は部屋の電気を消している…動作の結果
2.6 瞬間動詞の主体変化動詞
p111~
瞬間動詞の主体変化動詞は多い。変化の性質によって①変化が維持されるタイプ②結果が残存するタイプ③変化が非可逆なタイプの3に分かれる。
瞬間動詞は、動きが展開する過程をもたないので、通常シテイル形が進行中の意味にならない。
・弟が立っている…変化の結果
3. 状態動詞の分類
p113~
3.1 スル形状態動詞
スル形状態動詞とは、スル形だけをとる状態動詞(p100参照)。
・猫が部屋に{○いる/×いっている}
3.2 スル・シテイル形両用状態動詞
スル・シテイル形両用状態動詞とは、スル形もシテイル形もとる状態動詞(p100参照)。
・弟は全ての点で私より{○まさる/○まさっている}
3.3 シテイル形状態動詞
シテイル形状態動詞とは、シテイル形だけをとる状態動詞。スル形をとらない状態動詞(p101参照)。
・弟は{×ひょろひょろする/○ひょろひょろしている}
シテイル形状態動詞は、「〜ている」を使っているが、アスペクトを表しているわけではない。
本日の問題の答え
【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを1つ選べ。
(10)【アスペクト】
1 道が曲がっている。
2 弟はひょろひょろしている。
3 富士山がそびえている。
4 ご飯を食べている。
5 この店の料理はありふれている。
アスペクトとは動きの段階を表すもの。状態動詞は動きの段階がないのでアスペクトをもたない。
1 道が曲がっている p102参照(曲がるは主体変化動詞だが左の文は状態動詞の用法)
2 弟はひょろひょろしている p113参照
3 富士山がそびえている。 p101
4 ご飯を食べている。動作が進行中の段階というアスペクト的意味。
5 この店の料理はありふれている。 p113
よって、答えは4
シテイル形(アスペクト)の教え方【会話例】
世界で最も多くの日本語学校が採用している日本語テキスト『みんなの日本語』では14課で「シテイル形」が登場します。ハマブログの「みん日」ページでは実際の授業で私が使用した会話を見ることができます。
また下記サイトから「ている(進行中)」の導入会話について説明した動画を購入してダウンロードすることもできます。