【過去問解説】平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題1【2016】日本語の可能表現

H28試験Ⅲ
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問1の解き方

下線部A「動詞の形態が変わるのに合わせて格関係も変わる表現」の例として不適当なものを選びます。

動詞の形態を変えてみます。

例えば、全部辞書形にしてみましょう。

動詞の形態が変わるのに合わせて格関係も変わる

→動詞の形を変えたら、助詞が変わるか検討

1 彼は背中大きなリュック背負う。

「に」「を」→「に」「を」変わっていません。

2 太郎は遠くの雷の音聞く。

「が」→「を」変わりました。

3 部下企画書を作る。

「に」→「が」変わりました。

4 机の上に荷物置く。

「が」→「を」変わりました。

よって、答えは1

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問2の解き方

具体的な例文を考えて格関係(助詞)が変わるか検討します。

【自発】
過去問を解説した日々思い出す。→過去問を解説した日々思い出される。

【直接受身】
飼い猫噛んだ。→僕飼い猫噛まれた。

【尊敬】
来た。→猫様来られた。

【尊敬】だけ格関係(助詞)が変わっていません。

よって、答えは3

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問3の解き方

選択肢から具体的な例を考えます。

選択肢1

活用語尾とは、活用するとき変化する部分。

例)「食べる」の「る」

話し言葉のときに「る」が消失すると…

今からご飯を食べ。

明日はラーメンを食べ。

明らかに変です。

×

選択肢2

「ら抜き言葉」は可能の意味です。

×

選択肢3

いわゆる「ら抜き言葉」とは可能の意味の「見られる」「来られる」等を「見れる」「来れる」のように言う言い方のことで,話し言葉の世界では昭和初期から現れ,戦後更に増加したものである。 

https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/20/tosin03/09.html

×

選択肢4

五段動詞の可能動詞は以下の通りです。

書く→書ける 〇 

読む→読める 〇

話す→話せる 〇

一段動詞の場合は、「ーられる」でした。

食べる→食べられる

見る→見られる

ここから「ら」を抜くと可能動詞のようになります。

書ける

読める

食べれる

見れる

「ら抜き言葉」の発生は、一段動詞の可能動詞化として捉えられます。

よって答えは4

「ら抜き言葉」について詳しくは下の記事をどうぞ

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問4の解き方

「可能表現が使える範囲は言語によって異なっている」ことが原因の学習者の誤用

つまり日本語では可能表現が使えない例を探します。

正しい文に直してみるとわかりやすいです。

問題文のヒントの通り「-eru」になっていれば、(あるいは「できる」を使えば)可能表現です。

1 私はロシア語を話せていません。

→私はロシア語を話ません。

可能表現を使えます。

2 この薬を飲めば、病気はすぐに治れますよ。

→この薬を飲めば、病気はすぐに治ますよ

可能表現を使えません。

3 1年前よりも上手にしゃべられるようになりました。

→1年前よりも上手にしゃべれるようになりました。

可能表現を使えます。

4 私はどうしても逆上がりをできません。

→私はどうしても逆上がりができません。

「できる」は「-eru」ではありませんが、「できる」が可能表現であることはわかりますね。

例)私は英語ができます。

よって、答えは2

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問5の解き方

「動作対象の性質を表す可能の用法」とあるので

①動作対象は何か?(「~を」の「~」に来る名詞は?)

②可能表現は何を表しているか?

検討します。

1 網棚には、60kgまで荷物が置けます。

①「~を置く」の動作対象は「荷物」です。

②可能表現は「網棚」の性質を表しています。

※60kgまで荷物を置けるのは「網棚」ですね。

ですが「置く」の「動作対象」は「荷物」です。

・網棚に荷物を置く

「網棚」は動作対象を置く場所です。

下線部Dは「動作対象の性質による可能」ですが

選択肢1は「動作対象を置く場所の性質による可能」なので違います。

2 この店は、どの席でもタバコが吸えます。

①「~を吸う」の動作対象は「タバコ」です。

②可能表現は「この店」の状況を表しています。

3 この本は絵も多くて、子どもでも読めます。

①「~を読む」の動作対象は「この本」です。

②可能表現は「この本」の性質を表しています。

4 バタフライだと、400mぐらい泳げます。

①「泳ぐ」は自動詞なので動作対象はありません。

②可能表現は「自分」の能力を表しています。

よって、答えは3

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以下は日本語教師になる前に書いた解説です。

※他の解き方、考え方を知るのに役立つので、あえて残しています。

どこよりも早い解答速報(解説付き)

平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅲの問題1は【授受動詞と待遇表現】でした。
平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅲの問題1は【可能表現とラレル】です。

問1 動詞の形態が変わるのに合わせて格関係も変わる表現の例として不適当なものを選ぶ問題です。
各選択肢の動詞を辞書形(ル形)に戻してみます。

1,彼は背中に大きなリュックを背負う。
2,太郎は遠くの雷の音聞く。
3,部下が企画書作る。
4,机の上に荷物置く。

1,だけ格関係が変わっていませんので、1が正解であると思料します。

問2 格関係が変わらない「ラレル」を選ぶ問題です。
具体例を作って検討します。

【自発】
過去問を解説した日々思い出す。→過去問を解説した日々思い出される。

【直接受身】
飼い猫噛んだ。→僕飼い猫噛まれた。

【尊敬】
来た。→猫様来られた。

【尊敬】だけ格関係が変わっていませんので、3が正解であると思料します。

問3「ら抜き言葉」に関する問題です。

五段活用の動詞は、下一段活用の動詞に変化することで、可能動詞になります。
例)飛ぶ→飛べる 書く→書ける 行く→行ける

一方で、一段動詞で可能の意味を表すには、「ラレル」と使わければならないとされてきました。
例)食べる→食べられる 見る→見られる 出る→出られる

しかしながら、問2で確認しましたように「ラレル」には、自発・受身・尊敬という意味もありますから、「ラレル」が可能の意味を表しているのか、他の意味を表しているのか判別し難い場合があります。
例)先生はタイ料理を食べられた。
→可能(辛くて食べることができないかもと思っていたけれど食べることができた)なのか尊敬なのか、分かりません。

どうしましょう?
一段動詞でもレルを使って、五段動詞みたいに可能動詞化してしまえば、他の意味はないから分かりやすいぞ!
例)食べる→食べれる 見る→見れる 出る→出れる
例)先生はタイ料理を食べれた。
→先生はタイ料理を食べることができた、という意味が明確になりました。

文法的に正しくないと言われ、「有識者」の方々から「若者の言葉の乱れ」であると苦言を呈されてきた可哀想な「ら抜き言葉」ですが、実際は上の通り「ら抜き言葉」のほうが合理的なので、次第に優勢となり、最新(2015年度)の文化庁【国語に関する世論調査】では、とうとう「ら抜き言葉」が多数派となったようです。

The Huffington Post「ら抜き言葉」使う人がついに多数派に 「おk」「うp」も文化庁が調査してみると…

以上より、正解は4であると思料します。

問4
日本語の可能表現は動作主体による実現能力を表す場合に使えます
例1) 私はロシア語が話せます。

日本語の可能表現は動作主体によらない実現能力を表す場合には使えません。
例2) この薬を飲めば、病気はすぐに治れますよ。☓
→動作主体ではなく薬の実現能力。

しかし、動作主体によらない実現能力を表す場合にも可能表現が使える言語もあります。
可能表現が使える範囲は言語によって異なっており、これに起因する学習者の誤用(母語の干渉負の転移)が見られます。
その例を選べという問題ですから、正解は2であると思料します。

問5 動作対象の性質による可能を表す用法の例を選ぶ問題です。
動作とは、事を行うために体を動かすこと。(スーパー大辞林3.0)
対象とは、はたらきかけの目標や目的とするもの。めあて。(スーパー大辞林3.0)
性質とは、①その人に生まれつき備わっている気質。②他のもとと区別しうる、そのもの本来のありかた。(スーパー大辞林3.0)

1,「網棚」の性質による可能を表していますが、「網棚」は動作の目的地であり、動作対象は荷物です。
動作→置く
動作の対象→荷物

2,「この店の席」の可能を表していますが、「この店の席」は動作対象ではありません。
動作→吸う
動作の対象→タバコ

3,「この本」の性質による可能を表しており、「この本」は動作対象です。
動作→読む 
動作の対象→この本

4,泳ぐは自動詞なので動作対象がありません。
動作→泳ぐ
動作の対象→なし

以上より、3が正解であると思料します。

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