平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題3Bの解説【アスペクトに関わる諸形式】

H29試験Ⅰ
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H29(2017年度)日本語教育能力検定試験 試験Ⅰの問題3Bは【アスペクトに関わる諸形式】です。

アスペクトですよみなさん!

日本語教育能力検定試験の勉強をしていたらよく出てくるアスペクト

意味が、わかっているような…わかっていないような…漠然としたアスペクト

これを機会にきっちり理解しておきましょう。

アスペクトは日本語教育能力検定試験の最重要単語の1つです。

アスペクトの基礎について詳しくはこちら

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  1. アスペクトとは何か
  2. (6)テイル形の特徴とは?
    1. 出題意図
      1. 「テイル形」の用法の問題
      2. 「テイル形」の用法の答え
    2. 選択肢1 自他の対立がある。
      1. 対立とは?
      2. 自他とは?
      3. 「テイル形」と自他
    3. 選択肢2 有生・無生の対立がある。
    4. 選択肢3 完了を表すことがある。
    5. 選択肢4 所有を表すことがある。
  3. (7)「ばかり」のアスペクトを表す用法の例
    1. 選択肢1「まばゆいばかりに」
    2. 選択肢2「返事をするばかりで」
    3. 選択肢3「余計なことを言ったばかりに」
    4. 選択肢4「起きたばかり」
  4. (8)「終結」の例として最も適当なもの
    1. 選択肢1「給油しておこう」
    2. 選択肢2「フルマラソンを走りきった」
    3. 選択肢3「観光客が入ってくる」
    4. 選択肢4「渋滞も解消しつつある」
  5. (9)動き動詞(非状態動詞)の性質とは?
    1. 問題の解き方
    2. 選択肢1
      1. 「知覚動詞」とは?
      2. 「心理動詞」とは?
    3. 選択肢2
      1. 「動作動詞」とは?
      2. 「変化動詞」とは?
    4. 選択肢3
      1. 「2項動詞」とは?
      2. 「3項動詞」とは?
    5. 選択肢4
      1. 「複合動詞」とは?
      2. 「語彙的複合動詞」とは?
      3. 「統語的複合動詞」とは?
  6. (10)副詞が述語のアスペクトの解釈を変更している例
    1. 選択肢1 こなごなに花瓶が割れている。
    2. 選択肢2 ゆっくり幕が下りている。
    3. 選択肢3 次々と当選が確定している。
    4. 選択肢4 毎日牛乳を飲んでいる。
  7. YouTubeで過去問徹底解説動画

アスペクトとは何か

平成29年度日本語教育能力検定試験が考えるアスペクトとは何か。

問題文の中に書かれていますので、問題文の文章をしっかり読んで理解しましょう。

1段落目の最後です。

アスペクトとは、「出来事の直前・開始>,<継続・進展>,<直後・終結>などの具体的な局面」

簡単に言えば

出来事のどの段階を切り取るか。

それがアスペクトです。

今から始まるのか

今しているのか

今終わったのか

これらを表現するのがアスペクトです。

それでは各問題を見ていきましょう。

アスペクトの基礎について詳しくはこちら

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(6)テイル形の特徴とは?

出題意図

「テイル形」は色々な使い方があり、簡単そうに見えて実は奥が深いです。

「テイル形」の用法の問題

例)下の2つの文の「テイル形」の意味を考えてみてください。

①私は今、アメリカに留学しています

②私は3年前に、アメリカに留学しています

①と②は意味が違いますね。

どうですか?

「テイル形」ってすごい!

と思いませんか?

「テイル形」って実は、いろいろなことができるすごい奴なんだよ。

これを伝えたくて出題者は本問を作ったのでしょう。

「テイル形」のすごさをもっと知りたい方は

初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』p54~

中上級を教える人のための日本語文法ハンドブック』p82~

を見てください。

インターネットで見られる無料の論文もあります。

庵功雄(いおりいさお)日本語教育文法から見た「テイル」 

日本語教育文法から見た「ている」と「ていた」

「テイル形」の用法の答え

①私は今、アメリカに留学しています

⇒「テイル」は継続を表しています。

②私は3年前に、アメリカに留学しています

⇒「テイル」は経験を表しています。

では、各選択肢を読みながら「テイル形」の特徴を学びましょう。

選択肢1 自他の対立がある。

対立とは?

「対立」とは?

何だかよくわかりません。

が!

「対立」という用語は日本語教育能力検定試験ではよく使われますので理解しておいてください。

対立とは、同じ部分と違う部分があること

問題1(1)では【音声的対立】が出てきましたね。

え、そうだっけ?

という方は下の記事をご覧ください。

ですから

「○○の対立」

ときたら、

同じタイプだけど、○○が違うものがある」

と言い換えてください。

そうすれば簡単です。

「自他の対立」⇒「同じタイプだけど、自他が違うものがある」

でも…「自他」とは?

自他とは?

自他とは、自動詞と他動詞のことです。

自動詞とは、結果や事物そのものに注目した動詞

例)ドアが閉まります⇒ドアに注目

他動詞とは、行為に注目した動詞

例)ドアを閉めます⇒「閉める」という行為に注目

「テイル形」と自他

「テイル形」を自他で分けられるでしょうか。

「open(オープン)」の意味を表す動詞であれば…

自動詞…ドアが開いています

他動詞…ドアを開けています

オープンという意味は同じ(同じタイプ)

でも、自他が違います

よって、自他の対立があるといえます。

ですが

「ご飯を食べています」は他動詞のみ

「雨が降っています」は自動詞のみ

このように

「自他の対立」があるかどうかは、動詞によって違います。

選択肢2 有生・無生の対立がある。

有生とは、生が有ること

例)人間、猫

無生とは、生が無いこと

例)パソコン、本棚

有生・無生の対立といえば、存在を表す動詞です。

存在を表す動詞には、有生・無生の対立があります

有生は「いる」

有生の例)あそこに人がいます

無生は「ある」

無生の例)あそこに本棚があります

ですが、「倒れています」は?

有生の例)人が倒れています

無生の例)本棚が倒れています

同じです。

違いがないので対立はありません。

有生・無生の対立があるかどうかは動詞によります。

選択肢3 完了を表すことがある。

実は、「テイル形」がどの時点を表すのかは動詞によって違います。

例えば

1)「食べる」は

「食べる」→「食べている」→「食べた」

ですが、

2)「落ちる」は

「落ちる」→「落ちた」→「落ちている」

になります。

①の種類の動詞(動作動詞)の「テイル形」は、継続を表しますが、

②の種類の動詞(変化動詞)の「テイル形」は、結果の状態(完了)を表します。

選択肢4 所有を表すことがある。

私はこの選択肢を見た時

「持っている」

が頭に浮かびました。

「持っている」は所有を表す!

だから選択肢4が答えだ!

というひっかけ問題です。

いやらしいですね。

よく考えてみると、

「持っている」が所有を表すのは「持つ」という動詞だからです。

現に、大辞林で「持つ」を調べると「所有する」という意味が出てきます。

逆に、他の動詞を「テイル形」にしても、所有を表すことはできません。

例えば、

「道端に財布が落ちている

で財布の所有を表してしまうのは泥棒さんだけです。

「落ちているものは私のもの」

よって、答えは3

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(7)「ばかり」のアスペクトを表す用法の例

用法の例を聞かれたときは意味を考えましょう。

意味を考えるときは、他の言葉で言い換えるとわかりやすいです。

では、選択肢を見ていきます。

選択肢1「まばゆいばかりに」

これは強調ですね。星の輝きを強調しています。

選択肢2「返事をするばかりで」

これは限定ですね。「だけ」で言い換えられます。返事をするだけで他には何もしないということ。

選択肢3「余計なことを言ったばかりに」

これは原因ですね。「ために」で言い換えられます。

選択肢4「起きたばかり」

犯人はこいつです!

直後を表す「たばかり」です。「起きた直後」とか「起きてすぐ」で言い換えられます。

よって、答えは4です。

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(8)「終結」の例として最も適当なもの

「終結」の意味があるかどうか各選択肢を検討します。

選択肢1「給油しておこう」

「~ておく」は準備です。

「ある目的のために前もって~すること」を意味します。

例)明日はデートなのでATMでお金をおろしておこう。

「~ておく」は、アスペクト表現ではありません初級を教える人のための日本語文法ハンドブックp70)。

選択肢2「フルマラソンを走りきった」

「~きる」は終結を意味するアスペクト表現です(中上級を教える人のための日本語文法ハンドブックp95)。

例)10分で次郎ラーメンを食べきった。

選択肢3「観光客が入ってくる」

「~てくる」は離れているものが自分に近づいてくることを意味する表現です。

アスペクトは時間を表す表現です。

「観光客が入ってくる」という使い方はアスペクト表現ではありません。

遠い→近い

という空間の移動を表しています。

例)見知らぬ猫が部屋に入ってきた。

選択肢4「渋滞も解消しつつある」

「~つつある」は進展を意味するアスペクト表現です。

例)公園に野良猫が集まりつつある。

よって、答えは2です。

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(9)動き動詞(非状態動詞)の性質とは?

問題の解き方

穴埋め問題は前後の文をよく読んでヒントを探します。

「(ア)といった動き動詞(非状態動詞)の性質をベースに…」

という文から

(ア)=動き動詞(非状態動詞)

ということがわかります。

というわけで各選択肢を見て、

動き動詞を探しましょう

選択肢1

「知覚動詞」とは?

知覚動詞とは、「見る」「聞く」「嗅ぐ」など感覚器官に関する動詞のこと。

「心理動詞」とは?

心理動詞とは、「喜ぶ」「悲しむ」など感情や心の動きに関する動詞のこと。

動き動詞を「知覚動詞」と「心理動詞」にわける意味は分かりません。

「食べる」など「動き動詞」だけど「知覚動詞」でも「心理動詞」でもないものはどうなるのか…。

選択肢2

「動作動詞」とは?

動作動詞とは、「読む」「書く」「見る」「食べる」など、しようと思ってする動詞のこと。主体がどのような動作をするか(意志性あり)。

「動作動詞」の「テイル形」は、動作の継続を表します。

例)ご飯を食べている猫はとてもかわいい。

「変化動詞」とは?

変化動詞とは、「太る」「痩せる」「(電気が)つく」「(電気が)きえる」「死ぬ」など、変化を表す動詞のこと。主体がどのように変化をするか(意志性なし)。

「変化動詞」の「テイル形」は、変化の結果(完了)を表します。

例)お前はもう死んでいる。

「動作動詞」と「変化動詞」は、「動き動詞」をさらに分類したものです。

選択肢3

「2項動詞」とは?

2項動詞とは、助詞が2つ必要な動詞

例えば

「食べました」

と言われても

「え、だれ? なに?」

と聞きたくなりますね。

つまり「食べました」に「だれ」と「なに」の2つが必要です。

よって、「食べる」は2項動詞です。

「3項動詞」とは?

3項動詞とは、助詞が3つ必要な動詞。「あげる」「もらう」「渡す」「貸す」「借りる」「習う」「教える」「紹介する」など。

例)私マドンナチョコもらいました。

  マドンナみんなチョコあげていました。

2項動詞、3項動詞と動き動詞(非状態動詞)は関係ないです。よってこの選択肢は違います。

選択肢4

「複合動詞」とは?

2つ以上の語がくっつきあってできた動詞が複合動詞です。

「語彙的複合動詞」とは?

複合動詞には「語彙的複合動詞」と「統語的複合動詞」があります。

語彙的複合動詞とは、「歩き回る」→「歩いて回る」のように、後ろの動詞にも元々の意味がのこっているもの。

「統語的複合動詞」とは?

統語的複合動詞とは、「飲み切る」→「飲んで切る?」×→「全部、飲む」のように、後ろの動詞の元々の意味がなくなっている(うすれている)もの。

複合動詞の話と動き動詞(非状態動詞)の話は関係ないです。よってこの選択肢も違います。

以上より、答えは2です。

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(10)副詞が述語のアスペクトの解釈を変更している例

ある副詞がつくと、アスペクトの意味が変わる!

おもしろいですねー。

各選択肢を見ていきましょう。

選択肢1 こなごなに花瓶が割れている。

「花瓶が割れている」⇒「割れる」という結果の状態

こなごなに花瓶が割れている」⇒「割れる」という結果の状態

「こなごなに」という副詞がついても結果の状態を表すというアスペクトの解釈は変わりません。「こなごなに」はどのように割れているかを表しているだけです。

選択肢2 ゆっくり幕が下りている。

「幕が下りている」⇒「幕が下りる」という結果の状態

「ゆっくり幕が下りている」⇒「幕が下りる」という出来事の進展

アスペクトの解釈が変わっています。

選択肢3 次々と当選が確定している。

「当選が確定している」⇒「当選が確定する」という結果の状態

「次々と当選が確定している」⇒「当選が確定する」という出来事の進展

「次々と」という副詞がついて「次々と確定している」になると、選挙速報を見ているような気持ちになります。

アスペクトの解釈が変わっています。

選択肢4 毎日牛乳を飲んでいる。

「牛乳を飲んでいる」⇒「牛乳を飲む」という行為の継続

「毎日牛乳を飲んでいる」⇒「牛乳を飲む」という行為の習慣

「いま何してんの?」「牛乳飲んでいる」

動作の継続を表しています。

ところが「毎日」がつくと

「最近、何してるの?」「毎日牛乳飲んでいる」

動作の継続ではなく習慣の話になります。

アスペクトの解釈が変わっています。

以上より、答えは1

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YouTubeで過去問徹底解説動画

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