現代日本語文法は日本語の文法を網羅した本としては最高の本です。
そのぶん難しいです。
そこでこのブログでわかりやすく解説しました。
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本日の問題
【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを1つ選べ。
(4)【前項と後項の関係】
1 濃霧発生
2 天体観測
3 食物摂取
4 温度調節
5 部品交換
第3章 活用 第1節【活用の概観】
p121~
活用とは、文法的意味を表すために語形が変化すること。語幹に語尾をつける。p86も参照
2.終止法と接続法
活用形には、終止法として使われるものと接続法として使われるものがある(以下はp87の解説とほぼ同じ)。
動詞の終止法は、断定形・命令形・意思形がある。 「聞く・聞け・聞こう」
・断定形:CDを聞く(非過去形)。CDを聞いた(過去形)。
・命令形:CDを聞け。
・意思形:CDを聞こう。
名詞と形容詞の終止法は、断定形のみ。「かわいい」「きれいだ」「猫だ」
・イ形容詞の断定形:猫はかわいい。
・ナ形容詞の断定形:猫はきれいだ。
・名詞の断定形:私は猫だ。
接続法は、連体形・中止形・条件形がある。
・動詞の連体形:聞くCD(非過去形)、聞いたCD(過去形)
・イ形容詞の連体形:かわいい猫(非過去形)、かわいかった猫(過去形)
・ナ形容詞の連体形:きれいな猫(非過去形)、きれいだった猫(過去形)
・動詞の中止形:聞き(連用形)、聞いて(テ形)
・イ形容詞の中止形:かわいく(連用形)、かわいくて(て形)
・ナ形容詞の中止形:きれいに(連用形)、きれいで(テ形)
・動詞の条件形:聞けば(バ形)、聞いたら(タラ形)
・イ形容詞の条件形:かわいければ(バ形)、かわいかったら(タラ形)
・ナ形容詞の条件形:きれいであれば(バ形)、きれいだったら(タラ形)
3.普通体と丁寧体
p123~
普通体と丁寧体の違いをp124の一覧で確認
4.肯定形と否定形
肯定形と否定形の違いをp124の一覧で確認
第3章 活用 第2節【動詞の活用】
p125~
動詞の活用の種類については下記記事参照
3.不規則に活用する動詞
3.1 「する」
p126
1)「勉強する」型
「する」の基本
「〜をする」に言い換えられる。
・勉強する、掃除する、スキーする
2)「愛する」型
「愛する」型は一部の活用形がⅠ型動詞と同じ
「する」の活用)しない、します、する、すれば、しよう
shinai/shimasu/suru/sureba/siyoo
Ⅰ型動詞の「書く」の活用)書かない、書きます、書く、書けば、書こう
kakanai/kakimasu/kaku/kakeba/kakoo
「愛する」の活用)愛さない、愛します、愛する、愛せば、愛そう
aisanai/aisimasu/aisuru/aiseba/aisoo
「愛する」が「する」と全て同じ活用なら)愛しない、愛します、愛する、愛すれば、愛しよう
3)「信ずる」型
「信ずる」型は一部の活用形がⅡ型動詞と同じ
「する」の活用)しない、します、する、すれば、しよう
shinai/shimasu/suru/sureba/siyoo
Ⅱ型動詞の「信じる」活用)信じない、信じます、信じる、信じれば、信じろ
shinjinai/shinjimasu/shinjiru/shinjireba/shinjiro
「信ずる」の活用)信じない、信じます、信ずる、信じれば、信じろ
shinjinai/shinjimasu/shinzuru/shinjireba/sinjiro
第3章 活用 第3節【形容詞の活用】
p127
イ形容詞とナ形容詞の違いについては下記記事参照
第3章 活用 第4節【名詞が述語になる場合の活用】
p127
名詞は、助動詞「だ」を伴って述語になることができる。
・あれは猫だ。
第4章 語形成 第1節【単純語と合成語】
1.単純語・合成語とは
p133~
単純語とは、1つの形態素でできた語
単純語の例)子、猫
合成語とは、2つ以上の形態素からできた語
合成語の例)子猫、猫ちゃん
複合語とは、複数の自由形態素でできた合成語
複合語の例)子猫
派生語とは、自由形態素と接辞からできた合成語
派生語の例)猫ちゃん
単純語・合成語が出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(6)【派生語の語構成】
★疑問 p135「国会議事堂」が複合語になる理由がわかりません。
単独で使える語+単独で使える語=複合語
単独で使える語+単独で使えない語=派生語
①議事+堂=議事堂
・議事が進行する○
「議事」は単独で使えるので自由形態素
・堂がある×
「堂」は単独で使えないので拘束形態素(接辞)
自由形態素+接辞=派生語
よって「議事堂」は、派生語
②国+会=国会
・国がある○
「国」は単独で使えるので自由形態素
・会がある○
「会」は単独で使えるので自由形態素
自由形態素+自由形態素=複合語
よって「国会」は、複合語
③国会+議事堂=国会議事堂
「国会」も「議事堂」も単独で使える。
単独で使える語+単独で使える語=複合語
よって「国会議事堂」は、複合語
逆から考えてみた方がわかりやすいかもしれません。
1.「国会議事堂」を2つにわける
→「国会」と「議事堂」
・国会がある○
・議事堂がある○
どちらも単独で使えるので「国会議事堂」は複合語
2.「手打ちうどん屋」を2つにわける。
→「手打ちうどん」と「屋」
・手打ちうどんがある○
・屋がある×
「手打ちうどん」は単独で使えるけれど、「屋」は単独で使えないので「手打ちうどん屋」は派生語
2.転成
p135~
転成とは、ある語を別の品詞に変化させる事で新しい語を作ること。
複合による転成の例)ゆっくり(副詞)+「する」=ゆっくりする(動詞)
派生による転成の例)かわいい(イ形容詞)+「さ」=かわいさ(名詞)
語形の1つが別の品詞になる例)動詞「歩く」の連用形「歩き」を名詞化
品詞を変える接辞については平成23年度日本語教育能力検定試験1問題3C【接辞】の問題文で説明されているので持っている人は読んでおいてください。
転成についてはp144~でも詳しく
第4章 語形成 第2節【複合】
1.複合とは
p136~
複合とは、複数の語を組み合わせて語を作ること
複合語の品詞は後部要素で決まることが多い。
2.複合名詞
p137~
2.1[名詞+名詞]型
非常に多い。前項と後項の関係も多様。
前項と後項の関係は試験に出やすいので超チェック!
・主体 政権が交代する→政権交代
・対象 天体を観測する→天体観測
・道具 テレビで会議する→テレビ会議
・材料 砂糖でできた菓子→砂糖菓子
・時間 夜の空→夜空
・場所 屋外のプール→屋外プール
・様態 うしろのような雲→うろこ雲
前項と後項の関係が出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・平成26年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(11)【前項と後項の関係】
2.2[動詞+名詞]型
非常に多い。前項と後項の関係も多様。ガ格、ヲ格、デ格などさまざま格関係になる。
・ガ格(主体) 星が流れます→流れ星
・ヲ格(対象) 薬を飲みます→飲み薬
・デ格(道具) 針で縫います→縫い針
2.3[形容詞+名詞]型
[形容詞+名詞]型の複合名詞は、前項が後項を修飾する関係
・イ形容詞 荒い馬→荒馬
・ナ形容詞 完全な犯罪→完全犯罪
2.4[副詞+名詞]型
・にこにこ顔、ガラガラ声、でこぼこ道
2.5[動詞+動詞]型
マス形のマスが落ちた形(連用形)
・立ちます+泳ぎます→立ち泳ぎ
・飲みます+食います→飲み食い
・勝ちます+負けます→勝ち負け
2.6[名詞+動詞]型
非常に多い。ヲ格、デ格、二格などさまざま格関係になる。
・ヲ格 川を下ります→川下り
・デ格 手で作ります→手作り
・ニ格 盆に踊ります→盆踊り
[名詞+動詞]型が出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・平成26年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(11)【前項と後項の関係】
2.7[形容詞+動詞]型
[形容詞+動詞]型の複合名詞は、前項が後項を修飾する関係
・早く起きます→早起き
・荒く削ります→荒削り
2.8[副詞+動詞]型
[副詞+動詞]型の複合名詞は、前項が後項を修飾する関係
・くすくすと笑います→くすくす笑い
・ざあざあと振ります→ざあざあ振り
・ポイッと捨てます→ポイ捨て
3.複合動詞
p139~
3.1[動詞+動詞]型
非常に多い。語彙的な複合動詞と文法的な複合動詞がある。
語彙的複合動詞とは、前の語の種類が少ない複合動詞
語彙的複合動詞=A+B(AとBは固定)
・立ち止まる
他の「〜止まる」を考えてみる。
食べ止まる、飲み止まる、座り止まる、書き止まる
どれもおかしいので「立ち止まる」は語彙的複合動詞
文法的複合動詞とは、前の語の種類が多い複合動詞。
文法的複合動詞=X+B(Xには色々なものが入る)
・歩きはじめる
他の「〜はじめる」を考えてみる。
食べはじめる、飲み始める、座りはじめる、書きはじめる
前の語の種類が多いので「歩きはじめる」は文法的複合動詞
★過去問にチャレンジ!
【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを一つ選べ。
【複合動詞の意味】
1 飲み切る
2 使い切る
3 噛み切る
4 出し切る
5 走り切る
平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(7)【複合動詞の意味】より
答えは次の行から
【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを一つ選べ。
【複合動詞の意味】
1 飲み切る→最後まで飲む
「一続きなものを刃物などで分離する」という「切る」の語彙的な意味が薄れている。
「〜切る」で前の動きを最後までしたことを表している文法的な複合動詞
2 使い切る→最後まで使う
「切る」の語彙的な意味が薄れているので文法的な複合動詞
3 噛み切る→噛んで切る
「一続きなものを刃物などで分離する」という「切る」の語彙的な意味が残っているので語彙的な複合動詞
4 出し切る→最後まで出す
「切る」の語彙的な意味が薄れているので文法的な複合動詞
5 走り切る→最後まで走る
「切る」の語彙的な意味が薄れているので文法的な複合動詞
よって、答えは3
平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(7)【複合動詞の意味】より
3.2[名詞+動詞]型
さまざま格関係になる。
ガ格 波が立つ→波立つ
ヲ格 習慣をつける→習慣づける
デ格 むちで打つ→むち打つ
3.3[形容詞+動詞]型
形容詞の語幹+動詞
・暑い+すぎる→暑すぎる
・近い+つく→近づく
3.4[副詞+動詞]型
・にこにこする
・はらはらする
複合動詞が出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(7)【複合動詞の意味】
4.複合形容詞
p140~
4.1[形容詞+形容詞]型
形容詞の語幹+形容詞
・細い+長い→細長い
・甘い+酸っぱい→甘酸っぱい
4.2[名詞+形容詞]型
後項がイ形容詞の例)
・気+せわしい→気ぜわしい
・名+高い→名高い
後項がナ形容詞の例)
・気+楽な→気楽な
・身+きれいな→身ぎれいな
4.3[動詞+形容詞]型
「〜やすい」「〜にくい」「〜がたい」などに限られる。
・歩きます+やすい→歩きやすい
・食べます+にくい→食べにくい
第4章 語形成 第3節【派生】
p141~
1.派生とは
派生とは、自由形態素と接辞で新しい語を作ること。新しくできた語を派生語という。
2.接頭辞による派生語
接頭辞は品詞に影響を与えないものがほとんど。
ただし、「無(ぶ/む)+名詞」「未+名詞」はナ形容詞に変わることも。
・無(ぶ)+作法(名詞)=無作法な(ナ形容詞)
・無(む)+関心(名詞)=無関心な(ナ形容詞)
・未(み)+成熟(名詞)=未成熟な(ナ形容詞)
※名詞とナ形容詞の違いがわからない方はこちら
3.接尾辞による派生語
3.1 語彙的な接尾辞による派生語
人を表す接尾辞による派生語の例
・漫画家、検察官、鑑定士、構成員、日本人、発表者
金銭を表す接尾辞による派生語の例
・サービス料、交通費、電車代、家賃
待遇的な意味を表す接尾辞による派生語の例
・お客様、山田さん、森くん
複数を表す接尾辞による派生語の例
・あなたたち、彼ら
数え方を表す接尾辞による派生語の例
・1つ、2個、3枚、4皿
空間・時間に関わる接尾辞による派生語の例
・電車内、会場外
3.2 文法的な接尾辞による派生語
派生名詞を作る接尾辞の例
イ形容詞+「さ」→名詞
・高い+「さ」→高さ
ナ形容詞+「さ」→名詞
・便利な+「さ」→便利さ
イ形容詞+「み」→名詞
・高い+「み」→高み
派生動詞を作る接尾辞の例
イ形容詞+「がる」→動詞
・おもしろい+「がる」→おもしろがる
名詞+「ぶる」→動詞
・大人+「ぶる」→大人ぶる
名詞+「めく」→動詞
・春+「めく」→春めく
名詞+「じみる」→動詞
・年寄り+「じみる」→年寄りじみる
イ形容詞+「まる」→動詞
・広い+「まる」→広まる
派生形容詞を作る接尾辞の例
名詞+「らしい」→イ形容詞
・政治家+「らしい」→政治家らしい
名詞+「的」→ナ形容詞
・日本人+「的」→日本人的
イ形容詞+「げ」→ナ形容詞
・はかない+「げ」→はかなげ
ヴォイスに関わる接尾辞の例
・言うー言われる(受身)
・言うー言わせる(使役)
・言うー言える(可能)
ヴォイスについて詳しくは現代日本語文法②p207~
否定、丁寧さ、願望に関わる接尾辞の例
・言うー言わない(否定)
・言うー言います(丁寧さ)
・言う→言いたい(願望)
第4章 語形成 第4節【転成】
p144~
1.転成とは
転成とは、ある語が別の品詞に変化することで新しい語を生み出すこと
1.1 複合による転成
・スキー(名詞)+する(動詞)→スキーする(動詞)
1.2派生による転成
名詞へ
・暑い(イ形容詞)+「さ」→暑さ(名詞)
動詞へ
・おもしろい(イ形容詞)+「がる」→おもしろがる(動詞)
形容詞へ
・子ども(名詞)+「らしい」→子どもらしい(イ形容詞)
・化学(名詞)+「的」→化学的な(ナ形容詞)
1.3 もとの品詞の語形の1つをそのまま用いる転成
動詞のマス形(連用形)のマスをカットすると名詞になる。
・遊びます→遊び(名詞)
・待ちます→待ち(名詞)
特定のイ形容詞の連用形が名詞になる。
・近い→近くする(イ形容詞の連用形)
近くで事故があった。(名詞)
・遠い→遠くする(イ形容詞の連用形)
遠くで猫の鳴き声が聞こえた。(名詞)
・多い→多くする(イ形容詞の連用形)
猫の多くが逃げました。
転成が出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・令和元年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(6)【転成名詞の意味】
・平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(3)【接辞の付加に伴う品詞変化】
本日の問題の答え
【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを1つ選べ。
(4)【前項と後項の関係】
1 濃霧発生
2 天体観測
3 食物摂取
4 温度調節
5 部品交換
p137参照
1 濃霧が発生する 前項は後項の主体
2 天体を観測する 前項は後項の対象
3 食物を摂取する 前項は後項の対象
4 温度を調節する 前項は後項の対象
5 部品を交換する 前項は後項の対象
よって、答えは1
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