現代日本語文法②第3部 格と構文 第1章【格と構文の概観】第2章【さまざまな格】を分かりやすく解説

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  1. ハマが解説した講義動画はこちらから見ることができます。
  2. 本日の問題
  3. 第1章 格と構文の概観 第1節【格】
    1. 1.格とは
    2. 2.格助詞の用法
    3. 3.格助詞の性質
      1. 3.1 格助詞と用法の対応
      2. 3.2 文法格と意味格
          1. [ヴォイスにおける格助詞の変更の可能性]
          2. [「は」や「の」の付加]
    4. 4.複合格助詞
        1. ★過去問にチャレンジ!
        2. ★問題 「で」と「をもって」の違いは?
  4. 第1章 格と構文の概観 第2節【文型】
    1. 1.文型とは
    2. 2.動詞の文型
        1. ★過去問にチャレンジ!
    3. 3.形容詞の文型
  5. 第1章 格と構文の概観 第3節【自動詞・他動詞】
        1. ★疑問 p22「補語として働きかけられる対象をとる」とは?
        2. ★疑問 p23「自動詞と他動詞の中で、形態的な対応関係をもつ」とは?
    1. 1.自動詞・他動詞とは
      1. 1.1 他動詞
      2. 1.2 自動詞
    2. 2.有対自動詞と有対他動詞
      1. 2.3 自他同形の動詞
      2. 2.4 形態的な対応がなく自他の意味的対応をもつ動詞
        1. ★疑問 p28「形態的な対応がない」とは?
  6. 第2章 さまざまな格 第1節【主体を表す格】
    1. 1.主体とは
    2. 2.「が」
      1. 2.1 動きの主体「が」
          1. [意思動作の主体]が
          2. [受身的動作の主体]が
          3. [自然現象の主体]が
          4. [変化の主体]が
          5. [心的活動の主体]が
      2. 2.2 状態の主体「が」
          1. [存在の主体]が
          2. [能力の主体]が
          3. [心的状態の主体]が
          4. [性質の主体]が
          5. [関係の主体]が
      3. 2.3 同定関係の主体「が」
    3. 3.「に」
      1. 3.1 所有の主体「に」
      2. 3.2 能力の主体「に」
      3. 3.3 心的状態の主体「に」
    4. 4.「で」
      1. 事態に対処する組織としてとらえられた主体「で」
      2. 場所・方向としてとらえられた主体「で」
    5. 5.「から」
      1. 提供・伝達行為の主体「から」
    6. 6.「の」
  7. 第2章 さまざまな格 第2節【対象を表す格】
    1. 1.対象とは
    2. 2.「を」
      1. 2.1 変化の対象「を」
          1. [形状変化の対象]を
          2. [位置変化の対象]を
          3. [状況変化の対象]を
          4. [産出の対象]を
      2. 2.2 動作の対象「を」
          1. [働きかけの対象]を
          2. [言語活動の対象]を
      3. 2.3 心的活動の対象「を」
    3. 3.「が」
      1. 3.1 心的状態の対象「が」
      2. 3.2 能力の対象「が」
      3. 3.3 所有の対象「が」
    4. 4.「に」
      1. 4.1 動作の対象「に」
      2. 4.2 心的活動の対象「に」
    5. 5.対象を表す複合格助詞
      1. 5.1「に対して」
      2. 5.2「について」
  8. 第2章 さまざまな格 第3節【相手を表す格】
    1. 1.相手とは
    2. 2.「に」
      1. 2.1 動作の相手「に」
      2. 2.2 授与の相手「に」
      3. 2.3 受身的動作の相手「に」
      4. 2.4 基準としての相手「に」
    3. 3.「と」
      1. 3.1 共同動作の相手「と」
      2. 3.2 相互動作の相手「と」
      3. 3.3 基準としての相手「と」
    4. 4.「に」と「と」の比較
          1. 双方向の「と」
          2. 一方から他方の「に」
    5. 5.相手を表す複合格助詞
      1. 5.1「といっしょに」「とともに」
  9. 第2章 さまざまな格 第4節【場所を表す格】
    1. 1.場所とは
    2. 2.「に」
      1. 2.1 存在の場所「に」
      2. 2.2 出現の場所「に」
    3. 3.「で」
    4. 4.「に」と「で」の比較
    5. 5.場所を表す複合格助詞
      1. 5.1「において」
      2. 5.2「にて」
  10. 第2章 さまざまな格 第5節【着点を表す格】
    1. 1.着点とは
    2. 2.「に」
      1. 2.1 移動の着点
          1. [到達点]に
          2. [接触点]に
      2. 2.2 変化の結果「に」
    3. 3.「と」
    4. 4.「へ」
    5. 5.「へと」
    6. 6.「まで」
    7. 7.「に」「へ」「まで」の比較
      1. 7.1 「に」と「へ」
      2. 7.2「に」「へ」と「まで」
  11. 第2章 さまざまな格 第6節【起点を表す格】
    1. 1.起点とは
    2. 2.「から」
      1. 2.1 移動の起点「から」
      2. 2.2 方向の起点「から」
      3. 2.3 範囲の始点「から」
      4. 2.4 変化前の状態「から」
    3. 3.「より」
    4. 4.「を」
    5. 5.「から」と「を」の比較
  12. 第2章 さまざまな格 第7節【経過域を表す格】
    1. 1.経過域とは
    2. 2.「を」
      1. 2.1 空間的な経過域「を」
      2. 2.2 時間的な経過域「を」
    3. 3.「から」
    4. 4.経過域を表す複合格助詞
      1. 4.1「を通じて」「を通して」「を介して」
  13. 第2章 さまざまな格 第8節【手段を表す格】
    1. 1.手段とは
    2. 2.「で」
      1. 2.1 道具「で」
      2. 2.2 方法「で」
      3. 2.3 材料 「で」
      4. 2.4 構成要素「で」
      5. 2.5 内容物「で」
      6. 2.6 付着物「で」
    3. 3.「から」
    4. 4.「に」
      1. 4.1 内容物「に」
      2. 4.2 付着物「に」
    5. 5.手段を表す複合格助詞
      1. 5.1「によって」「でもって」
      2. 5.2「をもって」
  14. 第2章 さまざまな格 第9節【起因・根拠を表す格】
    1. 1.起因・根拠とは
    2. 2.「で」
      1. 2.1 変化の原因「で」
      2. 2.2 行動の理由「で」
      3. 2.3 感情・感覚の起因「で」
      4. 2.4 判断の根拠「で」
    3. 3.「に」
      1. 3.1 感情・感覚の起因「に」
      2. 3.2 継続的状態の起因「に」
    4. 4.「から」
      1. 4.1 出来事の原因「から」
      2. 4.2 判断の根拠「から」
    5. 5.起因・根拠を表す複合格助詞
      1. 5.1「によって」
      2. 5.2「のために」「のおかげで」「のせいで」「につき」
      3. 5.3「とあって」「だけあって」「だけに」
      4. 5.4「からして」
  15. 第2章 さまざまな格 第10節【時を表す格】
    1. 1.時とは
    2. 2.無助詞(Φ)
    3. 3.「に」
    4. 4.無助詞と「に」の比較
      1. 4.1 無助詞と「に」の基本的な使い分け
      2. 4.2 無助詞でも「に」でも自然な場合
      3. 4.3「は」「も」がつく場合の意味の違い
  16. 第2章 さまざまな格 第11節【その他の格】
    1. 1.限界
      1. 1.1 限界とは
      2. 1.2「で」
      3. 1.3 限界を表す複合格助詞
          1. 「にて」
          2. 「でもって」
          3. 「をもって」
          4. 「にかけて」
    2. 2.領域
      1. 2.1 領域とは
      2. 2.2「で」
      3. 2.3「に」
      4. 2.4 領域を表す複合格助詞
          1. 「において」
          2. 「にとって」
    3. 3.目的
      1. 3.1 目的とは
      2. 3.2「で」
      3. 3.3「に」
      4. 3.4 目的を表す複合格助詞
          1. 「のために」
    4. 4.様態
      1. 4.1 様態とは
      2. 4.2「で」
      3. 4.3 様態を表す複合格助詞
          1. 「でもって」
          2. 「なしで」「なしに」
    5. 5.役割
      1. 5.1 役割とは
      2. 5.2「に」
      3. 5.3 役割を表す複合格助詞「として」
    6. 6.割合
      1. 6.1 割合とは
      2. 6.2「に」
      3. 6.3 割合を表す複合格助詞
          1. 「につき」(「について」)
          2. 「に対して」
    7. 7.対応・不対応
      1. 7.1 対応・不対応とは
      2. 7.2 対応を表す複合格助詞「によって」
      3. 7.3 不対応を表す複合格助詞「によらず」「にかかわらず」「を問わず」
    8. 8.内容
      1. 8.1 内容とは
      2. 8.2「と」
    9. 9.格の意味と格助詞・複合格助詞
  17. 本日の問題の答え

ハマが解説した講義動画はこちらから見ることができます。

【文法を極める会5】現代日本語文法②第3部 格と構文 第1章【格と構文の概観】第2章【さまざまな格】 by 日本語教師のハマゼミコミュニティ
【文法を極める会】では①日本語教育能力検定試験合格や②日本語を教える時に役立つ文法を勉強しています。ここでは【文法を極める会】の動画を500円で購入してダウンロードすることができます。今回は現代日本語文法05第3部 格と構文 第1章【格と構文の概観】第2章【さまざまな格】の解説です。本をお持ちでない方は下記UR...
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本日の問題

【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを1つ選べ。

(5)【主体】

1 遊ぶ

2 読む

3 食べる

4 もらう

5 飛ぶ

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第1章 格と構文の概観 第1節【格】

p3~

1.格とは

とは、名詞と述語との関係を表す手段

猫がチーズを食べる。

ガ格は名詞「猫」と述語「食べる」との関係が主体であることを表す。

ヲ格は名詞「チーズ」と述語「食べる」との関係が対象であることを表す。

2.格助詞の用法

p5の一覧を確認

3.格助詞の性質

3.1 格助詞と用法の対応

原則:1つの名詞に格助詞1つ

例外①:「から」+「が」

・お花見は朝からがおすすめです。

例外②:「まで」+α

・今までで分からないところはありますか。

・明日までに返します。

・8時から16時までが営業時間です。

・東京駅から八王子までを歩いて移動した。

3.2 文法格と意味格

p7~

文法格とは、「主語」や「目的語」といった文法関係を表す性質が強い格。格、格、一部のニ格

・猫チーズ食べる。

意味格とは、「手段」「起点」「着点」といった意味関係を表す性質が強い格。格、カラ格、マデ

・猫が手チーズを食べる。

・猫が朝からまでチーズを食べる。

[ヴォイスにおける格助詞の変更の可能性]

文法格(「が」「を」)→格助詞の変更が起きることがある。

・猫チーズ食べた→チーズ食べられた

→猫

チーズ→チーズ

格助詞が変わっている!

意味格(「から」「で」)→格助詞の変更は起きにくい。

・弟がスプーンプリンを食べた→プリンが弟にスプーン食べられた

・外国から変な種を送ってきた→外国から変な種が送られてきた

スプーン→スプーン

外国から→外国から

格助詞が変わっていない!

[「は」や「の」の付加]

p9

文法格の「が」「を」→「は」「の」をつけるとき消える

・猫います→猫がはいます× 猫います○

・猫触ります→猫をは触ります× 猫触ります○

・猫がの食事×→猫食事

・日本語をの勉強×→日本語勉強

意味格の「で」「と」→「は」「の」をつけるとき消えない

・日本食べます→日本では食べます○

・猫遊びます→猫とは遊びます○

・日本での食事○

・猫との遊び○

4.複合格助詞

p11~

複合格助詞とは、数の語が体して、助詞のような働きをすること。格助詞によって表しきれない意味関係を表したりする。

複合格助詞の例①:格助詞+動詞のテ形

・に基づいて(基づく)、に即して(即する)、をもって(もつ)、について(つく)

複合格助詞の例②:格助詞+名詞+格助詞

・と一緒に

複合格助詞の例③:「の」+名詞+格助詞

・のために

★過去問にチャレンジ!

格助詞を複合格助詞に置き換える例として最も適当なものを、次の1〜4の中から一つ選べ。

1「に」を「に基づいて」

2「に」を「に即して」

3「で」を「にもって」

4「で」を「について」

平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題1問4より

答えは次の行から

格助詞を複合格助詞に置き換える例として最も適当なものを、次の1〜4の中から一つ選べ。

各選択肢の「複合格助詞」で作った文を各選択肢の「格助詞」に置き換えられるか検討

1「に基づいて」

に基づいて執行する→法執行する×

2「に即して」

現状に即して考える→現状考える×

3「をもって」

書面をもって通知します→書面通知します〇

4「について」

環境問題について話す→環境問題話す×

よって、答えは3

【格助詞】平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題1の解説
★問題 「で」と「をもって」の違いは?

格助詞:書面で通知します。

複合格助詞:書面をもって通知します。

違いは?

「で」も「をもって」も手段を表しているが、「をもって」のほうが、あらたまったニュアンスをもっており、かたい文体にふさわしい。

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第1章 格と構文の概観 第2節【文型】

p12~

1.文型とは

文型とは、その述語に必要な名詞が使う格の組み合わせのこと。

例)「食べる」

・猫チーズ食べる。

述語「食べる」に必要な名詞が使う格は、主体のガ格と対象のヲ格

「食べる」は[が、を]文型

「食べる」はガ格ヲ格の2つの格を使う名詞が必要なので2項動詞

2.動詞の文型

p13~

★過去問にチャレンジ!

【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを1つ選べ。

(9)【動詞の項の数】

1 ぶつかる

2 食べる

3 刃向かう

4 借りる

5 結婚する

平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(9)より

答えは次の行から

(9)【動詞の項の数】

1 ぶつかる

ぶつかる 2項動詞

2 食べる

チーズ食べる 2項動詞

3 刃向かう

刃向かう 2項動詞

4借りる

から)お金借りる 3項動詞

5結婚する

結婚する 2項動詞

よって、答えは4

【過去問解説】平成27年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(9)より

動詞の項の数については下記の記事もどうぞ

3.形容詞の文型

p20~

[が]文型の1項形容詞が多い。

・空赤いです。

2項形容詞もある。

・私好きです。

ただし、形容詞の[が]文型の場合、主体は[は]を使うことが多い。

・私好きです→私好きです

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第1章 格と構文の概観 第3節【自動詞・他動詞】

p22~

★疑問 p22「補語として働きかけられる対象をとる」とは?

・猫がチーズを食べる。

「食べる」が働きかける対象は?

→「チーズ」

「チーズ」は補語

動詞「食べる」は働きかけられる対象として補語のチーズをとるので他動詞

・雨が降る。

「降る」が働きかける対象は?

→ない

動詞「降る」は働きかけられる対象をとらないので自動詞

★疑問 p23「自動詞と他動詞の中で、形態的な対応関係をもつ」とは?

→自動詞と他動詞の形が似ているのでペアになるということ。

例)自動詞「閉まる」と他動詞「閉める」は形が似ているので、自動詞と他動詞のペアになる。

有対とは、形が似ているペアの相手がいること。彼氏・彼女あり。

自動詞「閉まる」はペアの相手「閉める」がいるので有対自動詞

無対とは、形が似ているペアの相手がいないこと。彼氏・彼女なし。

自動詞「降る」はペアの相手がいないので無対自動詞

1.自動詞・他動詞とは

1.1 他動詞

他動詞とは、補語として働きかけられる対象をとる動詞。他動詞は通常、直接受身文にすることができる。

他動詞によって働きかけの程度は異なる

働きかけの程度が高い他動詞「殺す」

・猫がネズミを殺した。

ヲ格名詞の「ネズミ」が死ぬという大きな変化

働きかけの程度が低い他動詞「愛する」

・猫がネズミを愛した。

ヲ格名詞の「ネズミ」に物理的影響はない。感情が向けられているだけ。

1.2 自動詞

p24~

自動詞とは、補語として働きかけられる対象をとらない動詞。

・雨が降る。

「降る」が働きかける対象は?

→ない

動詞「降る」は働きかけられる対象をとらないので自動詞

2.有対自動詞と有対他動詞

p25

有対他動詞とは、ペアになる自動詞がある他動詞。対象に変化を引き起こす動詞が多い。

有対自動詞とは、ペアになる他動詞がある自動詞。主体が変化をすることを表す動詞が多い。

有対他動詞有対自動詞
ドアを開けるドアが開く
ドアを閉めるドアが閉まる
電気をつける電気がつく
電気を消す電気が消える
猫を入れる猫が入る

2.3 自他同形の動詞

p27~

自動詞と他動詞が同じ形にものもある。

開く←→窓開く

授業終わる←→授業終わる

オープンする←→店オープンする

とる名詞によって自動詞になったり他動詞になったりするものもある。

風が吹く←→笛を吹く

2.4 形態的な対応がなく自他の意味的対応をもつ動詞

★疑問 p28「形態的な対応がない」とは?

→形が似ていないということ。

「する」と「なる」は形は似ていないが他動詞と自動詞のペアに意味が似ている。

部屋綺麗にする←→部屋綺麗になる

ドアを開ける←→ドアが開く

「殺す」と「死ぬ」、「作る」と「できる」も他動詞と自動詞のペアに意味が似ている。

ネズミを殺す←→ネズミが死ぬ

アップルパイを作る←→アップルパイができる

自動詞と他動詞については下の記事もどうぞ

動詞の自他が出題された日本語教育能力検定試験の過去問

平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(6)【動詞の自他】

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第2章 さまざまな格 第1節【主体を表す格】

p29~

1.主体とは

主体とは、述語の動きを引き起こすものや述語の状態の持ち主

2.「が」

p30~

「が」は主体を表す格助詞の中心

2.1 動きの主体「が」

動きの主体とは、動きを引き起こすもののこと。意思動作の主体、受身的動作の主体、自然現象の主体、変化の主体、心的活動の主体がある。

[意思動作の主体]が

有情物とは、感情など心の働きを持っているもの。意思があるもの。詳しくはこちら

有情物の例)人、猫、ロボット、幽霊、ゾンビ

有情物は「いる」:人がいる、猫がいる、ロボットがいる、ゾンビがいる

無情物とは、有情物じゃないもの。

無情物の例)花、木、机、消しゴム、コンビニ

無情物は「ある」:花がある、木がある、机がある、消しゴムがある、コンビニがある

意思動作の主体とは、有情物が意思的に行う動きの主体。しようと思ってすること。主体に状態変化が生じないのが普通。

意思動作の主体の例)

・弟がネズミを捕まえた。

対象に働きかけることで状態変化を引き起こす例)

・弟がガラスを割った。

対象に働きかけることで主体自体の状態が変わる例)

・弟がズボンを履いた。


※対象に働きかける意思同士の主体として無情物が現れることもある。原因の意味に近い。

台風が多くの建物を壊した。

風が窓を叩いた。

[受身的動作の主体]が

受身的動作の主体とは、相手からの働きかけを受けるもの。

受身動作の主体が使う動詞は「もらう」「教わる」「預かる」「授かる」「捕まる」など限られている。

・弟が女の子からチョコをもらった。

・弟が女の子からお金を預かった。

・弟が女の子に捕まった。

[自然現象の主体]が

自然現象の主体とは、自然現象が発生したり展開したり終結したりする主体

・雪が降る。

・雷が鳴る。

・空が光る。

・雨が止む。

[変化の主体]が

変化の主体とは、動きが実現することで変化する主体

・弟が椅子に座る。

・窓が汚れる。

変化の主体のうち、存在する位置が変化するものもある。

・弟が家に来る。

・弟が家に向かう。

上の2つの例は「弟」の位置が変化している。

[心的活動の主体]が

心的活動の主体とは、思考活動やその感情の持ち主。基本的に有情物

思考活動を表す動詞の例)

「思う」「考える」「思い出す」「忘れる」「知る」

・弟が約束を忘れた。

感情の動きを表す動詞の例)

「喜ぶ」「悲しむ」「恨む」「困る」「悩む」「愛する」「好む」「嫌う」

・弟が悲しむ。

2.2 状態の主体「が」

p32~

状態の主体とは、時間の流れの中で動きも変化もない事態の主体のこと。主に形容詞・名詞述語。

・33ページ下10行目
(誤)むずかしい本
(正)専門書

[存在の主体]が

存在の主体とは、静的な状態で、ある場所に存在する主体。

いる」「ある」「存在する」「ない」などの述語が存在の主体をとる。

・渋谷にハチ公がある。(物)

・この世界には人間が存在しない。(人)

出来事抽象的な事態の存在を表す場合も。

・渋谷でイベントがある。(出来事)

・彼に勇気がない。(抽象的な事態)

[能力の主体]が

能力の主体とは、能力の持ち主のこと。「できる」「可能形(可能動詞)」などの能力を表す動詞、「見える」「聞こえる」「わかる」「理解する」などの知覚状態を表す動詞が能力の主体をとる。

・彼がピアノができる。

・彼がピアノがひける。

・学生が日本語がわからない。

[心的状態の主体]が

心的状態の主体とは、感情の持ち主のこと

好きだ」「嫌いだ」「欲しい」「嬉しい」「悲しい」「心配だ」などの感情形容詞が心的状態の主体をとる。

・弟が猫が好きだ。

・弟が猫が欲しい。

評価づけを表す形容詞は「が」が①性質の主体と表す場合と②心的状態の主体を表す場合がある。

①あの家はトイレが怖い。(性質の主体

私がオバケが怖い。(心的状態の主体

[性質の主体]が

p34

性質の主体とは、どんな形、どんな状態、どんな感覚などその性質の持ち主のこと。

・トイレが丸い。(どんな形)

・トイレが綺麗だ。(どんな状態)

・トイレが冷たい。(どんな感覚)

[関係の主体]が

関係の主体とは、対象と特定の関係にある主体のこと

「表す」「意味する」「関係する」「異なる」などの動詞が関係の主体をとる。

・このサインが「止まれ」を意味する。

・答えが正解と異なる。

2.3 同定関係の主体「が」

同定関係の主体とは、名詞述語文で名詞と名詞が同一のものであるときの主体

・彼が太郎だ。 彼=太郎(名詞と名詞が同一)

・福岡が私の出身です。 福岡=私の出身(名詞と名詞が同一)

3.「に」

p35~

「に」は述語の事態の成立する場所・範囲としての主体を表す。

3.1 所有の主体「に」

所有の主体とは、ある対象の持ち主のこと。存在を表す「ある」「いる」「存在する」「ない」が所有の意味を持つようになった場合の主体

・私は夢がある。

・弟彼女がいる。

・私は悲しみという感情が存在しない。

3.2 能力の主体「に」

能力の主体とは、能力や知覚状態の持ち主のこと。「できる」「可能形(可能動詞)」などの能力を表す動詞、「見える」「聞こえる」「わかる」などの知覚状態を表す動詞の主体

・彼それができる。

・私は見えない。

能力の主体は「が」で表すこともできる。p33参照

・彼それができる。

3.3 心的状態の主体「に」

心的状態の主体とは、ある知覚、感情、感覚を持つ主体

・私タイカレーは辛すぎる。

・私はこのニュースがとてもうれしかった。

自発構文の主体も「に」※自発構文について詳しくはp283~

・私はこの問題はやさしく感じられます。

自発構文とは、主体の意思とは関係なく自然にある感情などが起きてくること。

4.「で」

p36~

事態に対処する組織としてとらえられた主体「で」

事態に対処する組織としてとらえられた主体とは、複数のメンバーからなるグループ

・彼と私やります。

・あなたたち準備しておいて。

・我が社取り組む。

場所・方向としてとらえられた主体「で」

場所・方向としてとらえられた主体とは、「人を表す名詞」+「ところ」/「方」のような形式名詞

・私たちのところやっておきます。

・あなたたちの方用意できますか。

5.「から」

p37~

提供・伝達行為の主体「から」

ある動きの主体が、同時にその動きの起点とも言える時に、「から」で動きの主体を表すことがある。

・私から課長に報告しておきます。

「報告する」という動きの主体は私

「報告する」という動きの起点も私

提供・伝達行為の主体が「より」で表されることも。

・部長の田中よりご挨拶申し上げます。

6.「の」

p38

連体助詞の「の」とは、名詞と名詞をつなぐ「の」のこと

・猫の家

・日本の猫

・彼の本

「の」の種類と見分け方【形式名詞・格助詞・連体助詞】

「の」については下の記事をどうぞ。

名詞修飾節の格助詞「が」は「の」に交替することができます。これを格助詞の「の」といいます。

名詞修飾節で「が」に交替する「の」の例)

・私は弟作ったプリンを食べた→私は弟作ったプリンを食べた○

「弟が作った」は名詞「プリン」を修飾している(どんなプリンか説明している)ので名詞修飾節です。

名詞修飾節の中の主体を表す名詞と動詞のあいだに、他の名詞が入ると「の」を使いにくくなる。

・私は弟が日本で作ったプリンを食べた→私は弟日本で作ったプリンを食べた×

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第2章 さまざまな格 第2節【対象を表す格】

p39~

1.対象とは

対象とは、述語の動きの影響を受けるもの、述語の認識が向けられるもの。

2.「を」

対象を主に表すのは「を」

「を」は変化の対象、動作の対象、心的活動の対象を表す。

2.1 変化の対象「を」

p40~

変化の対象とは、主体の動きの影響で変化が生じる存在のこと。形状変化の対象、位置変化の対象、状況変化の対象、産出変化の対象がある。

[形状変化の対象]を

形状変化の対象とは、主体からの働きかけで形状に変化が生じる対象

動作によって分割される対象をとるもの:「切る」「砕く」「裂く」「ちぎる」「割る」

・チーズを切る。

・クッキーを割る。

動作によって変形される対象をとるもの:「曲げる」「たたむ」「ねじる」「まるめる」「のばす」「まぜる」

・スプーンを曲げる。

・シャツをたたむ。

動作によって消滅する対象をとるもの:「消す」「治す」「解く」

・字を消す。

・病気を治す。

・謎を解く。

[位置変化の対象]を

位置変化の対象とは、形は変化しないが、位置が変化する対象

対象の空間的位置に変化が生じるもの:「移す」「降ろす」「積む」「倒す」

・席を移す。

・荷物を降ろす。

・棒を倒す

複数の対象相互の位置関係に変化が生じるもの:「そろえる」「たばねる」「重ねる」「集める」

・靴をそろえる。

・髪をたばねる。

[状況変化の対象]を

状況変化の対象とは、形や位置に変化は生じないが、何らかの状況に変化が生じる現象。「囲う」「照らす」「守る」などの動詞が状況変化の対象をとる。

・桜の木を囲う。

・道路を照らす。

[産出の対象]を

産出の対象とは、何かに作用を加えた結果として生み出される対象。算出の対象は動作の前には存在しない。

・動画を作った。

・卵を産む。

2.2 動作の対象「を」

p41~

動作の対象とは、主体の動作が向けられるものの、変化が生じない対象。働きかけの対象と言語活動の対象がある。

[働きかけの対象]を

働きかけの対象とは、意思がある主体が働きかける対象

・机を叩く。

・壁を蹴る。

[言語活動の対象]を

言語活動の対象とは、言語に関わる活動で扱われる対象。「議論する」「報告する」「話す」「語る」など。

・環境問題を議論する。

・真実を話す。

2.3 心的活動の対象「を」

心的活動の対象とは、思考活動や感情の動きが向けられる対象。

知覚活動を表す動詞:「見る」「聞く」「触る」「嗅ぐ」

・YouTubeを見る。

・音楽を聞く。

思考活動を表す動詞:「思う」「考える」「思い出す」「忘れる」「知る」「理解する」

・彼のことを思う。

・テストのことを考える。

感情の動きを表す動詞:「喜ぶ」「悲しむ」「恨む」「愛する」「好む」「嫌う」

・合格を喜ぶ。

・甘いものを好む。

3.「が」

p43~

状態性の述語では「が」が対象を表すことも。心的状態の対象。能力の対象。所有の対象がある。

3.1 心的状態の対象「が」

心的状態の対象とは、感情や知覚の向けられる対象。「うれしい」「悲しい」「好きな」「嫌いな」「欲しい」「心配な」のような感情を表す形容詞の対象

・日曜日がうれしい。

・月曜日が悲しい。

・弟が心配だ。

3.2 能力の対象「が」

p44

能力の対象とは、能力が向けられる対象。主体の能力を表す述語の対象。

・日本語ができる。

・漢字が書ける。

3.3 所有の対象「が」

所有の対象とは、存在を表す「ある」「いる」「ない」や分量を表す「多い」「少ない」を述語とする文が、有情物を「に」で表す所在構文を作るとき、「が」で所有の対象を表すことが。

・私には夢ある。

・弟に彼女いる。

・彼女には感情ない。

※所在構文については、p172~で詳しく扱います。

4.「に」

p44~

方向性をもつ動詞や心的状態を表す動詞の対象を「に」で表すことが。動作の対象と心的活動の対象がある。

4.1 動作の対象「に」

動作の対象の「に」をとる動詞:「さからう」「はむかう」「賛成する」「反対する」「勝つ」「負ける」「合格する」

・流れさからう。

・猫はむかう。

・結婚賛成する。

4.2 心的活動の対象「に」

心的活動の対象の「に」をとる動詞:「あこがれる」「惚れる」「飽きる」「あきれる」「感心する」「苦しむ」「困る」「親しむ」「悩む」「こだわる」「迷う」「満足する」などの心的活動を表す述語

・彼女惚れる。

・弟あきれる。

5.対象を表す複合格助詞

p45~

5.1「に対して」

「に対して」は、働きかけのターゲットを表す。

・彼は子供に対して笑いかけた。

形容詞述語で使われる時は領域を限定する意味を表すことが多い。

・彼は子供に対して甘い。

・この施設は高齢者に対して優しくない。

5.2「について」

「考える」「思う」などの思考活動の対象や「話す」「聞く」などの言語活動の対象を表す「について」はテーマや内容を表す。

・今日の晩御飯について考えた。

・明日の朝ごはんについて聞いた。

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第2章 さまざまな格 第3節【相手を表す格】

p46~

1.相手とは

相手とは、述語で表される事態の成立に関与する、主体以外のもう一方の有情物

2.「に」

「に」は相手を表す中心的な格助詞

2.1 動作の相手「に」

動作の相手とは、動作が向かう先。「話しかける」「電話をかける」「吠える」「かみつく」「会う」「相談する」などの動詞の向かう先。

・弟電話をかけた。

・弟会う。

2.2 授与の相手「に」

授与の相手とは、物のやりとりにおける受け手。「あげる」「くれる」「やる」「与える」「贈る」「貸す」「預ける」「返す」「渡す」などの動詞の受け手。

・弟プリンをあげる。

・弟お金を貸す。

2.3 受身的動作の相手「に」

受身的動作の相手とは、主体が何らかの行為や影響を受ける際の相手。「捕まる」「もらう」「教わる」などの動詞の相手。

・弟が先生捕まった。

・先生から手紙をもらった。

2.4 基準としての相手「に」

基準としての相手とは、主体を述べるための基準。「勝る」「劣る」「準ずる」のような基準が必要な動詞に使う。

・体力が子供劣る。

3.「と」

p48~

3.1 共同動作の相手「と」

共同動作の相手とは、一人でもできる行為を一緒に行う相手。

・弟ゲームした。

3.2 相互動作の相手「と」

相互動作の相手とは、一人じゃできない行為を一緒に行う相手。「会う」「つきあう」「結婚する」「離婚する」「闘う」「ぶつかる」「けんかする」「相談する」「別れる」などの動詞で使う。

・弟ケンカした。

3.3 基準としての相手「と」

基準としての相手とは、主体を述べるための基準。「違う」「似る」「間違える」などの動詞、「同じだ」「そっくりだ」「近い」などの形容詞で使う。

・母性格が似る。

・鼻が母同じだ。

4.「に」と「と」の比較

p50

「と」は互いに

「に」は一方的

双方向の「と」

・彼結婚する○

・彼支え合う○

・彼もたれかかる×

一方から他方の「に」

・彼結婚する×

・彼支え合う×

・彼もたれかかる○

5.相手を表す複合格助詞

p51

5.1「といっしょに」「とともに」

共同動作の相手を「と」の代わりに「といっしょに」「とともに」も使える。共同性を強調した表現。

・弟散歩した→弟といっしょに散歩した。

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第2章 さまざまな格 第4節【場所を表す格】

p51~

1.場所とは

場所とは、事態が成立する位置。主に「に」と「で」で表す。

2.「に」

「に」は、存在の場所出現の場所

2.1 存在の場所「に」

存在の場所とは、事物が存在する場所。「ある」「いる」「存在する」「ない」などの存在を表す述語に使う。

・公園猫がいる。

・渋谷家がある。

2.2 出現の場所「に」

p53

出現の場所とは、事物がある場所の内部で発生し、存在するようになる場所

・おでこニキビができる。

3.「で」

「で」は動きの場所

動きの場所とは、動作や出来事の成立する位置のこと。

・公園猫が昼寝している。

「ある」が出来事を表す場合は「で」をとる。

・渋谷イベントがある。

4.「に」と「で」の比較

p54~

「に」:静的状態にある事物の存在する場所

「で」:動作・出来事の成立する場所

・公園猫がいる。で×

・公園猫が昼寝する。に×

どちらも使える時は?

夜空星が光っている。

夜空星が光っている。

「に」:存在状態にフォーカス

「で」:動きにフォーカス

5.場所を表す複合格助詞

p55~

5.1「において」

「において」:フォーマルな場面で使われる「で」

・今日は公民館において遊ぶ ×

・本日は公民館において環境保護団体の集会が行われます○

5.2「にて」

「にて」:書き言葉的な「で」。手紙で所在地を示したり、案内状で場所を示す。体言止めとともに使われやすい。

・本日桜を見る会。校門前にて

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第2章 さまざまな格 第5節【着点を表す格】

p56~

1.着点とは

着点とは、移動の終わる位置

2.「に」

「に」は着点を表す基本の格助詞

2.1 移動の着点

p57~

[到達点]に

到達点とは、ある位置から別の位置へ移動するときの移動先

・弟が学校行く。(主体の移動の到達点)

・弟を学校送る。(対象の移動の到達点)

[接触点]に

接触点とは、外部から移動し、ある場所に接触する場合の移動先

・弟が壁衝突した。(主体の接触点)

・弟が庭桜を植えた。(対象の接触点)

2.2 変化の結果「に」

「に」で変化の結果を表す。

・弟が大人なる。(主体の変化後の状態)

子供→大人

・オリンピックが東京決まる。(主体の変化後の状態)

決まらない状態→決まった状態

3.「と」

p60

「と」で変化の結果を表す。「に」に比べて古い文体あるいは書き言葉的。

・さなぎが蝶なった。

・海の藻くず消えた。

4.「へ」

「へ」で移動の方向を表す。

・学校行く。

・いざ鎌倉

ほとんど「に」で置き換えることができるが、移動の過程に注目する場合「へ」を用いやすい。

・寄り道しながらゴール向かった。


「に」:移動の結果、事物が移動先に存在していることも表す。

「へ」:移動動作の過程にフォーカス。

5.「へと」

「へと」も移動を表す。

・ゴールへと向かう。

6.「まで」

「まで」は終わる場所時間や何らかの度合いの到達点を表す。

・駅まで歩く。(動作・出来事の空間的終点)

・朝まで飲む。(動作・出来事の時間的終点)

・この体重計は100キロまで乗れる。(動作・出来事の及ぶ到達点)

とりたて助詞の「まで」については現代日本語文法⑤p96~で。

7.「に」「へ」「まで」の比較

p62~

7.1 「に」と「へ」

1.接触を表す動詞の着点は「へ」で表しにくい。

・弟が壁ぶつかる?

・弟か壁ぶつかる○

2.名詞を修飾する場合は「への」

・学校への道○

・学校にの道×

7.2「に」「へ」と「まで」

1.「まで」は範囲を指定できない名詞につかない。

・弟が北向かう○

・弟が北向かう○

・弟が北まで向かう×

2.「まで」は「疑問詞+か」につかない。

・弟がどこかに行った○

・弟がどこかへ行った○

・弟がどこかまで行った×

3.「まで」は移動がなくても範囲があれば使える。

・弟が本を10ページ読む。

・弟が本を10ページ読む。

・弟が本を10ページまで読む。

「向かう」「行く」に比べて「読む」は移動がないが、読むページという範囲があるので「まで」が使える。

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第2章 さまざまな格 第6節【起点を表す格】

p63~

1.起点とは

起点とは、移動が始まる位置

2.「から」

「から」は起点を表す基本的な格助詞

2.1 移動の起点「から」

移動の起点とは、移動前に存在する場所

・韓国から弟が来た。(主体の移動の起点)

・隣の部屋からカレーのにおいがする。(においの起点)

・弟からお金をもらった。(対象の移動の起点)

・弟から韓国語を習った。(知識・情報の出どころ)

※主体を表す「から」についてはp37~参照

2.2 方向の起点「から」

方向の起点とは、視線など方向性のある動作の起点

・寝室の窓から桜が見えます。

2.3 範囲の始点「から」

範囲の始点とは、状態や動作の持続する範囲の始点

・家から会社まで1時間かかる。

2.4 変化前の状態「から」

変化前の状態とは、ある状態からある状態に変化する場合の変化前の状態

・春から夏に季節が変わる。

3.「より」

p67

「より」は起点を表す。「から」より古い表現で書き言葉的。

・故郷より吉報が届いた。(移動の起点)

4.「を」

「を」は「出る」「離れる」など起点に着目する主体移動動詞と一緒に使われるとき起点を表す。

・弟が街離れた。

5.「から」と「を」の比較

p68

「を」:離脱点

「から」:境界のある一方から他方への移動

・弟が家出た。

・弟が家から出た。

「の中」「の内側」のような範囲を表す表現には「から」

・弟が家の中を出た×

・弟が家の中から出た○

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第2章 さまざまな格 第7節【経過域を表す格】

1.経過域とは

経過域とは、通過する範囲経過するひとまとまりの時間

2.「を」

2.1 空間的な経過域「を」

「歩く」「走る」「通る」「渡る」「行く」「来る」「帰る」などの移動を表す自動詞

・歩道歩く。(移動が行われている経過域

「泳ぐ」「走る」などの移動とも動作ともいえる動詞は「を」と「で」で意味が異なる。

・廊下走る。(移動の場所)

・廊下走る。(動作の場所)

2.2 時間的な経過域「を」

「過ごす」「明かす」「暮らす」などの動詞は一定の広がりを持つ時間名詞を「を」

・夏休み海外で過ごす。

・知らない人と一夜明かす。

3.「から」

p71

「から」が経由する場所を表すことがある。

・鳥が窓から入ってきた。

4.経過域を表す複合格助詞

4.1「を通じて」「を通して」「を介して」

経過域を表す複合格助詞「を通じて」「を通して」「を介して」

・私たちはインターネットアプリを通じて知り合いました。

・この旅を通して、いろいろなことを学びました。

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第2章 さまざまな格 第8節【手段を表す格】

p72~

1.手段とは

手段とは、動作や出来事、状態の成立のために用いられる物や方法

2.「で」

「で」は手段を表す基本的な格助詞

2.1 道具「で」

道具とは、ある目的を達成するために使われる物としての手段

・鍋米を炊く。

身体や抽象的なものに「で」がつく場合は様態の意味に近づく。

・足押す(道具)→足を使って押す○

・裸足走る。(様態)→裸足を使って走る×

様態は「を使って」で言い換えられない。

2.2 方法「で」

方法とは、方式、形式、作戦、操作モードなどある程度抽象的な意味を表す手段

・直接法日本語を学ぶ。(方法)

・筆漢字を書く。(道具)

2.3 材料 「で」

p74

材料とは、物の生産に用いる素材

・折り紙鶴を折る。

材料の質が変化しているものは材料でなく原料の「から」p67参照

・ブドウからワインを作る。

2.4 構成要素「で」

構成要素とは、ある事物を成り立たせている構成員

・10人のメンバーこの委員会は構成されています。

構成要素は「が」でもほぼ同じ意味を表せるところが「材料」「原料」と異なる。

・10人のメンバーこの委員会を構成しています。

2.5 内容物「で」

p75~

内容物とは、具体的・抽象的な器の中に満たされる存在。物質、感情などを表す名詞につく「で」

・コップが水いっぱいです。

・財布が1万円札満たされている。

2.6 付着物「で」

p76~

付着物とは、物に接触し、くっつくもの。

・眼鏡が息曇る。

3.「から」

「から」で構成要素を表すこともできる。

・この委員会は10人のメンバーから構成されている。

4.「に」

p77~

「に」は内容物付着物を表す。

4.1 内容物「に」

物質感情などの名詞に「に」がつく。「満たされる」ような充満を意味する述語と一緒に使う。

・春は希望満ちている。

4.2 付着物「に」

物質を表す名詞に「に」がつく。動詞は物質による主体の状態変化を表す。

・靴下が水濡れた。

5.手段を表す複合格助詞

p78

5.1「によって」「でもって」

・直接法によって日本語を学ぶ。(方法)

・鍋でもって米を炊く。(道具)

5.2「をもって」

・この委員会は10人のメンバーをもって構成された。

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第2章 さまざまな格 第9節【起因・根拠を表す格】

p79~

1.起因・根拠とは

起因とは、その事態が起こることで結果として述語で表される事態が引き起こされること。

2.「で」

「で」は起因を表す基本の格助詞

2.1 変化の原因「で」

変化の原因とは、ある変化を引き起こす事態

・台風屋根が飛んだ。

2.2 行動の理由「で」

行動の理由とは、ある事物が存在することで何らかの行動が起きる場合のある事物。述語は意思動詞

・金欠バイトを始める。

原因を表すテ形と同じく意思のモダリティ現代日本語文法④p51~参照)をとりにくい。

・金欠バイトを始めよう×

・お金がなくてバイトを始めよう×

2.3 感情・感覚の起因「で」

p81

感情・感覚の起因とは、その感情や感覚を引き起こす原因となった出来事

・金欠悩む。

2.4 判断の根拠「で」

判断の根拠とは、思考活動で判断のもとになる内容

・口癖彼だとわかった。

3.「に」

「に」は感情・感覚の起因や原因となる自然現象を表す。「で」は任意の成分だが、「に」は動詞にとって必須の成分。

3.1 感情・感覚の起因「に」

感情・感覚の起因とは、精神的・生理的な状態や変化をもたらす起因。

・猫のかわいさ癒される。

3.2 継続的状態の起因「に」

p82

継続的状態の起因とは、継続する自然現象を述語が表す場合のその現象の起因

・春風洗濯物が揺れている。

4.「から」

「から」はをあらわすが、出来事や思考活動の起原因や根拠としてとらえられる場合には的な意味を持つ。

4.1 出来事の原因「から」

出来事の原因とは、一連の出来事の発端となる事柄

・イライラからのドカ食い

4.2 判断の根拠「から」

p83

判断の根拠とは、「想像する」「察する」「考える」「思う」などの動詞を述語とする場合の判断の根拠

・口癖から彼だとわかった。

5.起因・根拠を表す複合格助詞

5.1「によって」

「によって」は、変化の原因感情・感覚の起因を表す。

・台風によって屋根が飛んだ。(変化の原因)

・猫の鳴き声によって目を覚ます。(感情・感覚の起因)

5.2「のために」「のおかげで」「のせいで」「につき」

p84

・大雪のために電車が止まった。(変化の原因

・弟のために日本に来た。(行動の理由

・弟のために悩む。(感情の起因

「のおかげで」:望ましい事態

「のせいで」:望ましくない事態

・彼のおかげで学校が休みになった。

・彼のせいで学校が休みになった。

「につき」:行動の理由、書き言葉的

・市有地につき立ち入り禁止

5.3「とあって」「だけあって」「だけに」

「とあって」「だけあって」「だけに」は、事態を成立させる原因を表す。

・正月とあって神社はにぎやかだ。

・元弁護士だけあって法律には詳しい。

・駅近だけに家賃が高い。

5.4「からして」

「からして」は、判断の根拠を表す。

・この動画はサムネイルからしてつまらなそう。

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第2章 さまざまな格 第10節【時を表す格】

p85~

1.時とは

とは、事態の成立する時間的な位置づけ

2.無助詞(Φ)

発話時を基準に時間が決まる名詞は無助詞が基本

・明日、学校に行きます。

「明日」がいつなのかは発話時で決まる。発話時が12月1日なら「明日」は12月2日

3.「に」

発話時と関係なく絶対的に時間が決まる名詞は「に」が基本

・午前10時学校に行きます。

「午前10時」がいつののかは発話時と関係なく決まる。発話時がいつでも午前10時は午前10時


期間を表す名詞に「に」がつくと、その期間の一時点を表す。

・ライブ中電話が鳴った。

「まで」や「あいだ」に「に」がつくと一時点を表す。

・5時まで本を読む。

・5時まで本を読む。

・夏休みの間、アルバイトをしていた。

・夏休みの間髪を染めた。

4.無助詞と「に」の比較

4.1 無助詞と「に」の基本的な使い分け

p87

①発話時を基準に相対的に時が決まる:無助詞

・今、ご飯を食べる。

②発話時関係なく絶対的に時が決まっている:「に」

・昼ご飯を食べる。

4.2 無助詞でも「に」でも自然な場合

p88~

基準時を表す名詞時の名詞「に」

・来週の水曜日会社に行きます。

・来週の水曜日会社に行きます。

期間を表す名詞「に」

・秋葉原に住んでいたころよく猫カフェに行った。

・秋葉原に住んでいたころによく猫カフェに行った。

4.3「は」「も」がつく場合の意味の違い

・来週暖かくなるだろう→今週との対比

・来週には暖かくなるだろう。→遅くとも

・桜は明日咲くだろう。→すでに咲いている。累加。

・桜は明日にも咲くだろう。→まだ咲いていない。まもなく。

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第2章 さまざまな格 第11節【その他の格】

p89~

1.限界

p90~

1.1 限界とは

限界とは、数量的・時間的・空間的な範囲の上限や終点

限界は主に「で」で表す。

1.2「で」

「で」は、変化していく数量の、ある時点での上限を表す。

・申込みは10人締め切ります。

・ゲームは1時間やめなさい。

時間的な量を表す名詞は「で」をつけて動作にかかる時間を表す。

・このラーメンは3分できます。

・1年日本語をマスターした。

1.3 限界を表す複合格助詞

p90~

「にて」

「にて」は、「で」とほぼ同様の用法。ややあらたまった文体。

・先着10名様にて締め切らせていただきます。

「でもって」

「でもって」は、「で」とほぼ同じ用法。ややあらたまった話し方。

・これでもって私の話は終わりです。

「をもって」

「をもって」は、事態が完成・実現する最終的な時点を表す。

・本日をもってYouTubeを引退します。

丁寧体もある。

・本日をもちましてYouTubeを引退します。

「にかけて」

「にかけて」は、事態の成立する範囲の一方の端を表す。もう一方の端は「から」で表す。

・昨晩から今朝にかけて大雨が降り続いた。

「にかけて」は名詞的な性質を持つ。①他の格助詞がついたり②「の」と一緒に名詞を修飾したりする。

①電車は早朝からこの時間にかけてが混み合います。

②私の動画は40代から60代にかけての男性によく見られている。

2.領域

p92~

2.1 領域とは

領域とは、ある事態が成立する際に、前提となる範囲

2.2「で」

「で」は、その評価の成り立つ領域を表す。

・彼は日本一番背が高い。

上の「で」は、「一番背が高い」という評価が「日本」という領域で成り立つことを表している。

2.3「に」

p93~

「に」は、述語で表される認識の成り立つ領域を表す。

・この本は私は難しい。

上の「に」は、「難しい」という認識が「私」という領域で成り立つことを表している。

2.4 領域を表す複合格助詞

「において」

「において」は、事態の成立する領域を表す。書き言葉的な硬い文体。p55参照

・日本において最も評価されている野球選手が彼です。

「にとって」

「にとって」は、「に」とほぼ同じ用法

・この本は私にとって難しい。

3.目的

p95~

3.1 目的とは

目的とは、述語で表される動作を行うことにより達成される事態。目的は主に「で」で表す。

3.2「で」

「で」は、意思動詞の目的を表す。

・観光日本を訪れた。

行動の理由の「で」についてはp80~参照

3.3「に」

「に」は、動作性の名詞について移動の目的を表す。

・北海道にスキー行く。

3.4 目的を表す複合格助詞

p96~

「のために」

「のために」は、動作の目的を表すことがある。起因を表す「のために」についてはp84参照

・試験合格のために毎日本を読む。

4.様態

p97~

4.1 様態とは

様態とは、動きのあり方。どのように動くか。

4.2「で」

「で」は、視覚的・聴覚的な特徴を表す名詞にくっついて、述語の動きの様態を表す。

・小声言う。

・大股歩く。

4.3 様態を表す複合格助詞

p98~

「でもって」

「でもって」は、「で」とほぼ同様の用法

・大股でもって歩く。

「なしで」「なしに」

「なしで」「なしに」は、通常はあるものがないとき。

・アポなしで訪問する。

・休みなしに働く。

5.役割

p98~

5.1 役割とは

役割とは、述語で表される事態の成立にあたって、主体や対象が担う働き

5.2「に」

「に」は、述語の行為の意味を明らかにする名詞にくっつく。

・ご褒美飴をあげる。

・お土産チョコを買う。

5.3 役割を表す複合格助詞「として」

「として」は、主体や対象の様々な側面のから1つの役割に着目して表す。

・留学生として来日する。

・日本人として許せない。

6.割合

p100~

6.1 割合とは

割合とは、期間や数量などの一定数を基準とし、他のものの多寡を相対的に表したもの。

6.2「に」

「に」は、期間や数量など基準となる単位にくっついて、直後にその部分量を表す。

・日本人の1000人1人が日本語教師です。

・1週間2日、お酒を飲みます。

部分量の代わりに頻度を表す表現が来ることも。

・4年1度、ワールドカップが開催される。

6.3 割合を表す複合格助詞

「につき」(「について」)

「につき」は、「に」と同様、期間や数量など基準となる単位にくっついて直後にその部分量を表す。

・学生1人につき10万円の奨学金が支給されます。

「に対して」

「に対して」は、後の部分量に「の割合で」を加えて使う。

・受験生100人に対して30人の割合で合格した。


割合が出題された日本語教育能力検定試験の過去問

平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1(13)【割合を表す表現】2016

7.対応・不対応

p101~

7.1 対応・不対応とは

対応とは、一方の状況が変化することで他方の状況が変化したり他方の状況を変化させたりすること。「によって」で表す。

不対応とは、状況の変化あるいは様々な種類の状況に対して他方の状況が変化しないこと。「によらず」「にかかわらず」「を問わず」で表す。

7.2 対応を表す複合格助詞「によって」

p102

「によって」は、2つの状況が対応していることを表す。

・学習時間は合格者によって異なります。

→合格者が変わると学習時間も変わる。

7.3 不対応を表す複合格助詞「によらず」「にかかわらず」「を問わず」

「によらず」「にかかわらず」「を問わず」は、2つの状況が対応しないことを表す。

・弟は見かけによらず強い。

・時期にかかわらず値段は同じです。

・国籍・性別・年齢を問わず申し込みできます。

8.内容

p103

8.1 内容とは

内容とは、対象となるものの呼称、定義、認識・判断などの中身。「と」で表す。

8.2「と」

「と」は、呼称、定義、認識などの内容を表す。

・弟は闇の魔法使い呼ばれている。

9.格の意味と格助詞・複合格助詞

p104~のリストを参照

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本日の問題の答え

【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを1つ選べ。

(5)【主体】

1 遊ぶ

2 読む

3 食べる

4 もらう

5 飛ぶ


p30~p31参照

文を作ってどんな主体か確認

猫が遊ぶ→意思動作の主体

弟が本を読む→意思動作の主体

弟がパンを食べる→意思動作の主体

弟が女の子からチョコをもらう→受身的動作の主体

猫が空を飛ぶ→意思動作の主体

よって、答えは4

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