【音韻交代とは】平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題3の解説

H29試験Ⅲ

この問題はかなり難しいですね。

考えるのに時間もかかります。

本試験で「これ時間かかるやつだ」と思ったら、スキップしましょう。

試験Ⅲの最初の方は難問が多い印象です。

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問1の考え方

選択肢を見ると嫌になりますね…。

拘束形態素の拘束形式、独立形態素の拘束形式、拘束形態素の自由形式、独立形態素の自由形式…

なんのこっちゃと…。

①形態素とは?

②独立形態素とは?

③拘束形態素とは?

④拘束形式とは?

⑤自由形式とは?

1つずつ落ち着いて理解していきましょう。

あとはその組み合わせで何とかなります。

形態素とは?

形態素とは、意味を持っている最小の単位。

例えば、雲/kumo/は一つの形態素です。

これをさらに「く」と「も」にわけても、意味がありませんので。

独立形態素とは?

独立形態素とは、それだけで単語として使える形態素。自由形態素ともいいます。

例えば、髪/kami/は、これだけで単語として使えるので独立形態素です。

・きれいな髪/kami/〇

上で使った雲/kumo/も単独で使えるので独立形態素ですね。

拘束形態素とは?

拘束形態素とは、それだけでは単語として使えない形態素。

例えば、髪/hatsu/は、これだけで単語として使えないので拘束形態素です。「長髪」「茶髪」など、他の形態素と合わせて使います

・きれいな髪/hatsu/×

・きれいな長髪/choRhatsu/〇 ※Rは音素記号で引く音(長音)を表します。

このように

同じ「髪」という漢字でも

読み方によって、独立形態素/kami/だったり拘束形態素/hatsu/だったりするので注意してください。

形態素の自由形式とは?

形態素の自由形式とは、単独でそう読むもの

例えば、髪は単独では/kami/や/hatsu/と読みますので、これらは自由形式です。

髪/kami/は、独立形態素の自由形式

髪/hatsu/は、拘束形態素の自由形式

雲/kumo/は、独立形態素の自由形式

形態素の拘束形式とは?

形態素の拘束形式とは、単独ではそう読まないもの

例えば、髪は単独では/patsu/とは読まないので、拘束形式です。

髪/patsu/は、拘束形態素の拘束形式

雲/gumo/は、独立形態素の拘束形式

雲/kumo/は、単独で使えるので独立形態素ですが、/gumo/という読み方は単独ではしないので独立形態素の拘束形式です。

例)雨雲/amagumo

形態素を簡単に見分ける方法

①単独で使えるか?

使える→独立形態素(自由形態素)

使えない→拘束形態素

②単独でそう読めるか?

読める→自由形式

読めない→拘束形式

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問1の解き方【独立形態素と拘束形態素】

独立形態素(自由形態素)と拘束形態素という言葉は知っていても

自由形式と拘束形式は知らなかったかもしれません。

その場合は、文章をじっくり読みます。

/ameは自由形式

/amaは拘束形式

とヒントがあります。

選択肢1

金/kin/は、単独で使えて、単独で/kin/と読めるので、独立形態素の自由形式です。

髪/patsu/は、単独で使えず、単独で/patsu/と読めないので、拘束形態素の拘束形式です。

選択肢2

酒/saka/は、単独で使えますが、その場合の読みは/sake/であり、/saka/とは単独では読まないので、独立形態素の拘束形式です。

蔵/gura/も、単独で使えますが、その場合の読みは/kura/であり、/gura/とは単独では読まないので、独立形態素の拘束形式です。

選択肢3

雛/hina/は、単独で使え、単独で/hina/と読めるので、独立形態素の自由形式です。

祭り/matsuri/は、単独で使え、単独で/matsuri/と読めるので、独立形態素の自由形式です。

選択肢4

花/hana/は、単独で使え、単独で/hana/と読めるので、独立形態素の自由形式です。

曇り/gumori/は、単独で使えますが、単独の読みは/kumoriであり、/gumori/とは単独では読まないので独立形態素の拘束形式です。

よって、答えは2

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問2の解き方

問2の難しいですね。

「音が異なる」ではなく「音韻的に異なる要素」というのがポイント。

音韻とは、言語の音声

具体的に言語の音声とは?

音韻論という言葉を聞いたことがありませんか。

音韻論では、音によってどのように意味が区別されているかを考えます。音素のような個別の音だけじゃなく、アクセントやイントネーションなどのまとまった音も扱いますね。意味の違いに関わってくるので。

ですから

音韻的違いと言った場合

アクセント等も含まれます。

試験Ⅱ聴解の問題2と問題3を思い出してください。

あれが音韻です。

それでは選択肢を見ていきましょう。

選択肢1

「生年月日」の「日」は/pi/

「月曜日の」の「日」は/bi/

音韻的に異なります

選択肢2

「歯が欠ける」の「歯」は/ha/

「葉が落ちるの」の「葉」は/ha/

音素は同じです。

アクセントを考えてみましょう。

日本語のアクセントは、他の音と比べて低いか高いか【高低アクセント】

「歯が」は

「葉が」は

「歯が」の「歯」は他の音と比べてい/ha/

「葉が」の「葉」は他の音と比べてい/ha/

音韻的に異なります。

選択肢3

「はがき」の「は」は/ha/

「私は」の「は」は/wa/

音韻的に異なります。

選択肢4

「おでん」の「お」は/o/

「彼を」の「を」は/o/

音素は同じです。

アクセントを見てみましょう。

「おでん」は高低

「彼を」は高低

どちらも低い/o/です。

よって、答えは4

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音韻交代と異形態とは?

問3も難しいですね。まずは出てくる用語の意味を確認しましょう。

音韻交代とは?

音韻交代とは、語の音の一部が変わること。

問1で出てきた

雨/ame/と/ama/

髪/hatsu/と/patsu/

このような変化を音韻交代と言います。

異形態とは?

異形態とは、同じ意味の形態素が、条件によって一部違う音になること

例)

/ame/と/ama/は、形態素「雨{ame}」の異形態

/hatsu/と/patsu/は、形態素「髪{hatsu}」の異形態

条件異音とは?

問3は「音韻的な条件によって規則的に(音が)交替する例」を選ぶ問題です。

「一定の音韻的な環境で交代する」と文章にヒントがありますね。

一定の音韻的な環境=一定の音が周辺あるとき

で交代する=それが原因で音が変わる

これを条件異音といいます。

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問3の解き方【条件異音の例】

選択肢1

毛を/ge/と読むのはどんなときでしょうか?

考えてみます。

・すね毛

・わき毛

・むだ毛

毛の前に何かついた時に/ge/になっていますね。

この規則を何というか覚えていますか?

ちょっと考えてみてください。

漢字の授業でよく出てくるルールです。

学習者に聞かれることが多いあれです。

そう

連濁です。

連濁とは、2つの語が1つになったとき、後ろの語の先頭の音(無声子音)が濁音(有声子音)になること。

例)

手+紙(み)→手紙(み)

ナイル+川(わ)→ナイル川(わ)

連濁は、前の語がどんな音でも起こりえます

なので「一定の音韻的な環境」とはいえません。

選択肢2

Qは音素記号で促音(小さい「っ」)を意味します。参考:日本語の音韻

一を「いち」と読むとき

一を「いっ」と読むとき

どんなときでしょうか?

考えてみます。

後ろに来る語をカ行から順に考えるとわかりやすいです。

一気/iQki/、一生/iQsou/、一体/iQtai/、一難/ichinan/、一枚/ichimai/、一様/ichiyoR/、一蘭/ichiran/、一話/ichiwa、一語/ichigo/、一座/ichiza/、一打/ichida/、一尾/ichibi/、一本/iQpoN/※「ん(撥音)」は音素記号でN

後ろがk,s,t,pの時に「いっ」になっています。

これを逆行同化といいます。

選択肢3

これも/ki/と/ko/それぞれの例を考えてみます。

木の葉、木の実

みなさんは何と読みますか?

私は「のは」「のみ」ですが

「きのは」「このみ」と読む例もあるようです。

どちらの単語も「木」の後ろは「の」なのに。

ということは周辺の音は関係ないですね。

他の例を考えても

木陰(こかげ)、草木(くさき)、木立(こだち)

前後の音の影響ではなく、単語によって読み方が変わるようです。

選択肢4

Rは音素記号で引く音(長音)を意味します。

/gyoR/と/koR/はどちらも音読み。

どうして音読みが複数あるのか。

そう。

音読みは入ってきた時期によって複数あるんでしたね。

詳しくは下記記事参照

/gyoR/は呉音(ごおん)

呉音の例)修行、悪行(あくぎょう)、一行(いちぎょう)

/koR/は漢音(かんおん)

漢音の例)旅行、銀行、実行

/aN/は唐音(とういん・とうおん)

唐音の例)行脚(あんぎゃ)、行灯(あんどん)

これらは音読みの種類であり

「音韻的な条件によって規則的に交替する」わけではありません。

よって、答えは2

なお、令和2年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題1の(5)では【音読みの種類(漢音・唐音】が問われていますので要チェックです。

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問4の解き方【擬音語・擬態語】

問4は問題3のオアシスです。簡単なのはこれだけでしょうか。

各選択肢をどういう時に使うかイメージすれば解けます。

選択肢1 ランラン ルンルン

らんらん歩いた。るんるん歩いた。

どちらも楽しそう。

選択肢2 ヘタッ ヘナッ

へたっと座り込んだ。へなっと座り込んだ。

どちらも疲れてそう。

選択肢3 コロッ、コロリ

ころっと仰向けになった、ころりと仰向けになった。

「ころっ」は瞬間をとらえたイメージ

「ころり」は一定の動作をとらえてイメージ

選択肢4 トントン ドンドン

ドアをとんとん叩いた、ドアをどんどん叩いた

「どんどん」のほうが強い。勢いがあるイメージ

よって、答えは3

選択肢3の他の例)

くるっ、くるり

ぴたっ、ぴたり

ひやっ、ひやり

からっ、からり

ぽろっ、ぽろり

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問5の解き方【音韻交代による文法的機能の変化】

これも難しいですね。

①音韻交代

②文法的違い

この2点で考えます。

選択肢1「のこす」と「のこる」

/s/→/r/

他動詞→自動詞

文法的な機能の違いが音韻交代によって示されています。

選択肢2「さびしがる」と「さみしがる」

/b/→/m/

意味は同じです。

選択肢3「わたす」と「わたされる」

受身の意味を表す形態素「される」が付加されています。

音韻交代ではありません。

選択肢4「とめる」と「やめる」

「とめる」と「やめる」は、意味が違う別々の語です。

文法的な機能の違いではありません。

車をとめる

タバコをやめる

よって、答えは1

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音素記号と音声記号の違いとは?

今回出てきた//で囲まれたものは音素記号です。

一方で、英語などの発音を習う時によく出てくる[]で囲まれるものは音声記号(発音記号)です。

音素記号は、ある言語で1つの音とされているものを表したもの。

音声記号は、音そのものを表したもの

促音を考えればわかりやすいです。

例えば、日本語で促音はいつも小さい「っ」で表します。

私たちは小さい「っ」は全部同じだと認識しています。

なので、音素記号ではいつもQで表します。

ところが、促音の実際の音はいつも同じ音ではありません。直後の音によって変わります。

なので、音声記号では表し方が変わります。

いっぱい(音素記号/iQpai/ 音声記号[ippai])

いっさい(音素記号/iQsai/ 音声記号[issai])

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具体例を思いつく工夫

日本語教育能力検定試験でも実際の授業でも

日本語講師は

具体例を、例文を

たくさん考えなければなりません。

苦手な人が多いのでここに一つヒントを。

アイディアは縛りがある方が生まれやすいです。

たとえば今回

問3の選択肢2では、一を「いっ」と読む単語を考えました。

このとき

「『いっ』と読むものは何があるっけ?」

と漠然と考えるよりも

「『いっ』のあとにカ行が来る単語は何だ?」

『カ行』という縛りを設けた方が思いつきやすいです。

特に今回の『カ行縛り』であれば例が少ないので、

いっか、いっき、いっく、いっけ、いっこ

の具体的に考えることができます。

縛りはシャベルのようなものです。

縛りのシャベルを使って脳の記憶を掘っていきます。

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