誤りの種類は日本語教育能力検定試験の大好物なのでここで整理します。
誤りの分類①うっかりミスかどうか
まず、うっかりミスか本当にわかってないのかという分類があります。
うっかりミス→ミステイク
本当にわかっていない→エラー
ミステイクとは?
ミステイクとは、うっかりミスです。本当はわかっていたけど、うっかり間違ってしまったときはミステイクといいます。
英語では、mistake
エラーとは?
エラーとは、本当にわかっていない誤りです。理解を間違えているので繰り返し誤りを起こしやすいです。
ローカル・エラーとグローバル・エラーがあります。
ローカル・エラーとは?
ローカル・エラーとは、相手に意図が伝わる誤り。コミュニケーションに支障はない。局部的な誤りとも。
ローカル・エラーの例
・「昨日、ラーメンを食べに行きます」
「行きました」が正しいが「行きます」でも言いたいことは分かる。
グローバル・エラーとは?
グローバル・エラーとは、相手に意図が伝わらない誤り。相手が誤解するおそれ。コミュニケーションに支障をきたす。全体的な誤りとも。
グローバル・エラーの例
・(休みの許可が欲しくて上司に)「休んでいただけませんか」
「休ませていただけませんか」と言うべきなのに「休んでいただけませんか」と言ってしまっている。
これでは休むのが自分ではなく上司になってしまい、意図が伝わらない。
誤りの分類②原因はどこか
誤りの原因がその言語にあるのか違う言語にあるのかによって、
言語内エラーと言語間エラーがあります。
言語間エラーとは?
言語間エラーとは、第一言語と第二言語の違いから生じるエラー。母語干渉とも。
言語間エラーの例
・「サッカーを遊ぶ( play soccer )」
・「ピアノを遊ぶ( play the piano)」
英語話者が「遊ぶ」=「play」と覚えてしまった場合、
第一言語の「play」と同じように第二言語の「遊ぶ」を使って、上のような非文を作ってしまうことがあります。
母語干渉とは?
母語干渉とは、母語が原因の誤り。言語間エラーとも。
昔は、第二言語の学習に母語が悪い影響を及ぼすと考えらており、母語干渉と呼びました。
最近は、母語は悪い影響だけでなく、いい影響もあると考えられています。
母語の良い影響を正の転移
母語の悪い影響を負の転移と呼びます。
転移とは?
転移とは、すでに習得した言語(第一言語等)が、習得中の言語(第二言語)に影響を及ぼすこと。
正の転移とは、第一言語等が第二言語の勉強にプラスの影響を及ぼすこと。第一言語と第二言語のルールが似ていて覚えやすい等。
負の転移とは、第一言語等が第二言語の勉強にマイナスの影響を及ぼすこと。第一言語にはないルールが第二言語にあり覚えにくい等。
語用論的転移とは、第一言語等の運用が第二言語の運用に影響を及ぼして、文法的な誤りではないが不適切な表現になること。
プラグマティック・トランスファーとは?
プラグマティック・トランスファーとは、第一言語等の使い方が第二言語の使い方に影響を及ぼして、文法的な誤りではないが不適切な表現になること。
英語は、pragmatic transfer
pragmatic:実用的な
transfer:転移
語用論的転移とも。
プラグマティック・トランスファー(語用論的転移)の例
・(放課後先生に)「私たち、今から飲みに行くんですけど、先生も行きたいですか?」
英語の誘う表現「Wolud you like to …?」を日本語にしたのでしょうが、日本語では年上の人に「~たいですか?」と「したい」ことをダイレクトに聞くのは不適切です。
「ピアノを遊ぶ」とは異なり、文法的には正しいですが、語用論的に正しくありません。
語用論的な母語干渉です。
言語内エラーとは?
言語内エラーとは、勉強している言語が原因の誤り。過剰般化(過剰一般化)や、簡略化がある。
過剰一般化とは?
過剰般化とは、ルールを過剰に適用すること。過剰一般化とも。
過剰般化の例
・「高いじゃない」「かわいいじゃない」
ナ形容詞の否定形のルールをイ形容詞にも過剰に適用しています。
「じゃない」はナ形容詞の否定形です。「便利じゃない」「きれいじゃない」
「高い」「かわいい」はイ形容詞です。
「くない」がイ形容詞の否定形です。
簡略化とは?
簡略化とは、難しいことは略して簡単にすること。
簡略化の例
「あなた、ネコ、すきね」
「あなたはネコがすきですね」という文から助詞等を抜いて簡略化しています。
誤りの種類が出題された日本語教育能力検定試験の過去問
・令和4年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題5問5選択肢2【誤りの数によって減点する方法では、誤りの種類により配点を変えて評価する】
・令和4年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題10問4【言語転移】選択肢1【母語だけでなく既習の外国語からも言語転移が起こる】
・令和4年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題11問1【過剰般化】選択肢1【ある言語形式の規則を、その適用範囲を超えた箇所でも使用する現象】
・令和2年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題6問5【語用論的転移の例】
・令和2年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題10問4【過剰般化の例】
・令和元年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題10問5【語用論的転移の例】
・平成30年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題4問1【グローバル・エラーの例】
・平成29年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題9問3【誤りの種類に関する記述】
・平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題10問1【ミステイクとエラーの違い】問2【過剰般化の例】
・平成28年度日本語教育能力検定試験Ⅲ問題11問3【英語母語話者の語用論的転移の例】
・平成26年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題9問1【グローバル・エラーの例】
・平成23年度日本語教育能力検定試験Ⅰ問題8問2【過剰般化の例】問3【語用論的転移の例】問4【言語内の誤りと言語間の誤りの違い】